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第4話(3ヶ月前)

 ゴツイおっさんと握手をする俺。


「おぅお疲れサン、お蔭様で手早く終われたぞ。また面倒なクエストあったら助けてくれや!」

「面倒なのはお断りだ、軽いヤツにしてくれ」

「ははは、それじゃ取り分少ねぇぞ?今度は正式に『ハィウォーン』に入れてやるからな!」


 ギルド前にて清算を終えた俺は屋台で晩メシと2日分の食料を買って宿屋に帰る。


◇◇◇


「ふぅ、それにしても結構上手くいくモンだな。」


 四回目のタイムスリップに成功した俺がいたのは3ヶ月前のクトファの町の宿屋の一室だった。


 状況を理解した俺は3週目のサンドワーム討伐の経験から有り金をはたいて戦術関係の本を手に入れ読みまくる。


 2週間ほどかかって兵法の基礎的な陣形や戦術を覚えた俺は、以後他のパーティーに臨時参加して荷物持ちから戦闘指示まで幅ひろく活躍する事ができた。そうしてすでに1ヶ月経っている。


 それとやり直しの経験から今までハズレ属性たる念動力のスキルを鍛えることにした。依然扱える質量には制限があるもののお陰で力の射程範囲も半径5mまでに上がった。戦闘中の物の受け渡しが向上したのは念動力によるところが大きい。



 今までと違いやけに自由に動いているようだがそれも当然、三か月前の俺は未だフリー状態だ。ビーストハートのセレと再会するのは予定では今日から1日後。それもさっき別れたパーティー『ハィウォーン』を追い出された時だった。


 あの時(初回)の俺は荷物持ちとして未熟だったために戦闘中のやり取りでのミスが多かった。クエスト達成には1日余計にかかり、先ほどのハィウォーンのリーダーには怒鳴られまくって意気消沈していた。


 その後食堂で晩メシを食べているとセレと再会し、行き場のなかった俺はビーストハートに加入することになった。最初はセレも幼馴染のよしみで雇ってくれたものの、俺のミスもあってだんだんエルカートに心変わりしていったのは周知の事実だ。



 つまり1日後の食堂にさえ出かけなければビーストハートに加入する事はない!晩メシをテイクアウトするのもそれが理由だ。小事が万事、これでヤツラに殺される運命を避ける事ができる!!


 幸いにもさっきもらった報酬で3日間は何もせずに生活できそうだ。明日は絶対に家から出ないようにしよう!


 それにしてもタイムスリップの度についてくるこのブレスレット……時が戻るのはコイツの性能とみて間違いないのだが、試しに俺が過去に戻りたいと思って鬼力をこめても反応なし。4回の経験から考えると死ぬ寸前の境地に立たないと発動しないようだ。助けられているとは言え何とも使えないアイテムだ。


………22:00

……23:00

…0:00


 よし、予定の時間が終了!何事もなく全てが終わった解放感に包まれる。今日からは安心して眠れるぞ。



◇◇◇



 翌日の昼前、ギルドに行きクエスト掲示板を見る。どれもこれも多人数参加の条件でソロクエストがない。さすがに油断して寝過ごしてソロ依頼取られてしまったか。


「うーん5人参加かぁ、ウチは4人だからあと一人……あ!そこの君、クエスト探してるのかい?」

 声を掛けてきたのはヤサ兄ちゃ…じゃなくてウィルマって女だったか。彼女もクエスト探しにきてたか。


「ああ、だがソロで出来るクエストはもうないから今日は出直すつもりだ」

「そっかー、だったらボク達と共同で5人参加のクエスト受けない?ウチは4人だから一人足りないんだよねー」

「俺は荷物持ちだ、期待されるような戦闘力は持ってないぞ?」

「それなら問題ないよ、ウチはみんな強い娘ばっかだから……ただ細かい事とか連携の指示出したりするのが苦手なんだ、それに荷物持ちの人がいれば戦闘に集中できるし……お願い出来ないかな?」


 これは何かの因果か?やり直しの時から会っている女からまさかパーティー参加を持ちかけられるなんて……ま、俺の事を覚えているワケもないしビーストハートとの因縁は切れたし気にする必要はないか。


