その33 望野宮神社・本殿奥の部屋、参道
本殿奥の大鏡から、シロネが部屋にそろりと入って来る。
「ご、ごめんください」
部屋の中央には硯に向かうシンケイと、その傍らで風呂敷を広げるブタエがいた。
「ササミ缶を食べに来たのですか」ブタエが微笑む。
「あの、コブタエの試験は…」
「彼女は試験会場に来ませんでした」
思いきり頭を下げるシロネ。「頼む。コブタエに再試験を受けさせてやってくれ!」
「それはできぬ決まりじゃ」シンケイが答えた。
「俺のせいなんだ。俺の弟を助けるために最後の金平糖使っちゃって…」
「理由はどうあれ規則は規則」ブタエが言う。
「そんな…頼む。頼むから!」
シンケイは、何度も頭を下げるシロネの傍らに来ると、その手を取った。
参道のベンチには、単語カードをめくるコブタエの姿があった。その頭上には、金平糖が一粒もないベレー帽。
その横にシロネが現れた。
「シロネ…」
「何してんだ」
「ハブタエンヌたる者、日々是勉強です。試験が終着点ではありません」小さい声だが、きっぱりと言うコブタエ。
「ほら。これ、チキンさまからだ」風呂敷から賞状を取り出すシロネ。
賞状には「上級ハブタエンヌ合格証」の文字が見て取れた。
「これは…?」
「チキンさまのやつ、水晶玉で俺たちの様子を見てたんだとよ。おまえの行動は上級ハブタエンヌに値するってさ」
「シンケイさま…」
「それと、こっちは姉御から」
前よりも大きい金平糖が沢山ついたベレー帽を差し出すシロネ。
「ブタエ姉さま…」涙ぐむコブタエ。
「よかったな、コブタエ」
「はい!」
コブタエは、満面の笑みで答えた。




