第三想・想曲/弐~仮面~
「返せよッ。そいつを返せ!」
少年の服を両手で掴んで喚く男の子に、不機嫌のゲージが高かった彼は不愉快そうに眉を寄せた。そのまま、乱暴に男の子の手を振り払う。
「何するんだよ!」
その拍子に尻餅をついてしまった男の子は、目に涙を浮かべながらも尚も彼に噛み付いた。
「それは僕の台詞だ」
しかし、そんな男の子の小さな勇気も、不機嫌な彼の前では何の意味もなさなかった。感情の浮かばない深緑の双眸で見下ろされ、怯えたように幼子はびくりと肩を震わせる。
流石に哀れだと思ったのか彼の肩に収まっているラウが抗議するように微かに羽を動かしたが、一睨みで黙らされてしまった。
不愉快そうに鼻を鳴らして背を向けた少年は、そのまま歩き出す。
「・・・・・・・い」
背を追ってきた微かな声に、少年の足が止まった。
「…お願い…だから」
緩慢な動作で振り返った少年の深緑の双眸が、尻餅をついたまま俯く男の子を見据える。
「お願いだよ。その鳥を、僕に貸して」
伏せられていた顔が勢いよく上げられれば、その男の子は完全に泣いていた。自分を見下ろしてくる冷酷な双眸に臆する気配を見せながらも、それでも男の子は少年を真っ直ぐに見つめた。