その19 望野宮神社・参道
がっくりと肩を落として座り込むシロネ、頭を抱える。
「いったい、どこに落としたんだよ…」
そこに、単語帳を片手にぶつぶつとつぶやくコブタエの姿が。下を見ていなかったので、シロネにつまづく。
「ニャッ!!」
「わっ!…ごめんなさ…シロネ!」
「コブタエ…」
いつもなら、ぎゃんぎゃん文句を言うであろうシロネが、しょんぼりとしているので、怪訝に思うコブタエ。
「どうしたんです?」
「どうしたらいいんだ…」
涙目になりながら、シロネはコブタエに事の次第を話した。
「ということは、クロネくん、本当に誘拐されちゃったんですか…」
「シノブも一緒に消えた」
「まさか、シノブさんが犯人だとでも?」
シロネが尻尾を左右にばたんばたんと振る。
「確かにシノブは一日中クロネの傍で働いている。誘拐のチャンスはあるだろうが…」
「シノブさんにしたら、すごく幸せな状態ですよね。それをわざわざ壊すとは思えません」
「ああ」
腕組みするコブタエ。
「でもツナ缶を欲しがるということは、犯人は猫側の人間なのでは」
「考えたくないがな」うつむくシロネ。
と、その時、シロネのスマホが鳴った。
「はい」
「ダイヤモンドツナ缶は用意できたか」
機械のような声が聞こえてくる。
「クロネは無事なのか!」
「ダイヤモンドツナ缶は用意できたか」
「…二日後に犬狛から渡してもらえる手はずになっている」
「なぜそんなに時間がかかる」
「遠方から運ばねばならぬそうだ」
「チッ」
「頼む! クロネの声を聞かせてくれ」
一瞬間があいてから、犯人が答える。
「ま、そのくらいはいいか…ほら」
「兄さん、渡しちゃダメだ!」クロネの声だ。
「余計なこと言ってんな!」犯人が何かを叩く音がする。
「クロネに乱暴するな!」
「また連絡する」
「おい、待て!」
電話はそこで切られてしまった。大きくため息をつくシロネ。
コブタエが心配そうにシロネの顔を見つめる。
「ともかく今はクロネくんを助けることが最優先です」
「それが……肝心の骨ガム、落としちゃったんだよ」さらに大きなため息をつくシロネ。
「骨ガムなら、神殿の神棚にありますけど?」
「は?」ぽかんと口を開けるシロネ。
「最初に神殿に来た時に落としていったのをシンケイさまが保管していらっしゃいます」
「早く言えよ!」
「聞かれてないです」
「…まあな」
「とにかく神社に行きましょう」
コブタエは、むんずとシロネを抱えた。




