その23 犬狛国宮殿・王女の部屋
マイヌが笑顔で羽二重餅を頬ばっている。
「本当においしいわ。コブタエちゃんの羽二重餅」
「どんどん食べてくださいね」嬉しそうなコブタエ。
「…ところで、コブタエちゃんてシロネ王子と付き合ってるの?」
コブタエが眉間にしわを寄せる。「まったく少しもこれっぽっちも付き合ってませんが」
「本当? よかったぁ」
「あの…姫さまはクロネ王子狙いではなかったのですか?」
「誰がそんなことを? 私はシロネ王子のようなワイルドな人がタイプ」うふふと笑うマイヌ。
「物は言いようですね」コブタエがぼそっとつぶやく。
「何か言った?」
「いえ、何も」満面の笑みで答えるコブタエ。
「でも…クロネ王子のことは本当に心配だわ」
「ツナ缶が犯人に渡ったら、無事に戻ってくると信じたいです」
「犯人はきっと、ツナ缶を食べて“力”を手に入れたいのよね。でも食べても…」マイヌがため息をつく。
「食べても、とは…?」
「ううん。何でもないわ」
マイヌをじっと見つめるコブタエ。
「隠し事をなさるなら、羽二重餅はもう作りません」
「そ、そんな!」
「作りません」
「えーと、えーと犯人はミラクルオープナーも要求してるのよね?」
「何ですか、それは」
「ツナ缶を開けられる特殊な缶切りよ」
「それがないと、ツナ缶は開けられないということですか?」
「ええ」
「それって、ツナ缶と一緒に移送中なんですか?」
「いいえ。ミラクルオープナーは蔵のどこかにはあるはず」
「じゃあ、それも探して犯人に一緒に渡さないと駄目ですね。缶を開けられなくて犯人が逆上したら、クロネ王子に危険が及ぶことも…」
「そうねえ。一緒に渡した方がいいかも」
マイヌとコブタエの話を天井裏で聞きながら、ニヤリと笑う銀色の毛並み。スパだ。
“そういうことなら…”スパは天井裏を抜け、走り出した。
「ではコブタエが探してきます!」
「あと、それからね…」
マイヌの話の続きを聞かずに、コブタエが部屋を飛び出した。
「行っちゃった…」困り顔でマイヌがつぶやいた。