「OKだ、便乗させてもらうよ……確か『ライオネス』だったかな?俺はルーブル、宜しく頼む」

「へー!ボク達まだDランクパーティーなのに名前を知ってくれてるんだねー!ボク、ウィルマっての!何か君とは長い付き合いができそうだなー」


 互いに握手を交わす。手の柔らかい感触に加えて女って分かったら正直照れ臭くなってきたな。



           「ちょっと待ちなさいよ!!」



 突然女の怒鳴り声が飛んできた……この声はまさか


「ルーブル、やっと見つけた!ほら、ブレベス村で幼馴染だったセレよ!」

「せ、セレ…?」


 何てこった!昨日食堂に行かなかったのにギルドでセレに会ってしまうとは!


「あれ?この人ルーブルの知り合い??」

「アンタ、気安くルーブルの名前を呼ばないで!私達が隣町のザルクでクエストやってる間に随分有名になってるのよ!戦術家ポーター・ルーブルって!」


 戦術家ポーター?いつの間にそんな2つ名がついた??いやそれよりも俺が戦術を身につけて行動した事で本来の歴史と変わっちまってる??


「それでね、ウチのビーストハートも戦闘じゃイケてるパーティーなんだけど雑ょぅ……皆をサポートしてくれる人が必要なの!ルーブルにピッタリの仕事だから絶対ウチに来てよね?こんな女はほっといて!」


 セレの話を聞いて身の毛がよだつ、またビーストハートに入って殺される運命が待っているのか?自分のために良かれと行動した結果が悪循環になっているとは。


 しかし俺を助けるようにウィルマがセレに突っかかる。


「あ…何だよそれ!ルーブルは先にボクたちと共同クエストに行く約束したんだよ!そんなのズルいじゃないか!」

「お生憎様、ウチはBランクのビーストハートよ!それに私達は幼馴染なの。Dランクパーティーで初対面のアンタとは格が違うんだから!ね、ルーブル?」


 くそぅ、正直タイムスリップしてもう一度やり直したいところだが今は瀕死の重傷でもないからブレスレットは発動しない。このまま乗り切るしかない!


「雇われ者ってのは約束とかの信用が第一なんだ……さっそくだがパーティーのトコに連れてってくれ、ウィルマ」

「あ、うん!早く行こう!」


 俺の返事に気を良くしたウィルマは受付にてクエストの受注をする。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよルーブル!幼馴染の私をほっといてこんな女のドコがいいのよ!こっちもリーダー達が待ってるのに!」

「荷物持ちなら他にもいるだろう?またの機会に考えさせてくれ」


 そういって手続きを終わらせたウィルマの手を引いて足早にギルドから出ていく。セレが何か喚き立てているがもうあんなパーティーはごめんだ。




 大通りを歩く俺達、不意にウィルマが訴える。


「ま、待ってよ!いい加減手を放してくれないかな?君なら問題ないけどちょっと恥ずかしいよ…」

「え?ああっ、すまない!」


 女の手を思いっきり握って引っ張り回してた。いくらビーストハートから逃れられるためとは言え悪い事しちまったな。


「あの、ボクは嬉しかったけどホントに良かったの?幼馴染さんのパーティーに入らなくて…」

「ああ気にしないでくれ、というかこっちから是非お願いしますってトコだ!」


 今ここでライオネスから追い出されたらセレが追ってくるに違いない、頼み込むのも必死だ。


「そ、そんなにジっと見つめて言われると困るよ……ヤだなぁもう、こちらこそお願いします!」


 気がつくと俺とウィルマはニヤニヤしている3人の女冒険者に取り囲まれていた。


「おぅおぅ、見せつけちゃってくれるよなぁ!」

「お2人とも仲がいいんですね、もしかして幼馴染ですか?」

「クエストもらってくるのにこいびともらってきたのですぅ」


「あ、みんなちょうどよかった!5人クエストの契約取ってきたよー!ルーブル、この娘達がウチのライオネスのメンバーだよ!」

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