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漢のロマン。

 沖縄から戻ると相変わらず店のバーカウンターにはデギマルからオーナーまで勢ぞろいだ。

 ネルはまたまた美味しそうにジュースを飲んでいる。


 しかしリュックが重たい。

 ドライアドに加えて見たことない魔物がたくさん入っている。

 これが命の重みか…!


「おや店長、おかえりなさい。遅かったですね」


 座ったままのんきに緑茶を嗜むオーナーから話しかけられた。


「ちょっとな、いろいろ仕入れるものがあって」


「そういえば、店長さんの魔物フィギュアってどちらで仕入れてるんですか?玩具大手のコウデイが出しているフィギュアとは少し違いますよね。ここに置いてあるハーピーなんて見たことありませんよ」


 勘のいいやつめ…


「あれっすよ。ちょっとした知り合いがいてね…」

「あら!私もフィギュア好きなんで今度紹介してくださいよ!」

「あ〜、いや!シャイなやつなんす、アハハ」


「テンチョー!故障!!」


 サキちゃんとカミラはゲーセンを忙しなく動いてくれている。

 ナイス!サキちゃん!!

 店奥から呼ばれて席を外す。


 クレーンゲームの故障を治しながら彼女へグッドポーズを捧げる。

 俺を一度見ただけで目を逸らされた…


「あ、そうだテンチョ。近所のグルシャ教会でボスっぽい魔物が発見されたらしいですよ。店長ならやれるんじゃない?」


 いや無理だろ。


「そいつ面白い個性持ってるらしいよ店長。行くしかないでしょ」


 そうニヤけて煽られた。

 そりゃ見てみたいけどよお!!

 アンタは強いかも知れないけどさ…


「透明化だって」


「行きたいです」


 かくして、久々にサキちゃんと近所にある教会、グルシャ教会に赴くこととなった。


「その前に店長、ちゃんと出退勤押しておいて。前回忘れてたから」


「す、すまん」


 


 グルシャ教会に着いて早々、キオスクの様子がおかしいことが遠目で分かった。

 どうおかしいかと言うと、そうだな…

 多くの冒険者でごった返している。


「うわ、何今日。イベントとかやってんの?」

「そんなソシャゲみたいなことある?帰る?店長」


 キオスクから出ようとすると、男の声が館内に響きわたる。


「お集まりいただき誠にありがとうございます。それではこれからオーディションを開催していきますので、列になって教会内部までお越しください」


 オーディション??

 冒険者達はゾロゾロと教会へ流れ込んでいく。

 何が何だかわからないな。

 近くの若者を捕まえて聞いてみよっかな。


「お前知らないでここ来たの??あの魔法王女こと愛のメルボルンさんとボス討伐に行ける冒険者を選んでもらえるんだぞ!!!しかもそのボスは透明化持ちときた!!あの美女と冒険に行ける上にユニークソマホ持ちになれるんだよ!絶対俺が勝ち取るぞ…!!」


 なるほど、あらかた把握できた。


「どうする、サキちゃん」

「えー、オーディション参加しなくていいならダンジョン自体は空いてそうだしね」


 なにしろ今日はその魔法王女がダンジョンを貸切にしているらしく、入場料が一切発生しないらしい。


「まじ?!店長!!無料!!いこいこ!!」

「そうすっか」


 キオスク内の冒険者はほとんど教会へ移っているらしく、ほぼほぼ最後尾に並んで教会をくぐった。

 

 教会内部はいつも通り予想外の世界に繋がっていた。

 世界というより大きなお城の広間だな。

 教会の外観と明らかに広さが違う。

 これはダンジョンで間違いないよな?


「はーい、じゃ参加者の人はこっち来てねー」


 デブったい男が冒険者の列を誘導している。

 

「君たちも志願者??まぁいいやオーディションするならこっちならんで」


 「俺たちは参加しません!」と言いかけたものの無視されてしまい城内の部屋に通された。

 部屋に入るなりデブったい男が宣告する。


「お!そこの女の子!!君強そうだね〜!こっちおいで〜!合格だよ!」


 サキちゃんが指を差された。


「え、わたし?いや結構です」


 そんなサキちゃんの断末魔は周りの冒険者のザワザワにかき消された。

 俺も同伴者なので仕方なくついていく、が男が突き放し来る。

 なんなんこいつ?!


「はい、そこの冴えない男、君いらない。君弱そうだもん」


「はぁ?!」


 さっきまで困り顔だったサキちゃんは俺をみてニヤけている。

 おい、いつからそっち側に行った、お前…

 完全にバカにしてやがる…


「絶対先にボス倒してやるぞ…」


 そう、俺はサキちゃんと逸れた時のことも考えてコイツらを持ってきたのだ。


 スライム5体、ゴブリン5体、沖縄で捕まえた刺々しい蜂。あとドライアド。


 最後のやつはたぶん使えないが、少なくとも他は役に立つはず。


 オーディションに合格していくやつは悉く綺麗な女性ばかりで、選考基準が自ずと判明する。

 詰まるところ、この太った男が主催なのだろう。

 綺麗な女性だけのパーティーを集めるなんて…クソが!!

 同じ男として風上どころか風下にも置けない。非常に羨ましい。


 部屋に残された男達は文句を垂れて帰還するものがほとんどだった。



 俺はやるぞ…!!

 城内はちょっぴり怖い雰囲気だが勇気を振り絞って歩く…!

 また1人か…



「1人じゃないっすよ。俺様もついてます」


 後ろから肩に手を置かれた。


「どんな戦い方するんだろうなって気になっちゃったんで、後つけてきました」


「デ、デギマルゥ…」


 恋愛対象の幅が広ければ俺は惚れていただろう。

 いや、もう男としては惚れているのかもしれない。

 ラブ!!


つづく!

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