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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アドバンテージ学園

作者: 野木

日本でも有数の国が運営している進学校。その高校に通えるのは、スカウトされたものだけ。

その学校を卒業したものは、エスカレーター式で大学に進みエリートコースが約束される。


そんな別世界の話のような勧誘が、俺の身に起こっている。


「入学金、無料。寮での生活になりますが、生活費、諸々の経費ももちろんこちらで負担致します。

 卒業後には国が運営している大学に進んでもらい、お子様の適性と希望に沿った進路をご用意させていただきます。もちろん、大学の奨学金の返金の義務もありません。」


「国」「エリートコース」「無料」こんな、おいしい話に食いつかない両親ではなかった。

かくいう俺もまんざらでもなかった。正直、自分の優秀さは自覚しているし、選ばれたエリート達の中でどこまで通用するのか試したかった。



そして俺は、国立アドバンテージ学園に入学する。



入学して2年。色々、あった。まず、この学園には優秀な人材しかいない。まあ、スカウトされるくらいだ。学力、身体能力の水準が高いのは当然なのかもしれない。大学レベルの授業や専門的な授業が行われていた。部活動や委員会活動はなく、実践的な武術やサバイバル術なども学べて、有意義な時間を過ごせたと思う。カウンセラーとの面談が義務付けらていて不思議だったが慣れれば、良い相談相手という感じで中学の頃や幼少の頃の話など雑談をしたりと楽しかった。そして、俺みたいな庶民出の奴は意外と多かったから夜は集まってゲームをすることが多かった。ゲームなどのお金も支給されるお金で好きなだけ買えた。広大な敷地に様々な施設がある為、敷地から出れないという不自由もあまり感じなかった。


そして、何よりこの学校に入学して彼女ができた。本城 花。サラサラな黒髪ロングでタレ目ぎみな大きな瞳に抜群のスタイル、性格も良いし正に完璧だ。


「洋一君。ボーっとしてどうしたの?ご飯冷めちゃうよ?」

うん。本当夢みたいだ。クラスで一番かわいい正統派美人が俺の彼女になってくれるとは。告白して良かった。

「ごめん、花。考え事してた。学園生活もあと1年だと思うと何か寂しいよな。」

「そうだね。でも、大学も同じだし、将来はお互い官僚だし、気持ちがあればずっと一緒にいれるよ。」

「・・・そうだな。クラス変えがなくて良かったよな。ていうか、2クラスしかないもんな。」

「ほんとだね。洋一君と離れなくてすんで良かった。・・・あっ、でもSクラスもあるから一応1学年3クラスじゃない?」

「えぇ?でもSクラスとか見たことないじゃん。隔離でもされてんじゃない?笑」

「きっと、すごい人達なんだろうね。あ、洋一君ミニトマトあげる。」

「おぉい。別に俺、ミニトマト嫌いじゃないけど好物とかじゃないからな。」

「ごめんね。この定食好きだけど、ミニトマトは本当に無理。それに、・・・洋一君に食べてもらいたいの。」

そう言ってから、恥ずかしくなったのか顔を赤らめているのにキュンとしてしまった。

「はい。あ~ん。」

「あ~。」


こんな日常がこれからも続くと何の疑いもなく信じていたんだ。


「今日から、諸君らは3年に進級するわけだが、別棟で筆記と実技の試験を行ってもらう。そこで、前もって説明しておくが、優秀な諸君らの能力を引き上げるためにSクラスとの合同試験を行うことになった。」

へぇ~。

「Sクラスの人間と競いあうことで諸君らの能力向上につながることを期待する。以上。」


簡潔に言うと、Sクラスの人間は凄まじかった。筆記はハイスコアをたたき出すし、実技の訓練ではボコボコにされるしで容赦がなかった。何より、奴らは何故か全員鍵付きの仮面を装着していて、誰一人言葉を発さなかった。


「何かこう、不気味だよな。実はエイリアンとかっだたりして。」

「おいおい、んなわけねえだろ。ていうか、毎回組む相手同じだって気づいたか?」

「え、まじで?」

「うん。体格とか匂い、仕種でわかる。」

「すげぇ。さすが、絶対記憶持ち。」

「はは、まあこんくらいわな。・・・でも毎回良いようにやられるのもむかつくよな。」

「そうか?俺は、もうあいつらは人間じゃないと思うことにした」

「ふ~ん。俺は本気出して負かしてやるつもり。」

「お、さすが、学年1位は言うことが違うね。」


そんな会話からしばらくしてから、親友の横田は本当に高い確率でSクラスの相手に勝利を手にするようになった。それを皮切りにぽつぽつと筆記実技ともにSクラスと渡りあう人間が増えてきた。

