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その14 猫魂国王家の別荘


 コブタエとシロネが、ハンググライダーで猫魂国王家の別荘までたどり着いた。

 名古屋城のような城がふんぞり返って建っている。“のような”というのは、屋根のシャチホコ部分が、シャチではなくマグロになっているからだ。

 コブタエが辺りを見回して言う。「ここ、結界が張られていますね」

「神殿と同じだ。ここの中からは匂いが漏れないようになっている」

「なるほど」

「とりあえず降りてくれ。中を探りたい」

「承知」

 コブタエは、どこからともなく竹やりを取り出すと、ハンググライダーの羽に突き刺した。バランスを失い、急降下するハンググライダー。

「ちょ! 何やってんだよっ!」

「とりあえず降ります」

「うわぁあああ!」

 シロネの声が空に吸い込まれていった。


 気が付くと、シロネは別荘の庭にいた。

「気が付きましたか? そこの庭石に頭をぶつけて気を失っていたんです」淡々と述べるコブタエ。

「おまえの運転不行き届きだろーがっ!!」

 叫んだ自分の声が頭に響き、うずくまるシロネ。

「いってえ…」

「でも、的確に着地しました。そこのドアから入れそうです」

 コブタエの指さす方を見ると、勝手口のドアがあった。そこから入ってすぐ、リビングに通じる廊下がある。

「…よくやった」

「では、まいりましょう」

 コブタエはドアを破り取って、庭に置くと、中に歩を進めた。

「だから、人んち壊すなってば!」

「だったら先にカギを渡してくれればいいのに」

「う…」

「では、まいりましょう」

 かなり悔しいが、それ以上何もできないシロネは、コブタエの後について廊下を歩いて行った。


 リビングのドアに鼻を近づけ、匂いを嗅ぐシロネ。はっとして頭を振る。

「クロネの匂いだ」

「ここにいるんですね」

「よし、いったん外に出てベランダ側から入る…」

 シロネのセリフが終わらぬうちに、ドアをノックするコブタエ。

「こんにちは。いらっしゃいますかあ」

 慌てるシロネ。

「おい! 何やってんだよ!」

「失礼しまーす」ドアを開けるコブタエ。

 部屋にはクロネがソファでくつろいでいる。

 駆け寄るシロネ。

「クロネ!」

 驚いて振り向くクロネ。

「兄さん?」

「大丈夫か、クロネ! ケガはないか!」

 不思議そうにシロネを見つめるクロネ。

「どうしたの、兄さん。僕なら普通に休暇を楽しませてもらってるよ」

「おまえ、犬に誘拐されたんじゃ……」

 部屋に入って来たシノブ。シロネの姿に驚き、手のお盆を落とす。

「シロネさま…」

「どういうことだ、シノブ!」

「あ、あの」

 しどろもどろになるシノブに、クロネが問いかける。

「どうしたんだい、一体」

 地面に座り、頭を下げるシノブ。

「申し訳ありません。すべて私がしたことでございます」


「つまり、クロネくんの縁談話を聞いたシノブさんは婚姻までの間、大好きなクロネくんと一緒に過ごしたかった…」ふむふむとうなづくコブタエ。

「縁談…?」クロネが首をかしげる。

「それはそうなりますよねえ」さらにうなづくコブタエ。「ねえ、クロネさん?」

「あ、あの、こちらのお嬢さんは?」クロネが問う。

「こいつか? まあ、どうでもいいっつーか…」

 シロネの言葉を遮るコブタエ。

「申し遅れました。私の名前はコブタエ。シロネを何度も助けた親切極まりない羽二重餅の妖精です」

「話、盛ってんなよ!」

「そうですか。兄がお世話になりまして」

「お世話いたしました」ニコニコとコブタエが言う。

 クロネとコブタエのやりとりにため息をつくシロネ。

 床に座り込み、震えているシノブの前に座る。

「シノブ。クロネが誘拐されたと思い込んで、俺がマイヌの所へ乗り込んでいたら、どうなったと思う?」

「申し訳ありません!」土下座するシノブ。

「別にどうにもなりませんでしたよ」割って入るコブタエ。「さっき、シロネと一緒に犬狛に行きましたけど」

「行ったの?」驚くクロネ。

「い、いや、行ったっていうか、まあ、その」

「い・き・ま・し・た」声のトーンが上がるコブタエ。

「本当に申し訳ありませんでした!」頭を下げて叫ぶシノブ。「明日には本当のことを言うつもりでした。私が連絡するまでシロネさまは隠れているから大事にはならないだろうと思っていたのです…」

 コホンと咳ばらいをするシロネ。

「クロネ、そもそもさっきの話の縁談というのは何だ。聞いてないぞ」

「そんなもの覚えが…」ふと考え込むクロネ。「もしかして、この前の酒盛りで兄さんが酔っぱらって言ってた、あれか?」

「はあん。俺が何を言った?」

「犬狛の王女マイヌさまがクロネさまに好意を持っている。婿入りさせようと、おっしゃいました」震える声でシノブが言う。

「え?…え?」

「うわあ。シロネのせいだあ」ふふんとほくそ笑むコブタエ。

「俺が悪いのかよ!」

「いや。悪いのはシノブだ」クロネが言う。

「はい」うつむくシノブ。

「そして部下の不始末は僕の責任だ。僕が処分を受けるよ、兄さん」

「クロネさまには何の責任も…!」顔を上げるシノブ。

「いや、シノブは追放だ」

 クロネの言葉に慌てるコブタエ。

「それはもったいないです。聞けばシノブさんは猫魂国一の剣の使い手。シロネより強いんですよね。シロネより」

「二度言わなくていいからっ!」コブタエを睨むシロネ。「だからこそ大事な弟を守らせてんだろーがっ!」

「じゃあ追放できませんね。そもそも女心をわからないシロネにも責任があります」

「兄さん…」

 近づくクロネをはねつけるシロネ。

「勝手にしろ!」

 シロネは足早に部屋を出て行った。


 シロネを追ったコブタエが庭を探し回る。

「シロネってば、どこ行ったんですか」

 ため息をつくコブタエが、ふと、さっきいた部屋のベランダを見上げると、そこからスパが駆け下りて来る。

「あれはスパさん…?」

 ニヤリと笑うと木に飛び上がり駆けて行くスパに、コブタエは何か不穏なものを感じた。


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