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「それにしても。あのような大事な話をなされるのでしたら、場所を考えて下さらないかしら?」
私たちは学園の、それも教室内で話していたのです。
まあ、クラスメイトの半数が証言者となってくれると分かっていたから、あのまま続けさせていただきましたけどね。
「お騒がせしましたわ」
そう言って教室を後にしましたが……この先、面倒なことになりそうです。
帰宅して即、父の執務室へ説明と証書を渡すために訪室しました。
父と補佐として執務室にいた母は、私からの話を聞いて唖然としてしまいました。
そりゃあ、そうでしょう。
「アドモス伯爵家は自領の財政難の資金援助のために、我が家のもつ縁故関係を求めて婚約を申し込んできたはずだが」
親の下心、子知らず。
「それも解消できるつもりなのでしょうね」
噂では、アドモス伯爵子息の気になっているお方は、帝国からの留学生で一学年下の侯爵令嬢ですから。
中堅国の位置に立つ我が国の伯爵家よりも、豊かさで世界一と謳われる帝国の侯爵家と縁が結べる方がいいでしょう。
ただし、大きく立ちはだかる問題がひとつ。
「令嬢のクラスメイトには第三王子がおりますの」
件の令嬢は、第三王子の有力な婚約者候補だと噂されております。
そのため、クラスも違えば学年も違うアドモス伯爵子息は声をかけるどころか、近づくことも出来ないでしょう。
侍女候補と思しき母国から同行した侯爵令嬢が2人、そして我が国からも侯爵家から1人が護衛としてついています。
ほぼ確実に玉砕ですわね。
さらに、私のクラスには第二王子が在籍しております。
「私の寵愛を受けられるのは世界にただひとりだ」が口癖で、誰もが自分に愛されようと自身を磨いていると勘違い大爆発させている方です。
クラスメイトは誰もが「ないわー」と口を揃えます。
令嬢は『婚約者に相応しくない』と、令息たちも『側近としてお仕えしたくない』と。
人望など第二王子には御座いません。
助かることに、王子妃(たとえ臣籍降下が決定していようと)になれるのは公爵家と侯爵家まで。
それを知ってか知らずか、伯爵家の私たちにまで声をかけてきています。
私の婚約者枠が空欄確定したことは、この週末に拡散されることでしょう。
第二王子が王太子補佐として辺境伯家へ同行しているため数日不在でよかったです。
「ということで、いますぐ〈婚約宣誓書〉を書きたいのですが」
「待っていなさい」
元々、私には有力な婚約者候補がおり、実はほぼ内定しています。
次期伯爵である私の補佐となるべく、住み込みで領地経営を学んでくれている方です。
アドモス伯爵子息の立場も候補ですもの。
配偶者を選ぶのも、次期当主確定の私です。
その候補を自ら降りて下さったおかげで、候補者は1人だけになりました。
唯一残った候補者を婚約者として選ぶことに問題はございませんわ。
3分もしないで執務室に入ってきた彼は、入室1分後には婚約宣誓書にサインをしました。
説明は簡潔で、「婚約者候補がひとり居なくなりました」だけです。
「ご両親をお待ちしなくてもよかったのですか?」
「良いと思いますよ。第三子の私が次期当主様の伴侶に選ばれたことは、我が家にとっても喜ばしいことですから」
ひとつ上のランディことランドルフは公爵家の次男。
長子で長女のアメリア様が次期当主で、補佐は長男のカルドニア様。
公爵様と私の母が再従兄妹の縁で、幼い頃から仲が良かった私の婚約者候補だったのです。
学園に通うのに便利だということで、我が家に住んで一緒の馬車で登校していました。
私が入学する1年間でも伯爵家の馬車を使ってもらっていたのも原因でしょうか。
私の兄であり次期伯爵家当主になると誤解した令嬢たちがランディにアタックしてきたそうです。
その誰ものご実家に公爵家からの抗議文が届いたようです。
事情と誤解と娘の愚かさを知って慌てたご両親によって、休学して領邸で再教育を受けているか、退学して結婚されたそうです。
結婚された方のお相手も准男爵や裕福な商人の子息ならまだ良い方で、すでに隠居している方の後添いとして嫁いだ方も何人かいらしたようです。