結局俺は一度も勝つことができなかった。


そして、1か月程して唐突にSクラスとの合同試験は終わった。



「私も結局1度も勝てなかったよ。」

しょんぼりしながら花が言った。

「あぁ、俺も。自分は結構優秀な方だと思ってたんだけどな。上には上が居るってことだな。」

「・・・うん。これを糧に今後頑張っていこうね。洋一君。」

「ああ、そうだな。」


「今日からしばらくの期間、クラス内で授業のカリキュラムを分けることになった。Sクラスに一度も勝利できなかった者たちは明日から国が運営している敷地で合宿を行ってもらう。」


合宿とか、むしろラッキー。楽しそうじゃん。花も一緒だしな。


「おい、洋一、・・・何か嫌な予感がするんだ。気をつけろよ。」

休憩時間に横田が神妙な顔をして言ってきた。

「はあ?何がだよWW あ~、さては俺らが授業さぼれるから羨ましいんだろ」

「真面目に言ってるんだ。とにかく、気を付けろ。」

「はいはい、ご忠告どうも~」


次の日、俺たちは窓のないバスに乗せられ、どこにあるのか分からない孤島に連れて行かれた。


「さて、諸君らには今日から1週間この孤島で過ごしてもらう。君たちは、高い能力があり、幾度ものチャンスが与えられ十分なサポートがあったにも関わらず、国が与えた試練に打ち勝つことができなかった。弱者だ。本来なら、その時点で切り捨ててもいいのだが、我々は諸君らに最期のチャンスを与えようと思う。そして、今回は君たちが本気で取り組めるように事前に説明を行うことにした。相手側にばかりアドバンテージがあるのはフェアではないと判断したからだ。」


「Sクラス出てきなさい」

俺は言葉を失った。見覚えのある顔が俺を睨んでいたからだ。そう、俺だ。俺自身がそこにいた。

隣の花が座り込んでしまった。彼女の正面にも花にしか見えない女の子が無表情で立っていたからだ。


「我々は常に優秀な人材を求めている。国の中心に無能は要らない。世界と渡り合える人材が必要だ。そうして20年前からこのプロジェクトは始まった。君たちの様な優秀な人材になりうる遺伝子を見つけしだい、極秘裏に入手し、クローンを生成する。その優秀な人材を英才教育する。その結果がSクラスの存在だ。我々は、環境がどれほどの影響を与えるか知るためにも同じ人物でもどのような違いが生まれるのか実験も兼ねて諸君らには一般的な家庭で普通の生活を送ってもらった。結果、素体によってはのびのびとした環境で育った方が、高いポテンシャルを身に付けることができることが分かり、今後のクローン達の教育の参考になった。・・・我々はクローン達に思い入れがあるが、前もって試験の重要度を説明されながらも敗北した素体は選ぶことができない。よって、殺処分をすることにした。そして、この場にいるSクラスの人間は我々の期待に応えてくれた成功作だ。今、この段階で君たちと対等な立場になった。我々は、クローン達にある約束をしている。」


「本物を消したら、その瞬間から君たちはクローンではなくなる。今後は人道的な生活を保障するとね。」


さあ、証明してくれ。自分自身が本物だということを。











「なあ、洋一、最近花ちゃんと全然話してないよな?」

「・・・そんなことないよ。」

「いやいや、そんなことあるって。花ちゃん最近笑ってるとこ見ないしさあ。」

「卒業が近いからナーバスになってるんだろ。」

「お前、何か冷たいな。あんなにイチャイチャしてたのに、喧嘩でもしたのか?」

「いいだろ。俺たちの事はほっといてくれ。それより、課題を終わらせたいから邪魔しないでくれ。」

「うわ、お前最近人が変わったように真面目だよな。・・・何かあったのか?」

「何も。ただ、」

「ただ?」

「アドバンテージを無駄にしたくないだけだ。」


そう、アドバンテージがありながら敗北するのは俺じゃない。俺は勝ち続けてみせる。

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