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いつもお読みいただきありがとうございます!

「うん……だって人怖いし……いつも通り薬は……作って馴染みの商会に卸してるけど……」


「ふん。ちゃんと適正価格で売っておるんじゃな?」


「う、うん……その辺りはちゃんと厳しいから……」


「オイラが紹介した人だから大丈夫だっぺ」


アビゲイルはニヤニヤしながら紅茶を飲む。


「なら大丈夫じゃな。それまではやっすーく買いたたかれてたんじゃろうて」


「う……確かに……そうなんだけど……」


「まだ前の暴力夫が怖くて外に出られないわけか? もうとっくにあの夫も死んだのじゃ。スカイラーは大手を振って歩いて良いんじゃ」


「う……というか……でも……まだ……人間全部……怖い……」


スカイラーは政略結婚した夫に日常的に暴力を振るわれていた。彼女が引きこもりでコミュ障になったのもすべて夫が原因である。それまではただの控え目で謙虚な令嬢だった。

魔女になってからも目を合わせるのが怖くて被り物が手放せないし、周囲が声を荒げる出来事があると自分に関係なくてもビクビクしている。

でも彼女の作る薬はすべて一級品だ。特に傷薬は塗ると傷の治りが早いと評判だ。


「それに引きこもってばっかりならイイ男にも出会えないのじゃ。絶望が融けるか、子供ができるまで妾達は死ねないではないか。早く楽になりたいのぅ」


最後は独り言のように言ってスコーンをむしゃむしゃ食べるシャルロット。


魔女の子供として生まれるか、人間が絶望して魔女になるか。魔女になるにはこの2パターンだ。


魔女の子供として生まれたならだいたいの寿命は決まっているが、元々人間だった魔女達はなかなか死ねない。絶望が融けるか、あるいは子供(後継)ができるまで死ねない。

しかも、人間と魔女の間には子供ができにくく、魔法使いと魔女の間ではさらに子供ができにくい。

だから子供ができるまでといっても非常に難しいのだ。子供がなかなかできない魔女達はどうするかというと―


「オルタンス……来た……」


「ふん。大遅刻じゃな」


「なんかもう一つ気配があるっぺや~」


3人の魔女達は待ち人の気配を悟った。だが、その中にもう一つの気配がある。


「遅れて悪かったな」


ぶっきらぼうな口調とともに現れたのは、背の高い騎士服を纏った女性。髪はひっつめているが見事に赤い。腕には夜会にでも出ていたのかというような豪華なドレスの少女を抱いている。


「それ、死んでおるのか?」


意識も血の気もない少女を見てシャルロットは興味をそそられる。


「気を失っているだけだ。すまないがしばらく寝かせてやってくれ」


「ちょっとだけ……待って」


スカイラーがささっと指を振ると、ベッドが現れた。


「ん。じゃオイラはこれを」


アビゲイルはベッドの側にテーブルと香りのいいスープを出す。


「ふん、妾も負けぬぞ」


シャルロットが指を振ると鉢植えの植物がベッドのそばに現れた。


「シャル……植物……要らなくない?」


「せめて出すなら花だっぺや~。それにこれ、虫を食べる植物だっぺや」


「虫がきたら安眠の邪魔じゃ。スープも側にあるしのぅ」


「助かる」


オルタンスは大股でベッドまで行くと、少女を大切そうに寝かせた。


「ま、そこまで言うならこっちも置いとくのじゃ」


シャルロットは二人から植物が要らないと言われてむくれたまま、さらに指を振る。大きなクマのぬいぐるみが眠る少女の隣に現れた。


「わ……可愛い……」


「クマちゃんだっぺ。これはいいっぺな」


「オルタンス。ドレスでは休みにくいから着替えさせてやるのじゃ」


シャルロットは出したクマが好評だったので嬉し気に鼻を膨らませつつ、偉そうにオルタンスに指示する。


「あ、それもそうだな」


やっと気づいたという顔のオルタンスがパチンと指を鳴らし、少女に毛布をかけてやる。


「オルタンス……その子……どうしたの?」


落ち着いてから最もな疑問を口にしたのはスカイラーだった。

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