チェコの職人物語
酸化カリウムを主成分とするガラスをカリガラスと呼びます。17世紀ごろ、チェコ(ボヘミア)地方で、木灰から取れる炭酸カリウムを酸化カリウムの原料として、本格的に開発されたカリガラスは、チェコ(ボヘミア)ガラスの主流となりました。
透明なクリスタルとして
屈折率は鉛ガラス並み
キラキラ輝くカリガラス
チェコで作られるカリガラスは透明で涼やか
職人さんのグラヴィール技法で
細く深く刻んだ模様が繊細
職人さんのカット技法で輝きが増し
バーナーワークの優しい形状
透明なカリガラスの輝きを見よう
透明なチェコガラスの魅力を感じよう
きっとあなたにも似合うガラスがあることでしょう
着色したクリスタルとして
光を受けて色とりどり
深い色味のカリガラス
チェコで作られるカリガラスの色合いの温もり
職人さんのステイニング技法で
着色されて鮮やかに映える
職人さんのフュージングで異なる色の
ガラスを合わせた新しいデザイン
彩られたカリガラスの深さを見よう
彩られたチェコガラスの魅惑を感じよう
きっとあなただけのガラスに出会うことでしょう
チェコ(ボヘミア)ガラスとは、チェコの伝統産業のひとつで、17世紀に考案されたグラヴィール(エングレーヴィング)彫刻が特徴的なガラス工芸です。色とりどりのカリガラスや赤いエーゲルマンガラスなどが有名です。
以下、注釈です。ご興味がありましたらでどうぞ。
注1:「鉛ガラス」 酸化鉛を含むガラスの総称です。多くのクリスタルガラスに含まれます。酸化鉛には、ガラスの屈折率を高くする効果があります。屈折率1.52以上のガラスをクリスタルガラスと呼びます。カリガラスは、酸化鉛なしで、高い屈折率を実現します。屈折率が高いガラスは、ガラスへの光の入射、出射角が大きく、光が曲がります。入射光の方向とガラスのカット面が僅かに傾くと光量が変わって瞬いて見えます。ちなみに、ダイヤモンドの屈折率は、2.4と非常に高いです。ダイヤモンドは、可視光を透過しますが、紫外線を吸収します。ガラスも紫外線を吸収しますが、ダイヤモンドのほうが可視光に近い波長の紫外線を吸収します。ガラスよりも、ダイヤモンドの方が可視光の進行を妨げて、光を屈折させます。
*クリスタルガラスは屈折率以外に所定の硬度などを満たす必要があります。
注2: 「グラヴィール技法」 回転する金属や石などの円盤に、研磨剤をつけて少しずつガラスを彫り込んでいく技法です。チェコ(ボヘミア)で発展したと言われます。
注3: 「ステイニング技法」 透明なカリガラスと着色用の金属化合物(主に銀や銅の塩)を加熱して、金属化合物の金属イオンとカリガラスの金属イオンが化学反応により交換されることで、ガラスを着色する技術です。広い意味で、イオン交換技術の一つです。ガラスの表面だけでなく、内部にも着色することができます。ボヘミアのガラス技師、フリードリヒ・エガーマンが積極的に用いたそうですが、彼よりも前にも同様の技法を用いた例があります。
注4: 「バーナーワーク」 バーナーで炙って、ガラスの形状を造形します。物理や化学の学生実験では、ガラス管を炙って、伸ばしたり、塞いだり、接合したりして、試験管、T字管などを作ります。昔は、面倒に思いましたが、いまは装飾ガラスつくってみたいです。他にも、溶鉱炉でガラスを吹いて膨らます吹きガラスなど加熱による造形をホットワークというそうです。
注5: その他「ウランガラス」 チェコガラスをウランで着色したガラスです。母材ガラスの主成分は、石英で、ついで炭酸カリウムや炭酸ナトリウムで、石灰石なども含まれます。紫外線を受けて緑色に発光(蛍光、厳密には燐光)する綺麗なガラスです。ウラニル硝酸の水溶液を加熱すると、二酸化ウランができます。これを母材ガラスに混ぜて溶かすとウランガラスができます。表面の散乱光は黄緑や黄色が混ざっている色味に思われます。母材ガラスへの溶融時にできたイオン密度のばらつきが程よい色味を与えるのかもしれません。紫外線で発光した色はウランの化合物や濃度で多少変化しますが、鮮やかな緑が主です。母材ガラスの原料と微量なウラン化合物をステイニングしたのかもしれません。ウランガラスの製法については、作者の推定です。ちなみに、ウラン密度は、ガラス全体の0.01%から2%で、人が自然の中で浴びる放射線よりも少ないです。
注6: チェコガラスとボヘミアガラスについて 本作では二つを区別しませんでした。技術的にも、歴史的にも不十分な記載があるかもしれません。
以上、お読みいただきありがとうございます。