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超絶魔法少女バスターリリィ

作者: MOZUKU

「死ぬか生きるか選べば?」

彼女はそう言うと一枚の紙を正座している僕の目の前に叩きつけた。

どうしてこんな事態になったのだろう?

僕は冷静になって考える事にした。

「合コンに行こうぜぇ‼」

友達にそう言われた時に一度は

「彼女がいるから無理。」

そう断ったのに、重ね重ね頼まれたら断りきれなかった僕。

まぁ大人しくしておけば大丈夫と思っていた、けど巨乳で眼鏡の文学少女が合コンに参加してるなんて反則でしょ?

「わ、私、合コンとか初めてで、よ、よろしくお願いします!!」

そんなたとたどしく挨拶してくれた奈々子はとても魅力的で、僕は付き合って同棲までしている女性が居るにも関わらず、電話番号、メールアドレスを交換して奈々子と交流を始めた。

言い訳する様で少し嫌だが、別に浮気をしたいと思ったわけではない、普通の女の子と交流する事で息抜きをしたかったのだ。だが今になって思えばそんな事はあまりに愚かな行為でしかなかった。


「奈々子って誰?」

同棲中の彼女と仲良くレーシングゲームをしている最中に、笑顔だった彼女が真顔になってそう言い出した時には、僕は小便を漏らしそうになった。

「な、何を言ってるんだよ・・・知らないなそんな子。」

必死に知らないフリをする僕だが、自分の彼女ハイスペックなのを忘れていた。

「魔法少女バスターリリィ舐めないでもらえるかな?スマホのロックなんか簡単に魔法で解除出来るのよ?」

リリィの手には僕のスマホが握られていた、言い忘れてました、僕の彼女は魔法少女です。


14年前、世界を暗黒魔法で征服しようとする“暗黒魔術団“という組織が現れ、世界の平和を乱そうとしていた。しかし、平和を愛する光の妖精に選ばれた少女“森下リリィ”は、光の妖精より託された魔法のステッキで魔法少女バスターリリィになり、暗黒魔術団と激しい戦いを繰り広げている、現在進行形で。

もうすぐ三十路になるというのに戦い続けているリリィ、そんな女の彼氏が僕。

そう彼氏が僕なのだ、リリィが魔法少女になる三日前に告白してしまい、それから14年間、僕は魔法少女が彼女という特殊な状況に置かれてしまっている。

敵との戦いでデートのドタキャン、中断は当たり前。僕が敵に人質として捕まった回数は先日100回を越えた。

最初はリリィの戦いを応援していた僕も、14年も特殊な状況に置かれれば疲れる、疲れ果てた、白髪が増えた。

だから魔が差した、えぇ差しましたよ、でもまだ事は何も起こしてませんよ、やり取りをしただけ、会う約束すらしてないよ、どうせバレるなら何か起こしてからバレたかったよ。

