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受験に失敗してニートになりそうだった俺、人気イラストレーターのお姉さんのヒモになってしまう  作者: beru


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第十三話 お姉さんとのヒモ生活での焦り

「むうう……」

「…………」

 デートの翌日、佳織姉さんが昼間から何故か俺を睨み付けていた。

「あの、どうしたんです?」

「別にー……スパゲティー美味しいなと思っただけ」

 今日の昼飯は、カルボナーラを作ったのだが、お気に召したのか召さなかったのか、ズルズルと音を立てながら、佳織姉さんも食べていく。

 どうも、昨日から微妙に機嫌が悪い。ラブホテルに入ろうとしたのを拒否したの怒ってるんだろうか?

「あの、昨日の事なら、謝りますけど、やっぱり入りにくいですよ……」

「男女一緒なら遠慮なく入れるじゃない。もう十八歳以上で高校も卒業してるんだから、問題ないでしょう」

「そりゃ、そうですけど、その……俺達って、付き合ってる訳じゃないんですよね?」

「えっ? えっと……う、うん。一応……」

 念の為、確認をしたが、やっぱり付き合ってはいないんだよな、うん。


「でも、でもね。友達には付き合っているって事にしているの。桜さんにも年下の彼氏が出来たって言っちゃって……付き合ってる訳でもないのに、同棲なんておかしいし、説明も面倒と言うか……」

 あー、そういうことにしちゃってるのね。

 確かに男子と二人きりで同居して養っているのに、交際を否定するのも苦しいし、付き合っていることにしておいた方が手っ取り早いのは確かか。

「は、はは……ですよね」

「うん……私なんか嫌でしょう? 五歳も年上で、何かオタクっぽいし」

「全然、そんなことないです! 関係ないですって、そんなの!」

「ふえっ? そ、そう……」

 年上とかオタクとか、全く関係ない所か、大歓迎であるので、そんなことは言わないでほしい。

 むしろ、五歳も下の男なんかと付き合いたいのかと逆に思ってしまうが、このまま付き合えたら、俺は……うん、嬉しい。

「あー、はは……この話、止めようか、もう」

「ですね……」

 微妙に気まずい雰囲気になってしまったので、この話を打ち切り、そのまま黙って、昼飯を食べていく。

 佳織姉さんと付き合う……出来たら、全然悪くないんだが、このまま付き合ってしまっても良いのかという気持ちもあるのだ。


「はあ……どうするかな……」

 佳織姉さんと同居を始めて、早くも一ヶ月が経ってしまい、このままの生活を続けていいのか悩む。

 この一ヶ月、家事か佳織姉さんに小遣い貰って遊ぶかしかしておらず、マジで主夫と言うかヒモ生活を満喫していたが、楽ではあるが、やりがいと言うか、充実感はイマイチなく虚しいばかりであった。

「俺、ずっとこの生活を続けるのかな?」

 佳織姉さんに養われる生活……悪くはないのだが、これをずっと続けるのはちょっと人としてアレな気もしていた。

 やっぱり、大学受験、もう一回リベンジするかな……まだ五月なので、今からなら、間に合うかもしれないけど、受験するなら参考書とか実家から持ってこないといけないし、予備校にも通わないといけないから、どっちにしろ金がかかってしまう。

「どうしたの、そんな黄昏て」

「いえ……俺、ずっとこの生活続けて良いんですかね?」

「良いに決まってるじゃない。私と同居するの嫌なの?」

「嫌じゃないんですけど、何かこう……付き合ってもいないのに、女性と同居し続けるのっておかしな感じもして」

 やりがいがないと言うのは、佳織姉さんに失礼な気がしたので、そういうことにしておくが、実際、佳織姉さんと付き合ってる訳でもないのに、ただの親戚ってだけで、一緒に住むのも変だよな。

 出来ればお付き合いしてほしいなーって思っているけど、ヒモ状態の俺から胸を張って言えることじゃない。


「そっか。じゃあ、結婚する?」

「ぶっ! け、結婚って……」

 あっさりととんでもないことを言い出したので、

「いや、男女が一緒に住むのがおかしいって言うなら、結婚しちゃえばおかしくないと思ってさ。別に良いじゃない。妻の稼ぎで食べている夫が居ても。専業主夫って形なら、全然恥ずかしくない、うん」

