プロローグ
お読みいただきありがとうございます!
頭の中でずっと魔女達の会話がリフレインするので、書いてしまいました。
「もう待てなぃぃぃ! 腹が空いたのじゃ! 妾の腹は限界じゃ! 早くスコーンを! スコーン! スコーンンン!」
氷でできた馬や馬車がくるくる回る回転木馬の中央に置かれた氷のテーブルで、幼女はピンク髪を振り乱して叫ぶ。ついでにテーブルをバンバン叩くのも忘れない。外見に似合わない喋り方の幼女の名はシャルロッテ。フリルやリボンのたくさんついた服を纏っている。
「……え……氷の回転木馬……気に入らなかった……?」
幼女の向かいには鳥の被り物を被ったの女性。年齢不詳でたどたどしい喋り方。ただ、被り物からはみ出た、腰まで届く黒髪は艶々している。黒いローブを見に着けているので一見すると同化して黒髪と分からない。彼女の名はスカイラー。
「回転木馬っちゅうのは素敵だっぺ。でもなぁ、腹が減っちゃあ戦はできんがな。ま、オルタンスが遅れとるんが悪いが。スカイラーは悪くないべ」
本人曰くアマガエル色、つまり緑色のクルクル髪の老婆。非常に訛った喋り方をする彼女の名はアビゲイル。品の良いロングドレスなのに、髪の毛はボサボサと評しても良いほどクルクルだ。
三人は中央のテーブルについていた。ただ、氷の椅子は四つ用意されていて一人空席がある。
「……ありがとう……確かにお腹が……空きました……スコーン、出します……」
スカイラーが手を振るとテーブルにスコーンやジャム、クリーム、紅茶が用意された。
「スカイラー、スコーンを食べるならそなた、その変な被り物を取るのじゃ。見ていると暑苦しいのじゃ。いくら周囲が氷でものぅ」
「え……でも……これがあると……落ち着く……人の目……怖い……」
スカイラーは対人恐怖症のコミュ障である。
「まぁまぁ。スカイラーが落ち着いてるのが良いんだっぺさ。シャル、腹が鳴っちまう前にスコーンを食べるっぺ」
「コミュ障の魔女とはのぅ。それにしてもその被り物はダサいのじゃ。ニワトリの方がクールじゃから今度妾が用意してやろう。いや、鷹もいいかもしれんのぅ」
「ニワトリはいいっぺなぁ。卵は産む。怪しいのが来たらキックで追い払う。ヒヒㇶ、人間よりよっぽど賢くてすんばらしい動物だべ」
「……そんなに……ダサい?……にしても……オルタンス……遅い……珍しい……」
シャルロッテとアビゲイルはどんどんスコーンを食べていく。スカイラーも被り物の嘴部分から器用に食べる。
「オルタンスにも何か理由があるのじゃろう。ゆるりと待とうぞ。アビゲイル、何か恋バナをするのじゃ。最近良き男はおったか?」
「ウヒヒ。そうさねぇ。イイ男がいないなら育てれば良いと思ったんだっぺ。でだなぁ……」
「ふんふん」
今日も魔女たちの恋バナがスタートする。