「とりあえず正座、正座しなさいよ。」

サヨナラ童顔巨乳、僕は素直にその場に正座して、リリィはスマホ(僕の)を握り潰した。


「ごめんなさい、すいません、最初から言っておきますが下心はありました、一発ヤレたら良いなとか考えてました。」

正直にリリィに全部伝えた、だって魔法で拷問されたらどの道吐かないといけなくなるもの。

「正直なのは良いことよ・・・でも正直過ぎんだろうが‼」

バコン!!とリリィはアパートの壁を拳でぶち抜いた。あとで魔法で直すのは分かっているが怖すぎる行動である。

「ひぃ、す、すまない、殺さないで、もうしません!!」

自然と僕は土下座をした、土下座は僕は慣れたものだ、もはや土下座をする事になんの抵抗もない、しかしそんな土下座など彼女は見飽きていた。

「顔上げろや‼ちゃんと話できないだろうが‼」

彼女の怒りの声にすぐさま顔を上げると、般若の様なリリィが仁王立ちして僕を見下していた、そして冒頭に話は繋がる。

「死ぬか生きるか選べば?」

彼女が僕の目の前に叩きつけた紙、それは市役所に提出する類いの紙だった。

「こ、こ・・・婚姻届。」

冷や汗と鳥肌、それとちょっぴり悪寒が走る。

最近なんとなくリリィが結婚雑誌を読んでたり、意味ありげなため息をしたりしてたから嫌な予感はしてたんだ。

婚姻届にはしっかりとリリィ所に名前と実印が押されている。

「け、結婚はまだ早いんじゃないかな?ほら暗黒魔術団の奴らもまだ世に蔓延ってるし、魔法少女と主婦の二足のわらじはキツいと思うよ、うん。」

魔法少女と結婚なんてこれまで以上にしんどいに決まってる、絶対に阻止しないと。

「何、私と結婚したく無いっての?じゃあ死ぬ?」

ボン!!とリリィは死神が持ってそうな大鎌を魔法で出して、その鋭い刃を僕の首もとに向けた。

「ちょ、危ないよリリィ‼落ち着こうよ、落ち着いて話し合おうよ。」

「ウフフ、落ち着いてるわよ、自分でもビックリするぐらい落ち着いてるわよ。だからねぇ選んでよ、生きるか死ぬか。」

ヤバい、リリィが極限状態です、これは本当に殺られる、大鎌の刃を向けられてるから迂闊には動けないしどうすれば良いんだろう?魔法少女を嫁にしないといけないのか?いや、愛してないワケでは無い、愛してなければ14年も付き合い同棲までするワケが無い。でも僕には覚悟が足りない、魔法少女を嫁にする覚悟が。

そんな煮え切らない僕に苛立ったのか、リリィは世話しなく地団駄を踏み出した。

「何!!私の事が嫌いなの!!私はこんなにもアナタの事を愛してるのに!!もういい!!アンタも殺してアンタを殺すよ!!」

「落ち着いてくれ!!それ俺しか死んでないから!!」

そろそろ一人の人間の尊い命が消えそうになった時、キッチンタイマーみたいな音が鳴った。

“ピピピ、ピピピ、ピピピ”

この音はリリィの持つ魔法バッチの音で、暗黒魔術団が現れて悪さをしている時に鳴る様になってる。よし、これでとりあえずは死なないですむ。

「あちゃ~‼リリィ、暗黒魔術団が出ちゃったね、なんでいつも肝心な所で出てきちゃうかなぁ~‼い、いってらっしゃ~い!!」

“ピピピ、ピピピ、ピピピ”

しかし、リリィは一向に動こうとしない、大鎌を僕に向けたままである。

「あ、あのリリィさん、そろそろ行かないと、市民達が暗黒魔術団の驚異にさらされますよ。」

僕はそう促したが動かない代わりにケタケタと笑いだした。

「えへへ、えへへ、えへへ。市民とかどうでもいいし、大体私の犠牲で成り立ってる平和っておかしくない?今日ぐらい人死んでも構わないよ、えへへ、それより返事まだ聞いてないんだけど、ん?」

構う!!思いっきり構うよ!!あれ?もしかして俺が決断しないと人が死ぬとかそういう流れなのか??結婚しないと俺は死ぬし、このまま返事を渋れば、なんの罪もない市民が死ぬ・・・汚いぞ!!バスターリリィ!!こんなに病んでる魔法少女が居ていいのか?

とにもかくにも市民を人質に取られた僕は、仕方がないので涙ながらに覚悟を決めた。

「分かったよ・・・結婚しようリリィ、君を愛してる。」

そう渋々僕が言うと、リリィはようやく大鎌を消して、これまでに見たこともない笑顔を俺に向けた。

「嬉しい、アタシとっても嬉しいわ。」

「そ、それは良かった、じゃあ暗黒魔術団を倒しに行ってらっしゃい。」

「倒す次いでに市役所に行って婚姻届だすから、急いで書くとこ書いて実印押して。」

「・・・はい。」

真顔のリリィに言われるがままに僕が婚姻届を書いて実印を押すと、彼女はヒラヒラの魔法少女の戦闘服に身を包み、箒にまたがり意気揚々と現場に急行するのだった。

魔法少女が彼女という状態が、魔法少女が妻というのにレベルアップした。すると精神的なプレッシャーが一気に来たようで、僕はトイレに駆け込み嘔吐した。

頑張れバスターリリィ、暗黒魔術団を倒すその時まで。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] アンハッピーですね。男主人公可哀想でした。 [一言] 今一つ楽しめませんでした。残念です。
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