ご飯が食べられるようになった
ご飯が食べにくかった。
どうしても受け付けなかった。
だから、食べないようにしていた。
すると、必然的に体重が減っていった。
体がやせ細っていった。
このままだと、命の危険が訪れるだろう。
お医者さんにそう言われたけれど、それでもご飯を食べなかった。
おいしい物だと思えなかったから。
頭で食べ物だと分かっていても、心が受け入れなかったから。
あまたの中で、食べ物に対する認識が書き換わってしまったせいだった。
これは食べ物じゃない。
ダイエットのために、必死にそう思い込んだ影響だった。
やがて、そのせいで倒れた。
空腹が過ぎて天国に召されるかと思ったとき、なぜか急にお腹がすくようになった。
その後は、なぜかご飯が食べれるようになった。
ご飯をご飯だと認識できて、口にしたご飯が美味しいものだと感じられて、とてもとても食事の時間が幸せになった。
お医者さんは奇跡が起きた喜んだ。
周りの人も手を叩いて、ふって湧いた奇跡に感動していた。
けれど、当人だけはそれが奇跡などではないと知っていた。
ご飯が食べられなくなる前、行方不明になっていたその人物は、一人で発見された。
だから、ずっと一人で行方不明になっていたと、多くの人は思っている。
しかし、一人ではなく、実は他の人間と一緒にいた。
一人で救出されるまでは、途中まで他の人間と一緒にいたのだ。
仲の良い友達と森の中で迷子になっていた。
その森は、冬で動物もおらず、草木もかれた寂しい森だった。