2 俺のスキルはバランス崩壊の糞チートスキルでした。
···うん。
どうしよっか。
俺の頭を悩ませているのは今目の前にある
自分の頭のおかしい奴が作ったようなステータスだった。
その中でも最早理解不能になるほどのチートスキル【生物創造】。
スキル【生物創造】
素材に自らの血を一滴垂らし、
魔力を込めることで命を造り出せる。
命は素材の質や量、種類によって持つ能力が変わり、
更に魔力を大量に込めることにより強力な命を造り出せる。
···は?ってなるよね。うん。
命って造り出せるものだったっけ?ってなる。
「まぁ···物は試し···か。」
俺としてもそれで自分の安全が確保できるくらい
強い命を造り出せるなら万々歳だ。
この世界の知識があるなら更にいい。
だからこそ俺は兎を虐殺することに決めた。
え??ってなると思うけど、
ここら辺歩いてたら兎しか居なかった。
まだ昼だからかもしれないけれど
夜が危険なら尚更早く素材を見つけて
命を造り出さなければいけない。
「クッ···許せ兎!」
俺は心を決めて太い木の棒で兎を串刺しにする。
血が飛び散るのは随分と心が痛むがこちらが生き残るためだ。
すまない兎。
ドスドスドス!と木の棒で何度も刺す。
するとボンと音をたてて兎が消え、
そこにはポーションらしきものだけが残った。
「···RPGかな?」
さっき飛び散っていた血さえも消えている。
RPGかよ!!
そう心の中で叫んでしまった俺は悪くない。悪くないもん。
だが死体が残らないのならば俺としても心が軽くなる。
ありがとうこの世界。俺の精神的ストレスが改善された。
「これなら素材になるか?」
俺は早速自分の安全のため命を造り出す事にした。
きっとこのポーションはレアドロップだろう。
それなら素材になる筈だ。
俺はポーションを地面に置き、
そこに枝で指先を切って出した血を一滴垂らした。
ヴンッとポーションを中心に魔方陣が展開して
眩しい光に一瞬包まれた。
目を開けるとそこにはポーションと魔法陣は消え、
その代わりに黄金の長い髪と深い海のような青色の瞳をした
八歳くらいの小さくてとても綺麗な女の子が居た。
···これが、俺のスキル?
本当に命を造り出してしまうのかと思った矢先、
俺の体が傾いた。
ガクンと膝が崩れ立っていられなくなった。
咄嗟に女の子に支えられなんなんだと思いながら
ステータスを開いた。
「ステータス」
レベル 2
名前 ソウ・ヤカマ
年齢 5
種族 人間
HP 6/6
MP 1/999999
魔法 なし
スキル 生物創造
···嘘だろ。999999もあったMPが1まで減っている。
思いっきり魔力を込めてしまったからか。
じゃあこれは魔力の使いすぎか?
「マスター大丈夫!?」
「あ、あぁ···君を造り出すときに魔力を使いすぎたみたいだ。」
「そんな···私じゃ魔力を回復させられない···」
マスターは俺のことだろう。
しかしここまで魔力を使うとは···
「···申し訳ないが降ろしてくれないか?
この体勢は少しマズイ。」
「あ!ご、ごめんなさいマスター!」
いや大丈夫なのだが。
俺は支えられていた所から優しく地面の上に降ろされた。
良かった良かった。あのままだと俺の心が死ぬからな。
精神年齢20越えが小さな女の子に支えられているのは
情けなさすぎる。
まだぐわんぐわんと揺れる頭を必死に回しながら俺は質問する。
「君の能力はなんなんだ?」
「はい!私は···ステータスを見てもらった方が良さそうです。」
ステータスと女の子が唱えると俺の目の前にステータスが表示された。
俺が造り出した命のステータスは見れるのだろうか?
レベル ∞
名前 なし
年齢 なし
種族 人間
HP ∞
MP ∞
魔法 エクストラヒール
スキル 再生
···まさかの年齢という概念がなかった。
それにHPとMP、レベルが∞!?あり得ない···
俺は魔法のエクストラヒールという文字に触れた。
《魔法【エクストラヒール】
どんな怪我さえも治すことが出来る。
エクストラヒールを極めた名前 なしは
疲労さえも治すことが出来る。
しかし病気は治すことが出来ない。》
···完全に頭のおかしい回復役だ。
なんだよ疲労さえも治すことが出来るって。
ここまでになると病気が治せないのがおかしく見えてくるな。
俺は今度はスキル【再生】に触れた。
《スキル【再生】
怪我、部位欠損、建物。
あらゆるものを再生させることが出来る。
しかし病気は再生させて治すことが出来ない。》
「嘘だろ···」
思わず俺は呟いた。
なんだこれは。完全にチートだ。
そしてそれを造り出してしまう俺のスキルよ。
チート過ぎやしないかね。
だけどバランスを取るために
病気は絶対治せないようになってるってとこか?
それと攻撃系がない。
だがこれは確かに俺の安全が約束できるな。
「凄いな。まさかここまでなんて···」
「あの、何か粗相でも···?」
「いや、君の能力があまりにも凄すぎて言葉を失ってしまったんだ。」
「そうですか···」
なんか声は淡々としてるのに女の子から花が飛んでるように見えるぞ。
そんなに嬉しいのか?
「あぁ、それと名前もつけないとな。」
いつまでも名無しでは困るだろう。
「!!本当ですか!?」
「お、おぉ···」
「嬉しいです!」
「···そうか?じゃあ君の名はミカだ。」
「ミカ···ミカ、ミカ、ミカ···」
女の子、ミカは確かめるように名前を何度も呟くと
世界で一番可愛らしい笑顔を見せた。
「ありがとうございますマスター!」
「いや、喜んでくれたなら良かった。」
ホントにな。ネーミングセンスは残念ながらないからな。
これで拒否られたら泣いてたぞ。
まぁそんなこんなで俺の一人目の仲間は
完全チートヒーラー少女、ミカとなった。
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