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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第五章 女子旅行
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第41話 イソギンチャク

 私がさっきの場所に戻った時にはもう、液体の塊が穴に蓋をして、一切の侵入物を入れさせないため、大きな水溜まりを作っていた。これだと地面の穴を掘り起こせないのは勿論、近づくことすらできない……


 でも、あの小さな穴の中に何かがある! 

 掘り起こされたくないものが!


「どうしよう……これじゃあ何もできない。やっぱり無理でしたごめんなさいと、謝ってカンダさんの所に戻ろうかな…… ダメダメ、何言ってるの私! そんなのダサいじゃん!」

私は独り言をブツブツと呟きながら葛藤していた。 


 取りあえず、その辺にあった石ころを謎の水溜まりに向けて投げてみた。すると、水溜まりは石ころに当たった瞬間、周りに触手のようなものを何本か作り出し、まるでイソギンチャクのようにあたりにブンブン振り回し始めた。そして、何もない事を確認した後、水溜まりは触手の様なものを引っ込めた。

 

 たぶんあの水溜まりは領域であり、センサーなんだ! 

 侵入してきたモノを感じ取り、捕らえるため! でも、大雑把……

 何かが当たった程度にしかわからないんだと思う

 

 まあ、だからどうするのって話なんだけど……


残念ながらこの鉄壁の防御膜、私にはどうすることもできなさそう。


 ほんと、何しているんだろう……


諦めて帰ろうとしたとき、交渉の時に持ってきたお酒と食料が目に入った。

「そういえば、まだ回収していなかった。」

私は散らかっているお酒と食料を回収しようと、その場所まで向かった。


 せめて役立たずでも、このくらいの事はしないと! 手を伸ばした次の瞬間、触手が私の首に纏わりついてきた。


 「うああ……」

 

 気付けなかった


薄っすらと……よく観察しないとわからない程、薄ーく食料品に水の膜が張られていた。


そう、罠だったのだ。

私はまんまと罠にかかってしまった。


 今度のは間違いないと確信したのか液体は、私の首をぎゅっと絞めつける。明確な殺意を持った男が締め付けてくるようだった。徐々に目の前が暗くなり、なんだか走馬灯の様なものまで見え始めてきた。



 

 ガシャン!


 一切が無になり虚になる瀬戸際

私は最後の力を振り絞り、転がっていた石ころを手に持って、回収するはずだった酒瓶を割った。

割れた瓶からお酒があふれ出てくる! 首を締められ頭に血が上ってこない私は、獲物を捕る獣のように死に物狂いで、割れた瓶に顔面からダイブした。決して頭がおかしくなった訳ではない! 

顔中ガラスの破片で血だらけになりながら、お腹をすかせた賢明な犬が待ての指示を解除された瞬間、餌を無我夢中でむさぼり食べるように、私は割れた瓶の穴を口で塞いで中のお酒を飲みほした。



 酒の味は今まで飲んできた中で最悪だった……

口元が傷だらけになり、そこから酒と血がカクテルのように混ざり合ってしまったから……  でも、おかげで私の能力が発動し始めてきた。


 ああ、気分がいい♡


首を締められているのに心は踊っていた。

いや、もう苦しくはない。

いつのまにか私の顔は真っ赤になっていた。

角は生えてはいない

けど……今の私はどこからどう見ても鬼そのものだった。


 薄っすらと不気味な笑みを浮かべながら、標的の穴目掛けて腕を突っ込んだ。普通なら掘り起こす事が出来ない硬い地面もお構いなしに、穴の周りの地面ごとえぐり取った。まるで手がスコップになったみたいで、簡単な事だった。


 穴の中にあったのは、干し柿の様にカラカラで石のように硬く、あずき色をした小っちゃい人の形をしたミイラらしき物だった。いつの日だっけ? テレビで見た小人のミイラを彷彿させる……

 私がこの薄気味悪いミイラを掘り起こした瞬間、首に纏わりついている液体は更に力強く締め付けてきた。たぶん、このミイラみたいなのが本体なんだろう


 でも、もう遅い……


 私は右手に力を入れミイラを握り潰そうとした。自慢する事じゃないけど、私の握力は全然ない……  だけど今の私なら、石のように硬いこれを握り潰す事なんて造作もない。


 プチプチと気持ち悪く奏でる音が、私の心を震わせる。

 

 液体は最後の力を振り絞り私の首を絞めつけてくるが、今の私には効かない。

無力で滑稽な相手の状況を感じながら、ゆっくりじわじわと握り潰していく……


 プチプチ……プチ


 

 ああ、たまらなく気持ち良い♡


 ミイラから気色悪い液体が出始めた途端、急に大きくなり始めた。水の中で大きくなる恐竜のおもちゃのように、スポンジなのか液体をゴクゴクと飲み干すように取り込んでいった。


「……あんたナメクジみたい」


液体を飲みほしたミイラは、元の人間の姿に戻った。

最初にあった時の威勢は無くなり、無様な男が私の目の前にいる。

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