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第6話(1ヶ月半+6分前)

「はっ!ここは…」

「あれ?ボク何をしようとして…」

 ウィルマと向き合っている?展望台のところで?これから何をしようとしてた?


「そうだっ!あぶない!」

「きゃっ!」

 すぐさまウィルマを地面に押し付けて自分もしゃがみこむ!頭上すれすれを光の矢が通過していく。


「いたた…ルーブル?これは一体??」

「話は後だ!次はどこから矢が飛んでくる…」


 念動力にて反撃したいトコだが難しい。辺りは夕方時分、こちらからは矢を撃ってくるセレは発見できないがあちらは問題無し。光属性のスキルで視力を強化できるからな。


 視線を変えた瞬間、左方向から3つの光が見えた。まずい、見えたという事はもうすでに!!


「ルーブル、動かないで!リパルジョンっ!!!」


 次の瞬間、俺のそばで光の矢が空中に止まっている姿を見た。勢いの無くなった矢は自然に落ちる。何だ?まわりの空気が歪んで見える??


「ウィルマ、これは一体?バリケィドじゃないようだが」

「バレちゃったな、念属性の使い手は君だけじゃないってコトさ」

 ウィルマが俺と同じ念属性?確か土属性でバリケィドも実際に土を使ったものだったぞ??


 その時、一人の男が駆け寄ってきた。


「君達、大丈夫か?さっき矢で狙われなかったかい?」

 装備からするとクトファの町の警備兵か。落ちていた4本の矢を回収している。


「ええ、最初の1発とその後の3発で4回撃たれましたよ」

「ふむ、数はあっているな…ところで彼女は君達のパーティーなのかい?弓の練習で付き合ってもらったとか言ってるのだが」

 そういって指をさした先にはセレが町の警備兵2人に捕まっている姿が見えた。


「だから、弓の練習してただけで……この辺にパーティー仲間が持ってる的を射抜く練習を…」

「こんな町中でやるとは正気じゃないな、本当の事を言え!」

「あ、ルーブル!助けてよ!!私警備兵に言いがかりつけられて……ほら、未来のお嫁さんが困ってるじゃない!」


 俺達を狙っといて自分が助かるためなら平気で頼ってくる身勝手さ……今になってコイツの本性が分かるとは。初回では信じていたのに裏切られ、タイムスリップの度にエルカートとの関係を見せつけられた今となっては、セレへの気持ちが冷めたというか。


「ま、まぁそれは『いいえ、こんな人仲間じゃありません、さっさと留置所にぶち込んで下さい』」

 俺の発言をウィルマが遮る。彼女の目を見ると「何も言わないで」と言っている。


「そ、そんなっ!どうしてウソつくのよ!!ルーブル、私を助けなさいよぉ!幼馴染でしょう!!」

「さっさと連れていってくれ、あっと君たちも事情聴取させてもらうぞ?」

「あ、はい…」

 俺達は警備兵達と詰所に向かう。



◇◇◇



「へぇ~、ここがルーブルの借りている部屋かぁ。本がいっぱいだぁ!」

「あんまり騒ぐなよ?家主がうるさいからな?」


 詰所での事情聴取を終えた後、俺の借りている宿屋に帰ってきた。元々一人部屋なので2人入るともう限界に近い。2人並んでベッドの上に座る。


「あの、ボクから聞いていいかな?ルーブルのお蔭で飛んできた矢を避けられたけど……何か変なんだ、一回あの矢が背中を貫いて力が無くなって死んでいく感覚があるっていうか…」

「ああ、信じられない事だが実はこのブレスレットにはな……」


 俺はウィルマにブレスレットとビーストハート達との因縁について語る。そしてタイムスリップの事も。


「う~ん、信じられないけど…自分の身に起こってるんだから信じるしかないよね?」

「それは同意だ。けどいつもはもっと時間を遡っているんだが…あの一瞬を考えると数分程度か?」


 何より今回は俺がケガしていなかった状態で発動できたという事だ。むしろヤバかったのはウィルマの方だ。そういえば…


「今度は俺の番だ、ウィルマは俺と同じ念属性なのか?」

「うん…騙して悪かったね、でもルーブルのとは違ってボクのは反発力、何もない所にバリヤーを張る感じかな?それを地面に押し付けて使う事で土壁のバリケィドができるってコトさ」


 なるほど、同じ念属性でも力の使い方が違うって事か。更に他の物質を操作して属性を偽るなんてかなりの高等技術だ。しかしどうして自分の属性を隠しているんだ?


