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 袴って何だよ?!

 意味分かんないって……。

 その後、私たちを待っていたかのように準備は整い、皆がブルーシートの席に着いた。

 目の前には酒のつまみや料理が所狭しと並んでいる。

 日本刀は父さんの席の横に飾られている。

 そのそばにはギンさんが。

 私はギンさんの隣に座る。

 剛はと言うと、私たちの座るブルーシートから最も遠いブルーシートの更にその端っこ座っている。

 言うなれば、私たちが座っているのは上座。そして剛が座っているのは下座の更にその端。

 私の座っている周りの人たちは皆私の知っている人――五月女組の幹部達だが。剛の周りに座っている人たち――下っ端の人たちは私ですらあまり見ない人たちだ。知らない人もいる。

 父さんの乾杯のかけ声とともに皆はお酒を飲み始める。

 日本酒の一升瓶が凄い勢いで空いていく。

 多くの人が父や幹部の人たちにお酒を注ぎに来る。

「お嬢! 一杯どうですか?」

 なんて、冗談を言ってくる人たちもしばしば……。

 ちなみに私はオレンジジュースを飲んでいる。

 わいわいと賑やかで楽しいお花見の中、私は黙々と料理を食べる。

 お酒を飲めないので食べることしか出来ないのだ。

「お嬢。よく食べますね」

「太りますよ」

「馬鹿野郎、お嬢は太らない体質なんだよ!」

 などなど皆私のことをからかう。

 太らない体質って何だ?

 少しムッと腹が立ったかが、愛想笑いでその話を流す。

 こういった場で私はあまりすることがない。同年代の子とかがいてくれれば話したりするのだろうけど、周りは大人ばかりで私の話し相手になってくれる人もいない。

 なんせ、お酒を飲んでいるので話が途中で無茶苦茶になる。

 結局最後は酔っぱらいの相手をしなければならないのだ。

 だから私はお祭りや行事ごとは案外好きじゃなかったりする。

 苦痛とまではいかないが……。

 お腹も一杯になって来た頃。

 ふと、ギンさんは立ち上がる。

「ん? どうしましたかお嬢?」

「いや、急に立ってどうしたのかなぁって」

「いやいや、別に対したことではないですよ。ちょっと、クールを気取った寂しがり屋に酒を注ぎに行こうかなっと……」

 そう言ってギンさんは下座の席の方を見る。

「では、失礼」

 一升瓶片手に剛の方へと歩いて行った。

 その足取りは少しふらついていた。

 遠巻きに剛とギンさんを見ていると何だか仲良く見える。

 実際二人の会話しているところを殆ど見たことがない私に取っては珍しい。

 ついまじまじと見てしまう。

「お嬢!」

 ドカッと私の横に座って、私の肩に手を回してきた。

「徹平君……。酒臭い」

「えぇ〜?! そんなつれないこと言うなよ〜」

 彼は笹川徹平ささかわてっぺい

 名に『鉄』を持つ男。

 童顔の奇麗な顔立ちをしている。

 見た通りの女たらし。

 噂では現在彼女が三人いて、二人攻略中とか……。

「やっとアニキが席立ってくれて、つばきお嬢様の隣に来れたのに……。そんなつれないこと言うとチューしちゃうぞ?!」

「わかった。分かったから! ちょっと離して」

 鉄平君の手を振り払い少し距離を取る。

 するとすかさず距離をつめてくる鉄平君。

 暑苦しい奴である。

「お嬢の服可愛いねぇ!」

 さすが良く分かってるね……。

 女の子の扱い方。

「でも、お嬢は袴の方が似合うかなぁ……」

「また袴?」

「また? どういう意味?」

 鉄平君はスッと身体を少し離した。

 首を傾げる鉄平君。

「誰かに言われたの?」

「まぁ、そうだけど」

 は、は〜ん。と一人で頷き出す鉄平君は続ける。

「アニキに言われたの?」

「後、父さんにも」

「あぁ。旦那にもかぁ……」

 何かを一人で理解したかのようにギンさんと父さんを見る鉄平君は私の頭にポンと手を置き、

「袴なんだよ。お嬢!」

 とにこやかに笑う。

 何が何なのか全く分からない。




「ついでに言うと、道着だったり……」




 鉄平君は父の方を見つめる。

 けどその視線の先にあるのは父さんではないことは何となく分かった。

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