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あなたが決めたことよ【連載】  作者: アーエル


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その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。

前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。


パーティーの中で〈婚約宣誓書〉にサインをして婚約発表する予定だったのです。

我が国では婚約宣誓書にサインして、ようやく婚約者と名乗れるのです。

ですが、 私たちはまだ婚約者ではないため、婚約の話が立ち消えになっても瑕疵(かし)はつきません。


「理由をお聞きしても?」


まあ、理由はよくある「後輩で気になる子がいる」らしいです。

私の婚約者になってしまえば、その子とは仲良くなれません。

そのため、婚約をしたくないそうです。


「分かりました。ではそちらはご両親にそうお話しくださいね」


「ああ、すまない」


「もちろん、私の誕生日パーティーには参加しないでください」


「え?」


驚きの表情で動きを止めた目の前の伯爵子息に「あら?」と私も驚いてしまう。

だって、当然でしょ?

私との婚約をしたくないということは、我が伯爵家との縁を結ぶ気はないということ。

それはそのまま、我が家のもつ繋がりの恩恵も不要ということになります。


「婚約をお断りなさった御一家が()()()()()()私の誕生日パーティーに参加するのです?」


婚約(それ)以外に参加理由がなかった方々なのです。

招待される理由を失してしまえば、断られても当然でしょう。

逆に図々しく失効となった招待状を片手にやって来ても、門前で「何しにきたのですか」と追い返されるだけでなく社交界で嘲笑を浴びることになりかねません。


そのことに気づいたようで「そのとおりだな」と納得されたようです。

その場で婚約を断る旨の証書を書いてもらい、サインも頂けました。

そこには一筆、〈今後如何なる理由があろうと両家の縁を結びなおすことはない〉と追加していただきました。


「『気になる方と結ばれなかったから、もう一度婚約を結びたい』などと言われても困りますもの」


「ああ、それは当然だ」


一度白紙となった婚約話ですが、再度婚約の話が浮上した場合は前回の白紙撤回に対する慰謝料が発生します。

さらには慰謝料と倍額の保証金を相手に支払うことで、仮の婚約が結べます。

2年後に正式な婚約宣誓書にサインができ、さらに1年経ってから結婚が認められるのです。


そこは一度信用を失墜させた、いわばペナルティーのようなものです。

なお、結婚後も保証金が返されることはありません。

…………いつまた裏切るか分かりませんから。



この国では愛人は持てません。

一夫一婦制であり、如何なる理由で離縁したとしても再婚は三年後。

その間は同棲も許されません。


一夫一婦制は国王陛下でも同じで、側妃や愛妾は禁じられており、離縁しても三年は再婚できません。


それは過去にある国の国王陛下が学生時代からの恋人を即日に据えて王妃殿下を冷遇し、結果、王妃殿下は()()()()で衰弱死した事件があったからです。

いまから300年ほど前のことです。


この世界は品行方正を司るアテルス神と()()()の女神リリティスの夫婦神を奉っています。

リリティス神の司る()()()は……『慈愛』だけでなく『自愛』も含まれます。

つまり『他人(ひと)を慈しむだけではなく、自分自身をも大切にしなさい』という教えです。


過去の事件では正しい行いをしなかった国王陛下と側妃、そして王宮の侍女たちに神罰が与えられました。

呼吸以外、何もできなくなったのです。

少しでも指を動かせば全身が痛み、声を発しようとしても声帯は痙攣(けいれん)したように小刻みに震えるだけ。

勿論、嚥下が不可能なため飲食は喉を通らず。

毎日の注射だけで生き(ながら)えていたのです。

骨と皮に少しの肉という姿でありながら天命を終えました。


亡くなられた王妃殿下も、「自分を大事にしていれば逃げ出せたはず」と言われましたが、亡くなった状態から『それは可能だったのか?』という疑問が浮上しました。

物置小屋は外からのみ鍵がかけられる構造でした。

ええ、物置小屋なのですから『外から閉じ込められていた』可能性が高いのです。

神により事件と判断されたため、王族や大臣たち貴族、侍女や侍従、騎士たち。

直接関わった人たちが加害者と見做されたらしく、様々な罰が与えられたそうです。

無事だった人たちは神罰を受けた人々を見捨て、国を捨てました。


そのような慈愛をなくした行動を神が許すはずもなく……

移り住んだ国では神殿から弾かれて神に祈ることが許されず。

〈棄教民〉として流浪することとなりました。

ただ、それより後に誕生した子どもたちには罪がないため、神殿併設の乳児院に預けられてその国の孤児として守り育てられたそうです。


そんな事情から、各国では一夫一婦制度が導入されたのでした。


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