デギマルぅ!
デギマルを連れて戻って来た。
「お! 店長帰って来たぞ!」
「店長! はやくハーピー挑戦させてよ!」
客が騒ぎ出す。
俺が目玉商品を持ち出していたからだ。
「ごめんごめん! 箱壊れちゃったからまた明日来て!」
「えー! やりたかったのにー!」
「まじごめん!」
箱開けちゃったから後で封し直さないと…
しかし重たいなデギマル!
作りかけのバーカウンターの椅子にデギマルを寝かせる。
それを怪しそうにサキちゃんが見ている。
「え、誰ですかこの人」
「デギマルっていう有名な冒険者らしいぞ」
「デギマルって獣神デギマル?」
「なんだ知ってんのか」
「インフルエンサーじゃん、やば」
有名な冒険者はSNSとかで活躍してるらしい。
若い世代に人気なんだとか。
「素行悪いらしいよ、この人」
「…うるせぇ…」
デギマルが起きた。
そして開口一番大声を出した。
「あ!! 命の恩人! どこだ?!」
キョロキョロ見回している。
俺を見るなり駆け寄って来た。
「おっさん!!! あんただよ!! 名前は?! てかありがとう!!」
「いやいや店長でいいよ」
「そうか! 店長! ありがとう!!」
サキちゃん達はポカン、だ。
事の成り行きをカミラが説明してくれている。
「あー、渋谷で起こった魔物事件、店長達だったんだ」
「いやー、マジびびったよ」
「どんな魔物?」
デギマルにブンブン握られた手を振られながら皆の質問に答えていく。
「俺様の名前はデギマルです! というか店長! 店長はどんな魔物を狩ってそんな強くなったんですか?!」
「え? あー、俺ねマホウ使えないよ、だから狩った事ないの」
「じゃあさっきの魔物はどうやって?」
「あー、あれには訳があってね」
絶対に口外しないことを条件に、ホカクについて教えた。
「なるほど!! てっきり特殊個体を倒したのかと思ったぜ!!」
ダンジョンには特殊個体と言われる魔物がいるらしく、それを倒す事で特別な能力、いわゆるスキルが手に入るらしい。
「え、とすると…スライム倒したら毒が使えるのって普通?」
「普通なんてもんじゃねぇ! 毒使える奴なんているのか?!」
「この子」
サキちゃんに指差すと手をヒラヒラさせて反応する。
「ポイズンスライムを倒したのか…山尾神社にいる可能性があるって言われてたがマジでいたんだな…」
デギマルはひとしきりぶつぶつ言った後、ソマホを見てパッと前を向いた。
「俺様、これから収録があるからここら辺で。また来ます店長! というか当分働かせてもらうわ!」
「え、はぁ?!」
ハヤテの如く去っていった。
「なんなんですか、あいつ」
「いやあ、よく分からん」
カミラと棒立ちで見送った。
「ねーねー! 店長! オレンジジュース!!」
ゴブリンキッズのネルに完全に懐かれてしまった。
友達がいないことに同情してジュースを与えてしまったのが悪かったのだろう。
「だーかーらー! まだバー開いてねぇよ! 来週きやがれ! ほら、帰れ帰れ」