【絶品?】実家からの仕送りに見たこともない謎の食べ物が混じっていた件【ゲテモノ?】
初めましての方は初めまして、お久しぶりの皆様はお久しぶりです。悠聡です。
気が付けば小説家になろうへの投稿もすっかり滞ってしまいまして、もし「あいつどうしたんだろう?」と気になられた方がいらっしゃいましたら、ご心配おかけしましたことお詫び申し上げます。
私事ですが、実はこの春に人事異動がありました。仕事柄異動が多く、全国転勤なんぼのもんじゃーいと覚悟は既に決めておりますが、新しい生活リズムに身体馴らしていくのはなかなか大変です。決してウマ娘ばっかりやってて、小説ろくに書いていなかったわけではありませんよ。うまぴょい、うまぴょい!
話は変わりますが先日、実家から仕送りを受け取りました。
拙作をお読みになられたことのある方はお分かりかと思いますが、私の実家は滋賀県で、これまでも滋賀県を舞台とした小説をいくつか投稿しております。きっと故郷の味に飢えているだろうと息子を思いやってくれたのでしょう、送られてきた段ボールの中には滋賀県ならではの名産品がこれでもかと詰め込まれていました。
まずは滋賀名産のお米「みずかがみ」のパックご飯に、レトルトの近江牛カレー。あとはチンするだけで一食済ませられるので非常にありがたいですね。
なんと関西人には欠かせない、ケンミンの焼きビーフンまで!
これ、焼きそばみたいにして食べるとめちゃくちゃ美味しいんですよ。関東では滅多に売っていないので、ゆっくり味わって食べたいです。
他にもこんなにたくさん!
この寿浜っていうの、私めっちゃ好きなんです。きな粉を固めて作ったお菓子なのですが、単に甘いだけではない雑味がクセになる素朴さを醸しだしており、砂糖菓子などの洗練された風味とはこれまた違った味わいがあります。昆布も料理で使えそうですね。滋賀県北部は日本海にも近いので、昆布文化が根付いています。
……ん?
何や、これ?
一見すると樽のような容れ物。あられみたいなお菓子かと思いましたが、手に載せてみるとずっしり重く、中身もぎっちり詰まっているようです。30年と少々生きていますが、こんなブツ初めて目にしました。
不思議な贈り物が気になりますが、とりあえず実家にお電話です。親愛なるママ上に、感謝の声を聞かせるついでに疑問をぶつけてみましょう。
「あ、お母ちゃん? 荷物おおきにな。ほんで、あの樽みたいなん何?」
「ああ、それ菊水飴やで。長浜行ったときに買うてん。あんた甘いの好きやろ?」
菊水飴。滋賀県で20年以上暮らした私ですが、初めて聞いた単語でした。どうやら余呉にある老舗で売っているそうで、その正体は水飴とのこと。
以前、余呉を舞台にして『スローライフに憧れて田舎の古民家を購入したら、JKの地縛霊がセットで憑いてきたきたもんで困惑している』を書き上げた私ですが、この菊水飴については初耳でした。現地にも赴いて取材したつもりでいましたが、まさかこんなところを見落としていたとは……大いに反省すべきですね。
しかしこれまた珍しいモノを送ってきたもんです。
こちとら平成生まれ、水飴と聞いて思い浮かべるのは『ちびまる子ちゃん』のエピソードで紙芝居屋のおっちゃんが子供たちに「紙芝居見たいなら買ってねー」と売りさばいている姿しかありません。加工食品の材料として広く使われていることは知っていますが、今なお昔ながらの食べ方を楽しんでいる方はかなりの少数派かと思います。
私自身、水飴に関する思い出といえば小学生の頃に一度だけ、無色透明のものを口にしたくらいしかありません。たまたまスーパーで目に付いたのを母が「せっかくやし」と買い与えてくれたもので、ほとんど物の試しといった具合でした。
滋賀県民100万人といえど、息子の仕送りに水飴を送りつけてくるのはうちのおかんくらいです。地元民ですらこれなのですから、関東での知名度は皆無に等しいでしょう。
ここでピキーンと閃くのが日々ネタを探し求めるワナビのサガ。なんと美味しいネタが向こうから転がり込んできたことでしょう、これはメジロマックイーンの育成にかまけている場合ではありません。
というわけで
レッツ食レポ!
以前ふなずし味のポテチ、さらにはポテチにふなずしをのっけて食べた者として、200万のなろうユーザーに向けてこの味をリポートしなくてはという使命感に駆られます。
内容量は250グラム。一般的に飴ちゃん一粒でだいたい4グラムだそうなので、これひとつで飴玉60粒以上、パインアメでいうと2袋分ちょいの重さですね。ちなみに価格は720円とのこと。
紐を切って包装をほどくと……
曲げわっぱのようなプラスチック製の容器が現れました。と、ここで説明書きがはさまっていたので読んでみましょう。
起源は不明ですが、菊水飴は350年前の江戸時代初期には北国街道名物として親しまれていましたそうです。特に福井藩主松平光通は参勤交代の最中この飴を食べて腹痛を治したとのことで、後に福井藩の御用飴屋として名を馳せていたとのこと。明治期以降も国内外の様々なコンテストで表彰されており、伝統と格式ある由緒正しいお菓子なんですね。
そんな滋賀の誇る逸品だというのに、何も知らなかったなんて私はなんてアホなのでしょう。サイレンススズカ目当てで50連ガチャ回して爆死している暇あれば、故郷のことをもっとしっかり調べておくべきでした。
では期待も高まったところで、いよいよ実食です。さあ、御開帳といきましょう。
意気揚々と手を伸ばします。しかしこの蓋、やけに固くてなかなか外れません。
ええい、ジャムのビンかよ。下手したら中身がドバーッと――スポッ!
