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めいたんてい

作者: 武ナガト

電撃文庫のショートショートに投稿して落選した話です。


 俺は高校生であり、いま学力テストを受けている。テスト科目は日本史だ。このままでは赤点をとってしまいそうで困っている。問題の答えがさっぱり分からないのだ。


 問題が難しすぎて答えられないときに俺はよく考えることがある。もしも俺が名探偵だったら、こんなテストの謎くらいちょちょいのちょいと解いてみせるのにといったことだ。


 名探偵といったら、迷宮入りしそうな難事件を持ち前の推理力で解決する専門家だ。そんな彼なら高校一年生のテストを解くくらい朝飯前なのではなかろうかと考えてしまうわけだ。そんなことを考えた後にテストと事件の謎は違うから論理的におかしいだろと自分でツッコミを入れてしまって苦笑するのはいつものこと。それでも考えてしまうのだから仕方がない。


 考えてしまうのならば今日はいっそのこと名探偵になったつもりでテストを解いてみようと思う。ひょっとすると点数が上がるかもしれない。というわけで名探偵モード発動!


 1192年、征夷大将軍に任命された人物は誰か? 誰だったかな? いいくに作ろう鎌倉幕府だろ。たしか鎌倉幕府を開いたのは源って漢字がついた奴だよな……。光源氏ひかるげんじ……? そうだそうだ。光源氏だ。


 名探偵モードすげえ! パッと答が出てきた! よし書こう。解答欄の白紙が埋められる。やった。白紙が埋まった。白紙は恥ずかしいからこれからも白紙を埋めていこう。


 こんな感じで俺は解答欄の白紙を埋めていった。正解している可能性は低いかもしれないが、書かなければ確実にペケだ。今日は名探偵モードなのでいつもより正答率が上がっているはずだから書かなければ損である。


 記号選択問題に行き着いた。これは全力を注がねばならない。選択問題は他の問題と比べて正解する確率が飛躍的に上昇する。ここを正解して名探偵としての株を上げてやろう。


 選択問題を解答する俺の方法は次の通りだ。まずは解けそうな問題を探す。俺はバカだけど、俺にだってときどき正答できる問題がある。だから正答できる問題をまず探すのだ。見つかればその答の記号をもとにして答が分からない問題の推理開始。俺が解けると判断した答の記号がアだった場合、次の問題の答はア以外だろうとか、裏をかいてこれもアだろうとか考える。経験則で答えを導いていくのだ。


 選択問題の場合は探偵というよりも予想屋っぽくなって迷うことが多いから、名探偵というよりも迷探偵といった感じだなこりゃ。


 迷探偵か。嫌な響きだ。けれども迷探偵の状態で挑戦した選択問題の正答率が高くてテストの返却日に赤点をまぬがれたときは、俺は自分を名探偵と褒めてやろうと思う。


 まあ、そんなこんなで記号問題を解いて、答案の白紙をできるだけ埋めた。あとは運を天に任せるのみ。残りのテスト時間はボーッとしてすごそう。



 後日、日本史の授業でテストが返ってきた。俺は返却されたテストの成績を見てびっくり!

 0点だと! 


 0点の謎はすぐに解けた。自分の名前を書き忘れたのだ。俺の学校では名前の書き忘れは問答無用で0点である。


 実のところ返却されたテストの氏名記入欄には俺の名前が書き込まれてあった。だが俺の筆跡ではない。先生が赤ペンで記入してくれたらしい。


 恥ずかしかった。答案の白紙をなくそうと必死になっていたのに、自分の名前を書き忘れるとは……。

 先生が書いた俺の名前を見て俺は思った。

 名前なんか書いてなかったのに、この答案が俺のものだと先生はよく分かったな。なぜだ?



 授業後、この答案の解答者が俺だと特定できた理由を先生へ尋ねてみた。


 結果、消去法を用いたと先生は教えてくれた。名前を書き忘れた生徒は俺だけだったから必然的に俺へ行き着いたそうだ。


 さらに付け加えて先生は笑いながらこうも言った。消去法を使う前からこの答案はおまえのものと分かっていた……と。

 なぜ消去法を使う前に分かったのだろう。


 先生の答は「光源氏と答える人物はおまえぐらいしかいない」だった。


 先生の言葉が頭をめぐる。


 俺は、バカという属性がしみこんでいるから、自分の名前なんか書かなくとも、隠されている名前へたどり着くことができる分かりやすい存在であるという意味なのだろう。


フッ……。そうか。そうかもしれないな。いや、そうなのだろう。

 俺は悲しくて悔しくていたたまれない気持ちだったから、先生へこう言ってやりたくなった。

 正解。名推理だよ先生!


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