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「ふん。悪役令嬢の周りにはイイ男がたくさんいるのじゃ。選り取り見取りなのじゃ」
「でも……シャル……選んでない……高度な魔法使って……悪役令嬢、助けてる……」
「時を戻す魔法は強い魔法だっぺな。その魔法を使えるなんてさすがシャルだべ。んだべさ~、シャルが幼女になる代償を払ってまで助ける価値のある令嬢だっぺ?」
「ふん。妾は素直に反省できる人間は好きなのじゃ。嵌められた素直な人間にもう一度チャンスを与えただけじゃ」
「まるでおとぎ話の良い魔女だっぺ」
「アビー、うるさいのじゃ」
「シャル……体壊さないか心配……」
「逆行して戻れる時期は選べないようにしておる。そこまで高度な魔法は使っていないのじゃ。それに5年このままの姿と言っても妾達にとって5年など瞬き3回くらいの瞬間なのじゃ。可愛い姿でおるのも楽しいぞ」
シャルロッテは知っている。
粗末な服を着せられ、へたりこんだ足から伝わる牢の冷たさを。
誰にも助けてもらえない。信じていた人たちに裏切られるあの悲しみと絶望をシャルロッテは嫌というほど知っている。
ただ、シャルロッテは残念ながら反省を一瞬しかしなかった。シャルロッテは牢に入れられて二日目からは復讐しか考えていなかった。
シャルロッテの元に良い魔女が現れてくれていたら、シャルロッテだって逆行して悪役王女の名前を返上していたかもしれない。でも、シャルロッテの元に現れた魔女は嬉しそうにシャルロッテを魔女にした。
「ヒッヒッヒ。良い絶望だねぇ。その絶望があればあんたは凄い魔女になれるよ」
絶望が人を魔女にする。
シャルロッテは魔女にされて、自分を嵌めた相手にしっかり復讐した。
復讐を遂げてもずっと消えない思いがある。あの時、逆行する魔法を使えていれば。魔女が逆行の魔法を使ってくれていれば。自分の人生は違ったのではないかと。魔女にならなくて良かったのかもしれないと。
その疑念を晴らすように、シャルロッテは牢に入れられた悪役令嬢に話しかけるのだ。
「やり直したいのかい?」と。
やり直した令嬢の運命はちゃんと覗いている。同じことを繰り返す令嬢もいれば、逆行してまともになる令嬢もいる。
あの時、魔女にされて良かったのかどうか。まだ、シャルロッテの中で答えは出ない。
「んだ。あのおとぎ話の魔女も変だべな。何であんなに協力するっぺな~」
「あのおとぎ話のせいで……魔女に無料で助けてもらえるとか……思われて……ちょっと迷惑……」
「んだんだ。ちゃんと料金は貰わないといけないっぺ。タダほど高いもんはないべ。それに王子とあの少女が結婚できたとこで身分差で困るっぺよ~。結婚してめでたしめでたしなんて綺麗なとこで終わるわけないっぺ~」
シャルロッテが過去を思い出している間に二人は違う話をしていた。
「ふふん。ただのおとぎ話じゃろう。それに設定上、魔女としているだけで実は妖精だったとか、亡くなった実母だとかいろいろ説はあるのじゃ」
「そうだべな~。でも、あれが魔女のイメージになるのも嫌だっぺ」
「……ほんとに……」
「スカイラーは相変わらず、薬を作って引きこもっておるのか?」
シャルロッテは気を取り直してスカイラーの近況を質問することにした。
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