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「拾ってきた」
「こんなに身なりのいいお嬢様がどこぞに落ちておるわけないじゃろう」
「地下牢で拾った」
「はぁ?」
「シャルみたいに地下牢を監視していた」
「はぁぁ!? オルタンス、お主! 妾の趣味の地下牢ウォッチングを真似たのか!」
「シャル、そんな趣味があったっぺか。確かに絶望した人間を見つけるには地下牢ウォッチングがいいっぺな」
「……地下牢……ウォッチングって……趣味って言っていいの……?」
「勝手に妾の趣味を真似るでない!」
「仕方ないだろ。ちょっとシャルを見習って水晶覗いたらこの子がいたんだから」
「何を勝手に『運命だからいいだろ』みたいな言い方をしておるのじゃ!! お主、どこぞの王子様気取りか? 絵本の王子様のつもりか? 騎士服着といて?」
「いやいや、そんな。運命なんて言っていない。それに騎士服は私の好みだから関係ない」
スカイラーの趣味に対するツッコミは無視された。
「二人とも静かにするっぺ。あの子が目を覚ますっぺよ」
アビゲイルの言葉に二人はハッとバツが悪そうに顔を見合わせて従った。
「あの子を……魔女に……したの?」
「あぁ」
スカイラーの漏らした言葉は先ほどよりも小さな声だったにも関わらず、無視されなかった。
子供ができない魔女達はどうするのか。その場合は人間を魔女(魔法使い)にするのだ。
しかし、全ての人間を魔女(魔法使い)にできるわけではない。世界に絶望した人間のみが人間から魔女(魔法使い)にされる。
「王子の婚約者だった子なんだが、冤罪をかけられて地下牢に入れられていた」
「それは……また流行りの……」
「まさかアビゲイルの魅了か?」
「何でもかんでもオイラのせいにしないで欲しいっぺや~。オルタンス、その子はどこの国から拾ってきたっぺ?」
「南の国だ」
「じゃあオイラじゃないっぺ。オイラ、暑いの苦手だから南の国には近づかないっぺ。それに南の国の国民性はオイラと合わないんだべ。あの国の気候と同じ暑苦しい人間性はちょっとな~」
四人の魔女達はベッドに眠る少女を見る。少女の褐色の肌と銀色の髪は確かに南の国でよく見られる特徴だ。
「あの子を……後継にするのね……?」
「最初はそんなつもりはなかったんだがな。もう魔女にしてしまった。私の後継にする」
「まさかオルタンスが先に一抜けるとはのぅ」
「でも後継にするって言っても魔女の訓練もしないといけないっぺ。先は長いっぺよ~」
「確かに……子育て……これから大変……」
「彼女は地下牢で他の囚人に襲われそうになって死のうとしていた。さすがに見ていられなかった」
「ふぅん。皮肉なものじゃな、オルタンス。お主は拾った後継はお主と同じような境遇だなんてな」
シャルロッテは意味ありげに目を細める。見た目が幼女なので悪戯を企んでいるようにしか見えない。
「運命とは皮肉なものだ」
「結局お主、運命とか言っておるではないか」
オルタンスはちょっと笑ってスコーンに手を伸ばした。