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受験に失敗してニートになりそうだった俺、人気イラストレーターのお姉さんのヒモになってしまう  作者: beru


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第二十一話 ヒモ生活やっていることは知られたくない


「いやー、今日は遅かったねえ。今、どんな感じ?」

「まあ、順調ですかね」

「そっか。へへ、一緒にドライブ出来るとイイネ。いや、お望みなら、レンタカーでも借りて、私が運転するけど」

 家に帰った後、いつもと同じ様に佳織姉さんと夕飯を食べながら、他愛もない談笑に花を咲かせる。

 佳織姉さんを車に乗せたいという気持ちはあるが、彼女も免許は取得済みであり、おまけに車を買うとなると佳織姉さんの金を頼らざるを得ないので、どっちにしろ複雑な気分であった。

「ね、今日何かあった?」

「え? いえ、別に」

「うそー、帰ってから、何か元気なかったよ。あ、モトカノと、何かあったんでしょう」

「元カノって……米沢さんとはそういう関係じゃないって言ってるじゃないですか」

「むうう、何か信じられないんだよねえ。わざわざ同じ教習所に通うなんて、偶然にしては出来すぎだし」

 偶然以外の何物でもないし、俺だけじゃなくて米沢さんだって、俺がいてビックリしているだろうよ。

 てか、どうも佳織姉さんは俺と米沢さんが付き合っていると思っているっぽいが、そんなに仲良くしているように見えるのかなあ。

「いあ、今日も会ったんですけどね。日曜日に、お昼一緒しないかって誘われたんです」

「ふえっ!? それ、デートのお誘いじゃん。やーん、裕樹君、私がいるのに浮気は駄目だよ」

「だから、悩んでいるんですよ、行くかどうか。日曜も予約入れてるんで、多分、そこで鉢合わせになっちゃうんじゃないかと……」

「ふん、行きたいなら行けば。私のお金で、精々、他の女と豪遊するがいいのよ。んっ、ぷはあっ!」

 佳織姉さんが不貞腐れた口調で、缶ビールを冷蔵庫から取り出し、一気飲みする。

 妬いてくれてるのなら嬉しいが、やっぱり良い気分はしないよな……俺も佳織姉さんが他の男と二人で食事しますなんて言ったら、怒ると思うし。

(言うべきじゃなかったか……)

 向こうから聞いてきたとは言え、米沢さんの事をあまり話すのは良くないな


 日曜日――

「あ、こっち、こっち」

 結局、断る口実が思いつかず、米沢さんと一緒にお昼を食べる事にし、教習所のエントランスで彼女が手を振って俺を招く。

「どうも。仮免試験どうだった?」

「今、修了検定合格したよ。学科試験は午後から」

「はは、そりゃ良かった。おめでとう。学科は簡単らしいけど、頑張ってね」

 無事合格したようで何よりだが、俺も早ければ今週中にも仮免取れそうなので、頑張らないと。

「野村君は、もう教習は終わり?」

「うん。日曜はやっぱり混んでいるみたいで」

「そっか。じゃあ、行こうか」

 米沢さんはまだ学科試験があるので、あまりのんびりは出来ないが、時間はあるので、二人で近くにあるファミレスにランチに行く。

 ちなみに、当然昼飯代は佳織姉さんから貰っており、彼女の小遣いで他の女と食事……罪悪感あり過ぎて、申し訳ない。

 でも、付き合ってはいないことを理解してくれたのか、よくオッケーしてくれた物だ。渋々ではあったけど。


「へえ、大学も結構大変なんだ」

「そうなの。教職課程って授業多くてさあ」

 と、ファミレスで他愛もない話をしながら、米沢さんと昼食を摂っていく。

 が、ほぼ彼女が一方的に喋っており、俺は相槌を打っているだけで、特に大学生活の話になると、滅茶苦茶気が重くなってしまう。

 忙しくも充実してるキャンパスライフ……特に、米沢さんは将来の志望がハッキリしているから、頑張っているんだな。

「それでさー、野村君はどう?」

「う……」

 とうとう、俺の事を振られてしまい、どう答えるか悩む。

 適当に浪人しているとでも言っておくかな……

「その、実は……今、ちょっと浪人中で……」

「? そうなの? えっと、でもどうして教習所に?」

「先に免許取っておけば、楽になるかなって……ごめん、変だよね。地元じゃちょっと居辛くて、ここに通ってるんだ」

「あー、うん。まあ、そういう事なんだ。何かおかしいなって思って……」

 無理がある言い訳だが、米沢さんはわかったようなわからないような顔をして、ジュースを飲みながら頷く。

「頑張ってね。卒業式で、野村君、凄く落ち込んでいたの見てさー。大丈夫かなって思ったんだけど……何か話しかけずらくて」

「そう。ごめん」

「いや、謝ることじゃないよ、うん」

 確かにめっちゃ落ち込んでいたな、卒業式は。

 米沢さんにも心配かけちゃったが、あの頃はお先真っ暗でどうしたら良いかわからなかったし、佳織姉さんとの約束もとっくに忘れていた。

 騙している事は悪いが、やっぱりヒモやってるとは言えない。


「ごちそうさま。私、もう行くね。学科試験の勉強したいし」

「うん。あ、あのさ。良かったら、写真一緒に撮らない?」

「え? 私の?」

「さ、再会記念に撮りたいなって……駄目?」

「良いよ」

 席を立とうとした米沢さんにそう頼むと、訝しげな表情をみせながらも、米沢さんもすぐに応じ、スマホでツーショット写真を撮る。

 何故かと言うと、佳織姉さんに恋敵になりそうな米沢さんの写真を撮って来いと言われたからだ。

「よし……ゴメンね、急に」

「ううん。へへ、ありがとう」

 撮影を終えると、米沢さんも頬を赤らめて嬉しそうに礼を言う。


「おうおう、どうだった? 彼女から貰った小遣いで浮気した感想は?」

「一緒にお昼を食べただけですって。それより、写真これで良いですか」

「あ、撮って来てくれたんだ。う……結構、可愛い子じゃない……これが裕樹君の元カノ……」

 写真を見せると、佳織姉さんはグヌヌと言いながら、渋い顔をするが、だから違うって何度も言ってるのに……。

「どうするんですか、その写真?」

「内緒」

 と言う佳織姉さんだが、何だか嫌な予感はしながらも、悪用はしないだろうと信じるしかなかった。


「ねえ、裕樹君」

「何ですか?」

「今度、桜さんと一緒にご飯食べに行かないって誘われてるんだけど、裕樹君はどうする?」

「初芝さんとか……良いですよ」

 仮免試験が近いので、学科教本を片手に勉強している最中、佳織姉さんがそう言ってきたので、即了承する。

「やったー。桜さん、裕樹君に会いたがってたからね。んじゃ、早速、そう連絡するね」

 そういや、初芝さん、この前も俺と一緒に食事しないかって誘っていたな。

 もちろん、佳織姉さんと一緒ってのが前提な訳だけど、彼女に誘われるって事は、割と好かれているんじゃないかと変な期待もしてしまい、胸を躍らせながら、勉強にもいつも以上に身が入っていたのであった。


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