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カレンダーをくれなくなった新聞屋

「すいませ〜ん、来年からカレンダー代三百円かかります〜」


 ◇△新聞の集金人は口角を上げながらも「解約はするなよ」と言わんばかりの目つきで、引きこもりのイイダに迫ってきた。


「何だよ! けっちいな。契約更新ん時の商品券もなくなって」

「申し訳ない、購読者がどんどん減って」

「お前んとこの新聞社の会長に年報下げさせりゃいいだろ?」

「そんなあ、一介の新聞屋がそんな事言えませんて」


 正確には新聞販売店である。


「大体さ、死んだ親父がお前んトコの新聞取ってたから義理で取っててやってんだ。今どきは古新聞の処理だってわざわざスーパーの回収ボックスに運んでんだよ、こっちは」

「昔は廃品回収してたんですけどね、町内会で」


 イイダは一万円札を集金人に差し出した。


「あのぅ、千円札はないですかね?」

「釣りくらい用意しとけよ!」

「今日はカレンダーだけを売りに来たもんで」

「お前バカぁ? ガソリン代の方が高くつくじゃん!」


 集金人はカレンダーを投げつけた。


「俺だって好き好んでカレンダーだけを売りに来たんじゃねえよ! ウチの馬鹿店長がとにかく売り上げ上げてこいって」

「なあ? 店には釣りあんだろ? 俺を店に連れてけよ」

「店に?」

「いいから車に案内しろ!」


 集金人は渋々イイダを車に乗せて新聞販売店へと戻った。


「あっ、店長どうも」


 新聞販売店店長はイイダに一礼するが、愛想は悪いままである。


「このヒト(集金人)が一万円での釣り用意してなかったから、店に連れてきてもらったよ」

「それはわざわざどうも」


 集金人は九千七百円と領収証を用意してイイダに差し出した。


「お待たせしました。これからもごひいきに」

「じゃ、俺んちに送って。店長、カレンダー代取るんだったら小銭だけじゃなくお札も用意させときなよ」


 イイダは集金人の車で自宅に戻っていった。


「ったく、死んだ親父の遺産で食ってるクセに三百円位でグダグダ言いやがって」


 店長はパソコンで「新聞販売店閉業の手続き」を検索した。


〈終わり〉



いつもご愛読いただきありがとうございます!


「小説家になろうラジオ」大賞に投稿する作品を執筆致しました。


年末年始のひと時にサラッと読んでいただけら幸いです。



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