ゴブりん♪
しばらくしてスライムの景品はちびっこの間で話題になった。
ありがてぇ。
サキちゃんがちびっ子の対応を終えてバックルームに戻ってくる。
「店長〜、賑わってますね」
「全員懐の銭全てぶち込んでくれ」
「スライム如きでこんな盛り上がるんですね」
「まぁフィギュアで買ったら2,000円するからな、本物はちびっ子たちの財力じゃなかなか手が出せんよ」
「店長、スライムばっかじゃ飽きられちゃうし新しいの取りに行こ」
「それもそうだな」
と言うことで、新しい魔物を捕獲しにきました。
前と同じ山尾神社に来てみた。
「店長、あっちにゴブリンって言う魔物いますよ」
「なに?! それは誠か!!」
流石だサキちゃん。
促されるまま歩いていく。
「俺らでボスも狩っちゃおっか!」
「ダメダメ、ここでボス倒したら初心者の狩場がなくなるでしょ?」
「確かにそれもそうか…」
このダンジョンの暗黙の了解ってやつか。
確かにボス倒して消滅してしまったら素材取れなくなるもんな。
前を行くサキちゃんはマホウで近くのスライムを殲滅して行く。
風の刃を飛ばし、当たったスライムが切れて溶けて行く。
近くのアマチュア冒険者はサキちゃんに釘付けだ。
「お、おいあの地雷系のねぇちゃんが使ってるマホウ、なんだありゃ」
「すげースピードでマホウ撃ってるよ…」
「オレ、ちょっとあのねぇちゃん誘ってくるわ!」
うわ! 男達が近寄ってくる!!
「ちょ! サキちゃん、場所変えよ!」
「え、まぁいいですよ」
そのまま鳥居から左の森を抜けて小さな野原までやってきた。
サキちゃんはソマホに何か打ち込んでいる。
「…よしっと。店長ちょっとしゃがんでてください」
「え?」
言われるがまましゃがむ。
「めうめうリキッド〜っ!」
へんてこな言葉を唱えると、サキちゃんの周りから勢いよく紫色の毒々しい液体が円状に飛散する。
「うわ! なにこれ!」
「ダメ! 当たったら溶けるよ!!」
着弾した葉っぱが枯れ果てている。
よく見ると隠れていたのだろう、木陰にゴブリンらしき魔物が見えた。
しかし、それはもうぐちゃぐちゃになって溶けている。
「なにこれ! こんな危険な技どこで覚えたの!」
「これ、倒した魔物にソマホを置くと勝手にアップデートしてくれるみたい」
「え? てことはそれ…」
「そう! スライム倒して酸が使えるようになった! 最初は炎と水しか使えないから倒すのが楽になったわー」
すごいなソマホ。
「ん、まって、さっき風のマホウも使ってなかった?」
「うん、昨日ガーゴイル倒したからね」
ですよね。
周りの人驚いてたもん。
えげつないフリック入力とソマホの機能の融合。
「店長、私ドロップしたゴブリンの耳取ってくるね。あそこにいるゴブリン麻痺させといたから捕獲してくれば?」
「お、おう…ありがと」
人は見かけによらないとはこのことか。
メイクとか服装は地雷系なのに立ち振る舞いはゴリゴリの冒険者だ。
男の俺は守るどころか守られている。
肩身狭く痺れているゴブリンへと向かう…訳もなく、そんなこと全く思わずルンルンで向かう!
「いやーありがてぇ、すげぇ! ゴブリンだ!! 動画で見たまんまじゃん!!」
もぞもぞ痺れて苦しむゴブリンを四角く囲う。
—コロン
ゴブリンは小さくなって固まった。
すげぇゴブリンだ…めちゃくちゃ精巧だ…
痺れたまま捕まえたから、めちゃくちゃ苦しそうな顔で固まっている。
マヒってるゴブリン13体を捕獲した。
「あ! 店長! 私用事あったんだ! 帰る!」
サキちゃんなしだと俺は雑魚同然なので仕方なしに一緒に帰る。鳥居をくぐって元の世界に戻り、いつも通り受付のナナちゃんに成果を聞かれた。
「またフィギュアですか…用がないなら帰ってください。雲母サキ様ー! 今回はどんな成果がありましたか?!」
明らかに俺と対応が違う…後ろの小太りオーナーから「面倒ごとを起こすな」って圧も感じる…
こっち見てニヤニヤしてるサキちゃんをおいて1人で外に出た。
♢
「ナナちゃんナナちゃん」
「なんですかオーナー?」
「最近来るナナちゃんによく絡むフィギュアの男だけどさ」
「あー、あいつですか? いつもウザいですよね。弱いくせに私に絡んできて。興味ないっつーの」
「いや、そうなんだけどさ。あんな苦しい顔したゴブリンのフィギュア売ってたっけ?」
「改造とかしたんじゃないですか? オタクってそういうのやりそうじゃないですか」
「そんなもんかなぁ…」
♢
ゲーセンに戻り、おれは早速仕入れたゴブリンをゲーム機にぶち込む。前回のスライムキャッチーは10万円を超える利益が出た。
非常にうれしい。
今回はもっとお金を生み出してくれよ、ゴブリンども!!