1項:エリュシア・キール・ベルベンティアが見た場合。
私の名はエリュシア・キール・ベルベンティア。由緒あるベルベンティア王家の第一王女ですわ。
唐突ですけど、この世界に危機が迫っていますの。
この世界に500年の時を経て、魔王が復活したのですわ。
500年前、多数の魔物を率いてこの世界を支配しようとした魔王。
その魔王を討ったのは、偶然異世界からやってきた勇者だと言い伝えられていますわ。
その勇者が興した国家が我がベルベンティア王国。
つまり私は勇者の血を引いていますのよ。
あら、話がズレましたわね。
そんな経緯もあって、我がベルベンティア王家では、ずっと昔から勇者を召喚する為の魔法を研究しておりましたわ。
星の並び、天候、様々な要素が条件になりますけど、その魔法は完成しましたの。
結論から言わせて貰いますと、勇者様を召喚する魔法は成功しましたわ。
呼び出された勇者様は4人。彼らは同じ学校の生徒だそうです。
一人はスラリとした長身に美しい容姿の天本勇様。
召喚されてすぐに素晴らしい剣技と魔力を見せてくださいましたの!
ああ、素敵ですわ!
二人目は彼らの学校で生徒会長を務めている天本麗様。
名前の通り、イサム様の双子のお姉さまですの。
イサム様と同じく美しい容姿で、綺麗な黒髪を腰まで伸ばした、責任感のある素敵な女性ですの。
ウララ様はイサム様よりも凄まじい魔力をお持ちで、魔法適正も全属性使える才女ですのよ。
名前の通り麗らかなお方ですわ!
三人目は少し背が低いのにアンバランスなプロポーションをした海原楓様。
彼女も優秀な魔力をお持ちで、治癒魔法が得意ですのよ。
そして、その………私よりも小さいのに、大きいのですわ。くっ…。
因みにこのお三方は学校内でも人気者だったそうです。
当然ですわね!こんなにも素敵なんですもの!
文武両道のイサム様、頭脳明晰なウララ様、ろ、ろりきょにゅーでいもうときゃら?なカエデ様。
こんなにもカリスマ性に溢れた方々が不人気だなんて詐欺ですわ!
………そして最後にこの男。……はぁ、説明するのも忌々しい。
手入れなどしていない黒髪に度の強い眼鏡、カエデ様と同程度な短身。
眼鏡の奥の気だるい視線は何にも興味が無いという様子。
如何にも冴えないこの男は土屋健。
魔力は並、平々凡々。そして地属性という地味さ。
身体能力も兵士に簡単にあしらわれる程度の低さ。
話を聞けば、たまたま近くに居ただけで偶然この世界にやってきたのだとか。
ああ、本当に忌々しい!
私を見た瞬間、この男は何と言ったと思います!?
「……うっわー、テンプレど真ん中ストレートな王女様」
ですのよ!?
意味はよくわかりませんが、侮辱されたのは分かりましたわ!
怒りを見せなかった私を自分で褒めてあげたいですわ!
湧き上がる怒りを抑えながら私は4人にこの世界の状況を教えましたの。
イサム様は快く魔王討伐を受けてくださいました!やっぱり素敵ですわ!
ウララ様はそんなイサム様に少し呆れ顔で同意しましたわ。カエデ様は「先輩がやるならあたしも!」とやる気十分でしたわね。
………負けませんわよ。
そしてツチヤは。
「………ま、僕は適当に頑張るよ。多分誰も期待してないだろうけど」
如何にも興味が無さそうにそう言いましたわ。
ああ、腹ただしい!今小さい声で「どうせアマモト達がやるだろうし」とか言いましたわ!
本当に忌々しい男!ツチヤタケル!
…………でも、まさかこんな冴えない男が、本当に魔王を討伐してしまうなんて、誰も想像だにしていませんでしたわ。
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