無料ゲーム『小キャラバトル説』
利用規約なんて読まずに、『□同意する』に☑(ちぇっく)を入れ、ダウンロードを開始する。一瞬で終わるデーター量の少なさに、思わずニヤリとしてしまう。
『小キャラバトル説・exe』をダブルクリックすると、直ぐにゲームのタイトル画面が表示された。
小キャラバトル説……? もっとマシなネーミングはなかったのだろうか。せめて、「小説キャラバトル」の方が分かりやすい気がするが……。小説キャラバトルと聞くと、小説に出てくるキャラがバトルするような誤解を招くのかもしれないなあ……。みんなが書いている小説のキャラ同士がバトルするのは……普通に面白く、クソゲーの要素がないかもしれない……か。
……俺はクソゲーを求めているのか?
スタートをクリックすると、自分の小説投稿サイトの種類と、ログインパスワードの入力画面に切り替わったので、そこで一瞬手が止まった。
――本当に、このゲーム、信頼してもいいのだろうか……?
小説投稿サイトにバナーを載せているのだから、ウイルスなどの心配はないと思うが……。恐る恐る自分の使っている小説投稿サイト『小説家になるう』に☑を入れ、パスワードを入力すると、「now loading……」の文字が表示される。
一秒も経たないうちにローディングが完了すると、自分が現在投稿中の小説一覧と、その横に小説ごとの小さいキャラクターが表示された!
キャラクターはフルポリゴンやCGとはかけ離れた荒くて小さい画像――ドット画!
自分のユーザー名の下に、投稿した小説タイトルがずらりと並ぶと、少し気恥ずかしい……。
『うっふんクス森ピクピク』なんてタイトル――付けなかったらよかったと後悔してしまう~!
握るマウスの手汗を気にもせず、その小説キャラをクリックしてみると、おおよそゲームのコンセプトが理解できた。
まずキャラの種族だが。
小説の「ジャンル」がキャラの「種族」に固定されていて、変更はできない。人気ジャンルの「異世界」は「騎士」。「現実世界」は「格闘家」。「ファンタジー」は「魔法使い」……といったような具合だ。
じゃあ、俺の得意とする「SF宇宙」は……。
「吟遊詩人」
……なんだろう。この終わった感溢れるキャラ設定……。吟遊詩人が戦士とどう闘えばいいのだ?
得意なジャンルばかり書いていると、パーティーのバランスが偏ってしまうのか。戦士や魔法使いはいいが……。吟遊詩人や踊り子パーティーは厳しくなるだろう。
遊び人とギャンブラーばかりになり、戦い始めた途端に奇跡が起こる魔法を連発して自爆なんて……思わず笑ってしまうかもしれない……。
次にステータスだ。
小説の文字数が体力の多さになっている。長ければ長いほどタフなキャラなのだろうが……防御力が少なければ、すぐにやられてしまうに違いない。
小説のPV値が高ければ経験値が多く、レベルが高くなり強いキャラに育つ。たくさん読まれている小説の方が強いのは……当然か。
総合評価のポイントは、各キャラのステータスに自由に割り振りできるポイントになっている。素早さや魔力などに振り分け、自分の個性に沿ったキャラが作れる。
「感想」や「レビュー」は、使用できる「特殊攻撃」になる。他のキャラには使えない特殊攻撃で一発逆転が狙える。
つまりは、小説の数が多く、種類も豊富、そしてなにより大勢に読まれて評価が高い小説の方が、キャラも必然的に強いってわけだ。
――腕が鳴るぜ!
現在開催されているバトルの一覧に、聞き覚えのあるバトル名が表示され、参加を待っている。
『第一回〇〇文庫文芸大賞バトル』
『〇〇ネット小説大賞バトル』
『なるうコン小説大賞バトル』
――!
「ってえ! これ、小説大賞と同じ名前じゃないか!」
最後に「バトル」と付け足されているだけだ! 現在開催中の小説大賞で、期限もまったく同じになっている……。
――どういうことだ? もしかすると、この「小キャラバトル説」で優勝すると、大賞になることができるのだろうか……。淡い期待を胸に、とりあえずは一番上に表示されている『〇〇文庫文芸大賞バトル』をクリックしてみた。
――バトルに参加するキャラを選択してください。参加数制限なし。
参加数制限なしなら、やはり全員投入でしょう。
――文字数……十万文字以上推奨。
推奨……推奨っていうのが、実際にどれくらい勝敗に関わるのかが分からないが、とりあえずは十万文字以上の小説キャラが二体しかいないので、十万文字以下も数体参加させる。
――そして戦いの火蓋が切られた!
感想、ポイント評価、ブックマークをして、どんどん小説キャラを強く育ててくださ~い!?