8
いつもお読みいただきありがとうございます!
エヴェリーナの熱が下がり、起き上がれるようになるまでに一カ月かかった。
心労などが重なったためでもある。
体力がすっかり落ちているが、なんとか座れるようになったエヴェリーナの前に四人の魔女、正確には三人+相変わらず鳥の被り物の一人が勢ぞろいしていた。
「アビゲイルだっぺ」
「妾はシャルロッテじゃ」
「……スカイラーです……えっと、ちゃんと魔女なので……」
上から順に老婆、ピンクの幼女、鳥人間の順である。
「で、私が君を誘拐したオルタンスだ」
そして、凛々しい女性。騎士服がとんでもなく似合っている。
「……誘拐って……自分で言った……」
「素直でいいっぺな」
「本人の同意がないのじゃから誘拐に違いないのじゃ」
「私達は魔女だ。そして君のこともすでに魔女にしてしまった」
「あっさり言っちゃうんだっぺな」
「……事実はまわりくどく……ない方が……いいよね?」
「もう人間に戻れんぞ」
オルタンスという魔女が淡々と口にするたびに、他の三人は律儀にツッコミを入れている。
それぞれのカラフルな髪色と、明かされる内容にエヴェリーナは目を瞬かせた。
「魔女になったからといってすぐ魔法を使えるわけではない。魔法を使えるようになるには修行が必要だ。さらにまだ人間の頃の名残で体に魔力が馴染んでいない。馴染ませる修行も必要だ。じゃないと魔力がうまく体内で循環せずに死ぬ。よってこれから修行を開始する」
「軍人みたいだっぺ」
「なんか……厳しそう……」
「どんまいなのじゃ」
「まずは滝行からだな」
「いや、それはアホだっぺや」
「いきなり……オルタンス、正気……?」
「あったまおかしいのじゃ!」
「む、滝行は早いか?」
「……体力も落ちてるから……ウォーキングを兼ねて……薬草採集から始めたら?」
「まず筋トレだっぺや。そのほそっこい腕を見るっぺ」
「恐怖心をコントロールするのにバンジージャンプからじゃ!」
「いや、バンジージャンプは風邪ひくだろう」
言い争いを始める魔女達。
エヴェリーナはポカンとしながら、その様子をしばらく眺めた。
「あのぅ、質問をしてもよろしいでしょうか?」
魔女達は声を発したエヴェリーナの方を一斉に向く。
「ほぅ、礼儀をわきまえたおなごじゃな」
「なんでも……聞いて」
「スカイラー、それはオルタンスのセリフだっぺ」
「なんでも聞き給え」
「オルタンス、偉そうなのじゃ」
「しー……話……進まない……」
「我々はお口にチャックだっぺ」
「魔女とは一体、なんでしょうか? 他国に魔法使いがいるとは聞いたことがありますし、おとぎ話に出てくる魔女についても知っております。どこか違うのでしょうか?」
「そうか、君の国には魔法使いも魔女もいないんだったな。失念していた。大昔だが南の国の魔女狩りはひどくてな、魔法使いも魔女も皆いなくなってしまったんだ。それによって君のいた国で魔法は失われていった。説明不足だったな、そこから説明しよう」
オルタンスは過去に思いを馳せるように目を伏せると、説明を始めた。