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第三想・想曲/肆〜自由〜

 主の背中が雨の向こうに霞んで見えなくなるのを見送っていたラウは、響いてきた泣き声に背後に視線を向けた。尻餅をついたまま顔を伏せて泣いている男の子の肩に、そっと舞い降りる。想像以上に細い肩に些か危なげであるが、どうにか収まった。

「…鳥さん?」

 顔を上げ、涙で潤んだ黒の瞳で見つめてきたその子の頬を、ラウは緋色の翼でそっと撫でる。

「僕と…来てくれるの?」

 言葉を返せない代わりに、ラウは肯定の意味を込めてもう一度男の子の頬に触れた。

「ありがとう、鳥さん」

 涙が笑顔に変われば、ラウは内心でほっと安堵の溜め息をつく。立ち上がる男の子の肩を傷付けないようにと上手くバランスを取りながら、ラウは主の消えていった方向を見遣った。

 彼は、結局何の答えも言葉にしなかった。けれどそれは、どんな意味にも取られるという事で。

 ラウは、この幼子が憐れだと思った。素直にお礼の言葉が出てきたこの子は、本当はとても優しい子なのだ。それを、問答無用でラウを連れて行かなければならない程に、彼は焦っている。

 拙い言葉からはどんな事情があるのかまではわからない。それでも、こんな姿の自分にも何かできる事があるのなら、力になりたかった。

 主が、自由にしろと言っているように思えたから。

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