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4/6

バトルに備えて小説キャラを鍛えよう


 このゲーム「小キャラバトル説」を楽しむ方法は……分かっているさ。簡単だ。小説を育てれば、その分キャラが強くなるのだ――。


 そのためにどうするか……。

 まずは小説の人気を上げなくては、キャラが強くならない。


 タイトルが肝心だ。

 人気作家ならまだしも、底辺作家が読者を捕らえるには、インパクトが必要になってくる。長すぎるのは駄目だと思うが、意味が分からないのも読もうとは思われないだろう。

 次にあらすじだ。あらすじでボロを出してはいけない……。「読みたい」と思わせるようなあらすじを書いておかなければならない。

 誤字脱字もチェックしなくてはいけない。内容が良ければ気にならないだろう……なんて甘えにしかならない。誤字を見た時点で呆れてしまう読者もいるだろう。……当然だ。もし、書店に並ぶ本を買って読み、誤字脱字ばかりなら呆れてしまう。無料投稿サイトの小説だからといって、クオリティーが低ければ、読者は誰も読んでくれない――。


 そして何よりも肝心な……内容を濃い物にしなくてはいけない――。

 誰も考えたことがない新しい発想や、今までにない斬新な発想が必要なんだ――。


 我が子を育てるように、小説を育て、鍛え、強くしなくてはいけない――。


 ゲームだからといって、チートしてはいけない……。PVの水増しや、キャラクターのコピー。多重登録しての感想、レビューの書き込みは……運営にて消去される可能性大だ!

 自分のキャラ強化目当てに、他のユーザーに「相互でポイント評価をしよう」と持ち掛けるのも反則だ。


 運営は……ズバリ、ラスボス『書籍化』よりも強いのかもしれない――。


 たくさん小説投稿サイトがあるが、ルール違反をしても他へ移れば大丈夫……なんてことにはならないハズだ。違反をしたユーザーの情報は、サイトを変えて名前を変えたとしても、口コミで伝わる――。


 読者からのチェックも厳しくなってしまう――。



 小説キャラにポイントを再度振り分け、次に『○○ネット小説大賞バトル』に参加した。

 文字数制限が十万文字以上なので、俺の小説キャラは二体だけの参加となる。制限が増えるほど参加する小説キャラも少ないようだ。


 それでも、千七百体もの小説キャラがバトルに参戦している。しかも、全員体力は十万以上か……。

 苦しい戦いになるのは見えている。だが、戦いに参加しなくては、勝利することなどありえない。


 戦わずして一次選考通過は、ありえないのだ――!


 なんとか逃げ切れれば勝てるかもしれない。マップの端の方に隠れていれば、見つからずに済むかもしれない――。


 戦わずして勝利する作戦だ! 作戦名「無双算段(むそうさんだん)!」


 ――そして戦いの火蓋が切られた! と同時に、画面が真っ赤になって、音がする。


 ピロリロリ……。


 俺の小説キャラは消えて、一瞬でゲームが終わった。……意味わかんねーぞ。クソゲーに付きものの、バグか?


 いったい何が起こったのかを、冷静に考えた……。



 闘技場に現れた俺のキャラ二体の近くに、最終選考まで残った経験がある小説キャラがいたのだ――。

 ランキングトップ争いをしている、書籍化一歩前の超有名作が表示されている――!


「いでよ、狂乱竜クレージードラゴ―ン! 怒り狂った炎地獄で全ての奴らを極楽へ送ってやるのだ!

 ――地獄と極楽の往復切符回数券、十枚つづりを手渡してやるのだ~!」


「「狂ってる~!」」


 桁違いの力を持つ召喚士キャラが、空を覆いつくすような大きな翼竜を召喚すると――!

「オオおおうぇエエえええー!」

 口から嘔吐するかのように、燃え盛る炎とドロドロに溶けた溶岩を吐き出し、闘技場全てを焼き尽くす――!

「「あんぎゃー」」

「「ひえー」」

 逃げ場のない炎に次々と小説キャラが倒れ、俺の小説キャラは登場と同時に一瞬で消え去ってしまった。

 まさに瞬殺……。やられるまで一秒もかからなかった。


 ……あきれたことに、召喚士もその炎でやられて消え去った……。


 ピロリロリ……。

「――くっそー、誰だこんなクソゲー作ったのは! ――こんなもん、勝ち目ねーだろーが!」

 掴んだマウスを投げかけて、グッと下唇を噛んで我慢した……。


 勝ち目がない……? ――ああ、そんなことは最初っから分かっていたさ。だが、せめて逃げる時間ぐらいは欲しかったぞ!

 ゲームにはあるだろ? 最初の数秒間だけ無敵とか、敵がいない場所からスタートさせてくれるって優遇処置が!


 ゲームには……か……。


 ……ないのかもな。底辺小説家に優遇処置なんて……。


 そりゃあそうさ。小説大賞に初参加する小説を優遇なんかしていたら、これまで応募し続けてきた人が怒り狂うだろう。

 ――今までの努力はどうなるのか! と狂乱の炎を吐き出すかもしれない。

 手加減、優遇、ズル……、そういった見えない力がないリアルな世界へと俺は小説を送り出しているのだ。

 

 自分の小説の力だけが頼りであり、全てなんだ……。

「小キャラバトル説」の世界でも、実際の「小説家になるう」の世界でも――。



 残されたバトルは一つ。

 日本最大級のネット小説バトル――『なるうコン小説大賞バトル』


 今参加しては駄目だ。必ず先程と同じように瞬殺されてしまう……。小説キャラを鍛え上げ、足りない小説キャラを増やし、バランスの取れたパーティーの再編成をしなくてはならない。


 小説に読者の目を引き付ける挿絵を入れよう――。少し露出度が高い方が男子受けはいいハズだ。

 活動報告を使って、もっと自分の小説をアピールしよう――。共に小説家として戦う戦友を増やすのだ! ライバルが増えてしまう気になるが……。それはお互いが最終選考まで残った時に喧嘩すればいい。「お前のせいで大賞に選ばれなかったじゃないかー」なんて、一度でいいから言ってみたいぜ。

 そしてなにより、小説の見直しだ――。何度も見直すのと同時に、読んでもらった人の忠告やアドバイスを素直に聞き入れ修正するのが大切だ。一人よりも二人、二人よりも三人。

 絶対に自分では気付かない改善点を指摘してくれる――。


 来る日も来る日も小説を修正した。締め切りギリギリまで、少しでも小説キャラを育てるのだ!

 その結果もあり、俺の主力小説キャラは、かなり育ったぞ――。

 「オイナリサン」はPVが五万を超え、総合評価ポイントも百八十ポイントを超えた!

 「ふっふんクス森ピクピク」はPV値こそ少ないが、感想とレビューを受け取り、必殺技が使えるように成長した! 

 「力を蓄える」と「我慢して耐える」だ……。格闘家だから……。



 時間は二十三時五十分。『なるうコン小説大賞バトル』締め切りの十分前だ。


 なんとか……なんとか十分間だけ逃げ回ればいい……。

 二次選考は通過できなくても、せめて一次選考だけでも通過してやるんだ――!


 それが俺の目標だ――!


感想、ポイント評価、ブックマークをして、小説キャラを鍛えましょう!


決戦は日本最大級のネット小説バトル――「なるうコン小説大賞バトル!!」

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