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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第二章 世界樹対策課
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第20話 夢

 社員寮の部屋は、失われていた世界が存在していた。世界樹による厄際により、多くの人が家を失い職を失った。そんな状況の中、こんなきれいな部屋を貰えるなんて、しかもちゃんと一人部屋、トイレとシャワー室、おまけにキッチンもある。ガスはまだ通ってないが十分だ。

前に住んでいた安アパートと同じくらいの六畳ワンルームの部屋だ。この寮が分かっただけで僕は世界樹対策課がちゃんとした場所だと確信した。あまりにも変人ばかりだったので、大丈夫なのかと疑っていたのだ。


 おっと、隣の人にも挨拶しないと。


 ぼくの部屋は206号室、隣の205号室にも人がいるようだし、これから仕事仲間になるわけだ。礼儀としてあいさつにはいかないと、手土産とかはもちろんないが……まあ、こんなご時世だし仕方がない。

 ぼくは部屋を出て隣の205号室の前に立ちノックした。中から出てきたのは、自分と同じぐらいの年齢で優しそうな男だった。

「初めまして、206号室をお借りしているトガショウです。よろしくお願いいたします。」

僕がそう言うと、彼もお辞儀をして挨拶を返してくれた。

「こちらこそよろしくお願いします。 カラスマエイジ です。」


 よかった 隣人は普通の人で……


「何かあったら気軽に相談してください。あと、隣の207号室の人は気が強いですからね……挨拶に行かれるのであればお気を付けて下さい。」

「気が強いのですか?」

「ええ、なにかあったら教えてください。すみません、今日は仕事が長引いてしまって、今度しっかりと挨拶させて下さい。」

「そうだったのですか、お疲れの中すみません」

「いえいえ、それではおやすみなさい。」


 ぼくは205号室のカラスマエイジさんの挨拶を終えて、207号室の前に立っていた。カラスマさん曰く、ここの人は気が強いらしいので気を付けないと……


 勇気を振り絞り、扉をノックする。すると中から黒髪のすこし目つきの悪い女性が現れた。年齢は20台半ばから後半ぐらいだろうか、とにかく不機嫌そうな顔をしている。男勝りな女って感じだ。

  

 なるほど確かに気が強そう……


そう心の中で思いつつ僕は平常心を保っていた。

「初めまして、隣の206号室に入ったトガショウといいます。」

「そう……わたしは カンダツバキ よろしく、わたしは忙しいの。あなたも早く寝たら?」

そういうと彼女は扉を閉めた。よっぽど早く終わらせたかったのかよ。気が強いというより、感じが悪いやつだった。


 朝焼けが、にじむように東の空にひろがりはじめる。

久しぶりに気持ちのいい朝だ。ここに来る前は区画のテント生活、言っちゃ悪いがホームレス生活だったからだ。


「さて、追い出し部屋へと行きますか。」

僕は気分が良かったので、つい独り言を言ってしまったが、そんなことも気にせずドアを開け、仕事場へ向かう。


 「あ! ショウさん! おはようございます。」

仕事場に向かう途中、ミナさんとハイノメにあった。二人共、かなり仲良くなったのか一緒に出社している。

「おはよう、二人とも仲いいね。部屋どうだった?」

「最高でしたよ。こんなにいい暮らししてもいいなんて、……避難生活されている方々にに申し訳ないです。」

「あまり気にしなくていいのよ。気分良く休んで仕事頑張って、少しでも早く、区画の人たちにいい思いさせるんでしょ!」

ハイノメが活を入れ、僕たちは進み続ける。


 調査課戦闘係の部屋に入ると、昨日はいなかった人がいた。フィギュアだらけの机の前に一人、男性が立っている。年齢は30代ぐらいだろうか? 眼鏡をかけて、スーツをピシッと着こなした姿は、まさに仕事ができる人って感じだ。 

でもどこか、隠し切れないオタクのオーラを放っている……

「やあ、初めまして私の名前は キラヨシツグ です。あぁ、このフィギュアたちは気にしないで、ぼくの夢だから!」

「夢?」

「そう夢だよ、今この混沌に満ちた世界には、アニメという希望が失われている。わたしの夢はアニメを、オタク文化を復活させることなんだ!」

小学生が夢を語るかのような熱いまなざしを、この人からメラメラと伝わる。

「君たちにはないのか! 夢が! さあ、ユズキ君から!」

「ええ、私ですか!」

急に振られて戸惑う彼女は頬を赤らめながら続けて答える。

「わ、わたしは少しでも 皆さんが元の暮らしに戻れるようになればと……」

「いいね、優しいんだね。次、トガ君!」

「ぼくは……すいません。今はまだ特に……」

「まだないんだね、それでも大丈夫。いずれできるさ! ようこそ世界樹対策課日本支部へ、ここが君たちの部屋だ!」

「あ、キラさんそれ昨日わたしが言いました。」

なぬ!っと驚いたキラさん どうやらここまでの流れを考えてたようだ。

ちょっと痛い人だがとてもいい人だとすぐに分かった。


 夢か……


なんだろうさっきから頭の中で声がする……

でも、よく聞こえない……

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