「……え!?」
いやあ驚きました。北海道名物バター飴かと錯覚しましたよ。
水飴と聞いていたのでてっきり無色透明なビジュアルをイメージしていましたが、なんと白一色。しかも細かく泡立っています。しかも容器いっぱいダイレクトに注がれているという、あまりにもそのまんまな見た目。これにはある種の男気すら感じてしまいます。
見たところ粘性もかなり強そうです。やけに蓋が外しにくかったのは、容器と蓋の間で水飴がカチカチに固まっていたからなのですね。
そしてこちらも予想外でしたが、かなり匂いも独特です。乳製品を思い起こさせる、タンパク質チックな香りがぶわっと部屋に立ちこめます。詳しくはわかりませんが、原材料の麦芽糖から発せられているのでしょうか?
附属品で短い棒も入っていました。なるほど、これで掬い上げて食べろってことですね。
では準備も整いました。いざ、いただきまーす!
まずは入刀……て
かってー!
多少の粘性は承知の上でしたが、これは想像以上。ガッチガチに固まったハチミツ、いや、それを超えています。でんじろう先生の実験でもおなじみ水溶き片栗粉かと思いましたぞ。
そして強引に引っこ抜くと、どろーんと飴が垂れながら持ち上がります。これ、安価な割り箸とかでは粘性に負けて折れてしまうのではないでしょうか?
スプーンを使うとこの通り。完全にトルコアイスです。
さてさて、この思った以上のねばねば具合に四苦八苦しながらも、なんとかきれいに持ち上げます。畳の上にでもこぼそうものなら絶対に掃除大変ですからね。
こうやってこねこね混ぜると良いそうです。本来ドロドロの水飴はこうやって空気を含ませると固く食べやすくなるのですが、既にかなり固い菊水飴に如何ほどの効果があるのでしょうか?
ではいよいよ、パクッ!
む、こ、これは……
オ・イ・シ・イ!
お母ちゃん、生んでくれてありがとう!
気が付けば次、また次とスプーンを容器に突っ込んでいました。
独特な匂いに苦手意識を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、味そのものに嫌味はありません。またどろっとした食感のおかげでゆっくりと舌に絡みついて、甘味も数倍に濃縮されているように感じます。
私は自他ともに認める甘党ですが、欧米のお菓子によくある甘味料をぶちまけたような味付けはあまり好みではありません。対してこの菊水飴も濃厚な甘さではあるのですが、人工的な味ではなく自然の成分をそのまま抽出したような、舌触りの良い素朴な味わいです。
市販の白砂糖が雑味を徹底的に抜いた吟醸酒だとしたら、こちらは麹の混じった濁り酒のようなものでしょうか。なぜだか遠い昔、田舎のお爺ちゃんの家で出されて食べたことがあるような懐かしさを覚えます。
気のせいか、前に似たような味を経験したことがあるような。当然、菊水飴を食べるのは初めてなのですが、不思議なものですね。
調べてみると、この菊水飴は砂糖や添加物を一切使用していないとのこと。そのため開封後は早めに食べる必要がありますが、甘いのがお好きな皆さんならひょいパクッと完食してしまうでしょう。
……というか無意識の内にスプーンと箸が伸びて止まりません。いくら甘党でもさすがにこれはヤバい、虫歯まっしぐらコースです。
一休さんの和尚さんが水飴を独り占めにしていた気持ちも今になって分かります。ここは強い意志でぐっと堪えて、続きは明日と手元から離しておきましょう。
【結論】
見た目には驚かされるかもしれませんが、素朴な味で食べやすいです。特に濃厚な甘さを追い求める甘党には是非!
以上、菊水飴の食レポを終わらせていただきます。今回は地元の隠れた名産品ということで、ふなずしポテチのようなネタ度合は低めですね。これなら木ノ本のサラダパンや、朽木の山の中にポツンと現れる超高級鯖寿司屋さんの方がネタになりそうです。
しかしこれ、やっぱりどこかで見たこと……いや、食べたことある味なんだよだよなぁ。うーん、いつだったかな、うーん……
あ……
そうだ。
思いだした!
この菊水飴に似た味、覚えがあります!
あれは大学生の頃、トルコに旅行して現地で食べたロクムというお菓子にそっくりです!
トルコ版ゆべしとでも言いましょうか、ナッツ類を砂糖とでんぷんで固めた飴状の生地を正方形にカットしたお菓子を現地ではロクムと呼んでいます。
私はそのロクムが気に入り、お土産に買いこんで意気揚々と帰国を果たしました。が、しかし周囲の反応はというと……
「おい、あれはなんだ!? ゲロの味じゃないか!」
「一口食べて吐き出した……」
「学科で一番アホなヤツが美味い美味いって食ってたぞ」
とまあこのように散々なもので、盛大なブーイングを受けてしまいました。味の好みは人それぞれというのは当然のことですが、さすがにここまで不評だとは思いもしなかったです。特に学科で一番アホなヤツと私の味覚が同等だと判明したのは、異世界転生したいくらいにショックでしたね。
以上、菊水飴の甘さに、ついほろ苦い過去を思い出してしまった悠聡でした。
それでは皆様、コロナ禍で大変な状況かと思いますが、どうかお身体にお気をつけてお過ごしください。
私も実家から送られてきた地元の名産品を食べて故郷を思い出しながら、今日も今日とてナイスネイチャにG1レースで1着を取らせるべく励んでいく所存です。うまだっち!