いざ神社
初心者用でお馴染みの山尾神社に来てみた。
外から見る分には至って普通の神社だ。
鳥居の前には立派な施設が建っている。
ここで検問とか素材の売買とか諸々するんだろうな。
システムがよく分からないまま、受付のお姉さんに話しかけた。
「すみません、2名でお願いします」
「かしこまりました、入場料10,000円とこちらの同意書にサインをお願いします」
げっ…1人5,000円…公共施設といえども金を取るのか…
「店長ありがとうございますっ!」
すかさず横から顔を出すサキちゃん。
ニコっとした可愛い笑顔とは裏腹に払えよといった圧を感じた。
簡単なレクチャーを受けてサインを書いた後、鳥居に向かう。
鳥居をくぐると、目の前には先ほどまで見てた神社の面影は一切ない。
一面野原。
多くの冒険者が近場でプルプルした物体に魔法を放っている。
「うおおお!!! スライムだ!! サキちゃん! みて! スライム!」
俺はウキウキでスライムを指差す。
—スライムが燃える音
急にスライムは勢いよく燃え出して溶けていく。
「え?」
横を向くとサキちゃんはソマホをいじっている。
「すご! これ本当に魔法使えるんじゃん」
え、これやったのサキちゃん?
俺が指さして喜んでたスライムに躊躇なく火炎玉ぶつけますか普通?
そんなことを全く気にせずサキちゃんは最寄りのスライムに色々な魔法をぶっ放していく。
明らかに他の人も動揺している。
文字入力の速度がえげつないのだ。
魔法の発動がめちゃくちゃ早い。
「こ、これがZ世代…! 恐るべし…」
サキちゃんは文字盤で指を縦横無尽にスライドしている。
Z世代の真の脅威を見た気がした。
てか、フリック入力で文字打てるの?!
おにいさんは初めて知ったゾ!
「へー、こんな楽に稼げるなら私冒険者なるわー!」
サキちゃんの意外な適性がわかったことで焦りを感じる俺。
「だめだめ! サキちゃんに辞められたらいよいよ店誰も来なくなっちゃうよ!」
「じゃあ時給上げてくださいよ」
「ごめん、それはできない」
申し訳ねぇ…!!
もうサキちゃんは話を聞いていない。
先ほど受付で支給された瓶にスライムからドロップした液体を入れている。
「うわきったな…店長やってー」
ドロドロした液体がキモかったのか回収作業を俺に押し付けられた。
でも、ちょっと嬉しい。
子供の頃から憧れた魔物が目の前にいる。
魔物大好きだったから、フィギュアとかもたくさん持ってたし、その影響でクレーンゲーム専門店を始めたのだ。
初めて本物と対面できた。
まるで子供に戻ったかのような気持ちだ!!
「店長は魔法やらないんですか?」
「お! そうだな(便乗)」
「は?」
「…」
ソマホを開く。
—ソマホをいじる音
…ん?
ない…
マホウアプリがない。
消したアプリも見てみたが、無い。
その代わりに何故か「ホカク」のアプリがある。
「ホカク??」
「はやくー、店長、マホウの使い方わかります?? 教えましょっか? 2,000円で」
この女…さっきマホウの使い方知ったばかりなのにもう先輩面だ。
バカにされたもんだ。
使えるわけなかろう!
ないんだもん!! マホウ!!
「いや、ない…マホウ」
「え?」
ホカクの画面を見せる。
「え、何ホカクってwww」
プルプル震えて俺のソマホをいじっている。
「え、店長、なんか出てきた」
ソマホ画面には説明書きが出ていた。
「えーっとなになに、魔法陣で囲むことで、対象の魔物を捕獲できます。ふむふむ」
夢のようなアプリ!!
マホウが使えないとかこの際どうでもいい!
使い方がわかればすぐ実行!
ホカクを起動する。
するとソマホのカメラ部分から赤いビームが出力された。
ビームと言っても大した威力はなく、地面に薄い跡がつく程度である。
また射程距離もせいぜい5メートルといったところ。
前にいるサキちゃんに当ててみたが痛くも痒くもない模様だ。
人間に対してダメージはないようだ。
「で、これをどうしろと?」
ソマホの画面を見ると、ホカク使用時のイメージ画像がでていた。
四角い印の上にモンスターが立っている。
なるほど、魔法陣といってもただ四角い線を地面に書けばいいのか。
スライムに恐る恐る近づく。
ビームを使ってスライムを四角い線で囲う。
次の瞬間…!
—ポンっ!
スライムはいきなり姿が小さくなり固まってしまった。
ころんと転がっている。
さっきまでサキちゃんの腰ぐらいあったのに。
…
「「ええええ?!」」
「店長! すごいじゃんこれ!! これもうフィギュアだフィギュア!」
「なに、この夢のような機能…」
それから俺らは周りのスライムを片っ端から倒したり捕獲したりした。