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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第六章 花のない仕事
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第48話 頑張らなくちゃ

 対策課の長く続くほの暗い廊下を男三人が歩いている。

少し進んだ先に研究所があり、そこでは研究員達がせわしなく働いていた。そんな中、一人やる気のないオーラを放っている男が一人……


「は~せっかく早く帰れると思ったのに……」

「キラさん、もう諦めましょう」

「ちくしょう! 迫真の演技までしたのに!」

「あれはもうやめてくださいね。まあ、夢のためだと思って頑張りましょう!」

「? 夢?」

「ほら、初めて会った時おっしゃってたじゃないですか。オタク文化を取り戻すって!」

キラさんは少し間を置いた後、「あ~! それね~」と、思い出した顔を作った後、気の抜けた返事で僕の問いに返した。

「まあ、あれは出来たらそうしたいな~って感じだから。別に身を削る思いまでして叶えたい夢じゃないし……」

「は、はあ……」

「ちょっと! 二人共そんな気の抜けた会話はやめてください。ここには寝る間を惜しんで世界を良くしようと頑張っている人もいるんですよ。私みたいに情緒不安定で、おかしな人ばかりじゃないんですから!」


 自分がおかしいって気づいていたんだ……。でも、サイトウさんの言っていることは分かる。周りを見渡すと皆、必死になって、協力し合いながら世界樹のことについて研究している。そんな人たちとさっきまでの自分を見比べてしまい、急に情けなくなってしまった。


 僕の願いは……


言葉が出てこなかった。ここ世界樹対策課に来たのも、こんな体になったからであって、特に夢とか目標などといった大層なものはない。

そんな僕でもこの人たちを見ていると、頑張らなくちゃと思える。



「いや、そんなこと言われても……ねえ、トガ君」

「……」

「ん? トガ君?」

「いえ、そうですね」


 ぼくは何故、戦闘係の部署が小さいのか少し分かった気がした。



 「こちらです」

サイトウさんの案内で連れてこられた場所は、他と大差ない普通の研究室だった。

研究室の扉の前には数人の研究員が、棒立ちで不安そうな表情で僕たちのことを出迎えていた。


「ここで何かするのですか?」

ぼくはサイトウさんに質問した。

「いやぁ、その……」

サイトウさんは何か濁す様に言葉を詰まらせた。その様子にイライラしたのか、早く帰りたいだけなのか、キラさんが珍しく起こった口調で、もじもじしているサイトウさんに問いかける。

「さては、研究対象逃がしたのですか?」

彼の言葉には少し呆れたような気持ちも混じっているようにも感じた。

「も、申し訳ない……」

「けが人は?」

「いえ、誰もけがはしていません。危険を感じたら直ぐに逃げるがモットーですから!」

すごく安全第一で考えてます! という感じを出してはいるが、周りの研究委員たちの表情から察するに絶対そんなことはないのだろう。


「で、私たちがここに連れてこられた理由は、逃げたやつの討伐と……」

キラさんが今回の仕事内容について聞こうとした瞬間、サイトウさんは鬼の形相に変わり、キラさんの顔の前で訴えてきた。

「と、とと、討伐だなんてそんな! そんなもったいないことしないでください。この部屋にいる子は、五体満足きれいに捕獲出来た貴重な研究対象! この子を捕らえるのにどれだけ大変だったことか!」

物凄く熱く語り始めるサイトウさん、このままいくといつもの長ーい説教タイムが始まりそうだった。

「す、すみませんでした。ん? もしかして、そいつって……」

「そうですよ! 昔、私とあなたで捕まえたゼノです」

「うげ、まだ生きてたのか! あの犬だかオオトカゲだかわからん生き物」

どうやら、この研究室にいるゼノは昔キラさんが捕獲したやつのようだ。

「まあ、それならすぐに終わりそうかな? 昔って言っても世界樹が出始めた頃、まだ一年も経ってない」

そう言い放つとキラさんは固い研究室の扉を開け始めた。


「だ、大丈夫なんですか?」

僕は心配で声をかける。いくら前に捕獲したからといっても相手はゼノ、化け物だ。

ここは慎重に行くべきじゃないのか。

「トガ君、サイトウさんは大げさに、捕らえるのに苦労した~なんて言っているけど、ほとんど私一人でやってたからね。てか、あの人うしろでカメラ回していただけだし……」

「そ、そうだったのですか」

「うん、あと別に捕まえるのに特に大変でもなかったし」


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