「いやいや、そうかもしれないですけど、そんなあっさり言わないでくださいよ」

 結婚なんて重大な事をあっさり提案したことに驚いたというか、ドン引きしてしまったが、佳織姉さんは真剣な顔をして、

「あっさり言ってビックリしたかもしれないけど、本気だよ。結婚するの嫌?」

「嫌って言うか、簡単に返事出来ないですよ、そんなの……」

「だよねー、はは……でも、私は裕樹君にずっと一緒に住んで欲しいって、家事を担当してもらえると助かるんだよ。だったら、いっそ結婚しちゃった方が手っ取り早くない? 大丈夫、生活費はお姉さんに任せて。不自由させないから」

「う……」

 冗談と言って欲しかったのだが、胸を張って、佳織姉さんが結婚を迫ってきたので、言葉を詰まらせる。

 要するに、一生お手伝いさんみたいな形で住んでくれ的な意味で言っているのかもしれないが、流石に結婚は今すぐ決断出来なかった。

「ウチの両親なら、絶対反対しないと思うよ。だから、心配なし。今すぐ、婚姻届貰ってくるから、ちゃちゃっとサインして出さない?」

「ちゃちゃっととか、無理ですって」

「うーーん……そっかあ。じゃあ、考えておいて。返事は急かさないから」

「いや、本当に俺で良いんですか?」

「良いから言ってるの。信じられない?」


 信じたいけど、そんなあっさり言われると、本気か疑ってしまう。

 ちょっと意地悪なことをしてみるか。

「結婚するなら、その……当然、こういうことしても良いんですよね?」

「へっ? きゃあっ!」

 と、言うと、不意に佳織姉さんの胸を触り、佳織姉さんも悲鳴を上げて、手を払いのける。

 ほら嫌じゃないか……。

「な、何するのよ~~……」

「いや、結婚して夫婦になるなら、こういうエッチなこともしてくれないと意味ないですよ。夫婦ってそうですよね?」

 顔を赤くして睨みつけていた佳織姉さんに真顔でそう答えると、佳織姉さんも俯いて考え込む。

 セクハラなのは重々承知だ。

 しかし、結婚を迫るなら、セックスやキスだってするのは当然だろ。


「そ、そうよね……うん、良いよ、触って」

「マジですか?」

「夫婦になるならそうだよね。本気だって所を見せたいから」

 覚悟を決めたような真剣な顔で、俺の前に胸を突き出す。

 ブラウス越しに見える彼女の胸は程よいボリュームで、今すぐ食いつきたい欲求に駆られるが、

「あの、すみません……今すぐはちょっと……あっ」

「…………んっ!」

 躊躇していると、佳織姉さんが俺の手を右の胸に当てて、不意に口付けを交わす。

 こ、これは……てか、佳織姉さんの胸、柔らかいっ!

「ん、ちゅっ……んっ、はあ……ど、どう? これで本気だってわかった?」

「う……あの……」

 ようやく顔を離して、佳織姉さんが真剣なまなざしで言うと、俺も困惑していると、

「これ以上、して欲しいって言うなら、君の方から来て。いつでも待っているから。それじゃあ……」

 そう言って、佳織姉さんは部屋を出てしまう。

 これ以上って事は、もう本番ってことだろうが、佳織姉さん、マジなのか……。


「はい。貰ってきたよ」

「え……なあっ!?」

 夕方になり、珍しく何処かに出かけた佳織姉さんが俺の前に一枚の紙を差し出す。

「婚姻届」

「マジですか? いや、今サインするんですか?」

「今じゃなくて良いよ。その……大人の関係になる決心が付いたらで良いから……とにかく、結婚する決心がついたら、夜中に……いや、夜中じゃなくても良い。襲ってきて!」

「ストレートすぎますよ!」

 本気で結婚したくなったら、自分を襲えとはとんでもない条件だが、当然のことながら今すぐ返事は出来ず、佳織姉さんとの際どい同居生活が続いていったのであった。


『結婚したくなったら襲いに来て!』

 夜中になり、彼女の言葉が頭を何度も過ぎり、眠れぬ日々が続く。

「本気で言ってるのかなあ……」

 俺と結婚しようかなんて、軽々しく言ってしまうなんて、とてもじゃないが本気とは思えない。

 でも、佳織姉さんとの結婚は全然悪くないし、嬉しいので、今すぐにでも佳織姉さんの部屋に飛び込みたい気持ちもある。

 が、こんなヒモ状態で結婚してしまって、お互い幸せになるのかと、自問してしまい、軽々しく決断は出来なかった。

 何より、佳織姉さんは良くても、俺がこの状態を受け入れ切れないんだよな……。

 せめて、就職して自分で稼げるようになりたいんだが、大学受験への未練もまだあるし、自分の進路で悩んでいる。

 いっそ、佳織姉さんの所に永久就職……と行ってしまって良いのか。


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