「ルーブルの住んでた所は知らないけどボクの生まれた所で念属性は『悪魔の力』といわれて忌嫌われているんだ、属性持ちだと村八分にされるくらいにね」

「なんだと?ウィルマのはともかく攻撃や防御に使えないこんな力がか?」


「ホントにそうだよね?他のみんなと対して変わらない力なのに…だから土を使う事で自分は土属性と偽ってきたんだ。そうしてボクは冒険者として故郷をでる事になった」

「…………」

「冒険者になると必要な事以外は黙秘の権利があるから、ボクの念属性の事もバレずにすんだ。もちろんリィロやクローデュ・シル達にも隠している。ルーブルは荷物持ちだから属性を聞かれる事は少ないと思うけど、何か違う属性を名乗っておいた方がいいよ?」


 知らなかった、念属性というだけで迫害を受ける所がある事に。ウチの故郷は情報が未発達だったから念属性イコールハズレ属性扱いだったと考えるべきか。


「いつの日か……ボクが荷物をぶちまけた時、ルーブルが持ち物を浮かせて拾ってくれたよね?あの時から親近感が湧いていたっていうか……やっぱりボク達は一緒なんだよね?」

「ああ…そういうことか、同じ属性同士……ウィルマが死にかけてた時握ってきたのは左手…つまり2人の念属性の鬼力でブレスレットは発動した事になるのか」


 俺一人の時は初回から3時間前・3日前・3週間前・3ヵ月前と遡る時間が増大していたが、今回は2人で発動してたった6分の巻き戻しか。良く分からん計算だ。


「へ~ぇそれじゃあ2人の合体技ってコトになるよね?ねぇこれからボク達で試してみない?」

「それは止めてくれ、まだ使い方も分かってないし成功してもいつの時間に巻き戻されるか分からんから危険だ」


 考えてみれば自分以外の念属性の人間と手をつないだりした事は一度もない、それ以前に同じ属性の他人に会った事すら無いからな。左手のブレスレットにどんな力の干渉が起こるのかはさっぱり分からん。


「…そっかぁ、ボク達が出会う以前にタイムスリップするかもだしね」

「さてもういい時間だ……そろそろ休まないとな、ウィルマの部屋まで送ってくよ」


 それを聞いてからウィルマは立ち上がってドアの・・・鍵を閉めた?


「……ねぇルーブル、あんな事があった後だけど……ううん、あんな事があっただけに今日はルーブルと一緒したいんだ………いいよね?」

 そう言ってにじり寄ってくるウィルマ。ベッドの上だし逃げられない。


「ホントに俺なんかでいいのか?ウィルマはパーティーリーダーで俺は荷物持ちだぞ?」

「そんなの関係ないよ!初めて会った同じ属性の人だしもうがまんできないよボ」


           バンっっっっ!!


 鍵をかけてたのにいきなりドアがこじ開けられる!無理矢理入ってきたのは


「おぅ大将!警備兵から敵に襲われたって聞いたけど大丈夫なのかぁ?!」

「え?クローデュ??」

 クローデュの後ろにはリィロとシルの2人がいる。特にリィロの顔は真っ赤になっている。


「な………なんでウィルマさんと一緒に……あわわ」

「これはそのぅ、おたのしみだったワケですねぇ」

「あははは、こりゃまいった!あたしらお邪魔虫かぁ!今日は撤退するぜ!!」


 そういってクローデュ達は足早に帰っていった、おいおいどうするんだよこのドア。鍵がぶっ壊れてるじゃないか。


「はああああ、なんか気分が冷めちゃったよね?今日はお預けだなぁ、残念!」

「まぁアイツらも心配してくれてたってコトだ、それとも俺達の関係は今日で終わりか?」

「そんな事ない!ボクとルーブルはもう離れられない存在なんだ!それじゃボクも帰るよ!」


 その後、家主に散々叱られてドアの修理代を請求されたことは言うまでもない。


◇◇◇


 二週間後。


 セレは町中での武器とスキルの無断使用および殺人未遂により逮捕された。罰金を支払わされた上で武器と冒険者カードを没収された。治安当局にて身柄を1週間拘留の後は町外退去になる予定だ。

 冒険者資格も剥奪となって退去させられる身では、武器を買い直すどころか冒険者として復活する事も不可能。ひとまず安心できるか。


 同郷で幼馴染の彼女がこのような状況になった事には思うところがないワケではないが、願わくは今後一切関わりたくないものだ。

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