Phase7 吸血鬼
起き上がると、自分の部屋に戻されたようだ。レミアはいない。
寝ぼけている感じがするので寝覚ましに顔を洗って頭を覚醒させる。
「やばい。やばいぞ。レミアに嫌われてないかな」
酔っていたとはいえ昨日レミアに色々とやってしまったことを思い出す。
非常にレミアと顔を合わせるのが恥ずかしくて、部屋の外に出るのか迷う。
それでもお腹は正直で、情けない音を響かせ始めたので、食事をとるために部屋から出ることにした。
「おはよう」
レミアがいたのでそう声をかけると、おはようと返されたが、それ以降会話が続かない。
食事を頼んで、埒があかないので昨日の件を謝ることにした。
「酔っ払っていたとはいえ、昨日色々してごめん」
レミアは下を向いたまま真っ青になっている。
「あまり気にしないで。私もカナメに謝らないといけないことがある」
なんだ? と思って聞いてみると、昨日酔っ払っていたから加減が聞かず、血を吸いすぎて本当に生死に係る状況になってしまっていたらしい。美少女に殺されるのなら本望とも思わなくはないが、実際死にそうになってみると笑えない。
「多少気持ち悪いなって思うくらいで、今は大丈夫だよ」
そう言うとレミアが涙目になったので撫でてやる。話を聞いてみると本当に死にかねなかったので焦ってしまい、血を戻すときレミアの血と一緒に血を体の中に戻したらしい。
「俺ってもしかして吸血鬼ってやつになっている?」
頷かれた。朝起きたら人間やめていたと聞いて頭が付いて行かない。
「人間に戻る方法はある?」
聞いてみると一応あるようだ。戻れるみたいなので良かったが、もし戻れなかったことを思うと身震いする。
戻る方法を聞いてみると、レミアが俺の血を吸って、レミアと俺の血の混ざったものの中から俺の血だけを取り出して体に戻すってことを繰り返すらしい。
ある程度同化してしまったから全部を戻すは不可能みたいだが、人間には戻れるらしい。
吸血鬼の体の構造が気になったが戻れるのならよしとする。
「酔っ払っている時に血を吸うか聞いた俺も悪かったけど、今度から酔っ払ってる時に血を吸うのは禁止ね」
そういうとすごい勢いで頷かれた。
食事をとり終わり、部屋に戻るとレミアに寝るように言われたので布団の上に寝転がる。
そうするとレミアが俺の上に乗ってきた。人間に戻るためとはいえ、美少女に乗られるなんて、と考えた所で自分がにやけていることに気づき真顔に戻る。
「じゃあいくわよ」
レミアにそう言われ、身構えると首から血を吸われているのと血が戻される両方の感覚がして、すこし気持ち悪くなったが、意識は保てるくらいなので抱きついているレミアの感触を楽しむ。
レミアの感触を楽しんでいてほんの一瞬だったように感じたが、数時間は経ったのだろうか。レミアが顔を上げた。
「終わり」
もう終わってしまったらしい。レミアに抱きついていたかったがしようがない。
少し俺が身じろぐと官能的な声をあげるので時間が経つのがあっという間だった。
「本当にごめんなさい」
レミアが涙目で謝ってくるので頭を撫でて返す。そうするとレミアのお腹がなっている。
顔を真っ赤にしていて可愛い。昼飯を取っていなかったのでとりに部屋をでた。
「今日はどうするの?」
レミアにそう聞かれ、少し思案する。パンを頬ばっている姿が可愛い。
「戦闘方法を教えて欲しいかな。特にロックさんから魔晶石を作るように言われてないから今日は何もないし」
「わかったわ」
場所はどこにするのか聞いてみると冒険者ギルド内に訓練場があるそうなのでそこを借りる事にした。
臭いがきついところに行くのは気が進まないがしようがない。
訓練場は意外と広かった。臭いは多少するが、ちゃんと換気されているからかそれほど気にならない。
「カナメの好きなように私に攻撃してきて」
そう言われたが、美少女を攻撃するのは気が引ける。とりあえず軽めに殴ってみようとしたが、いつの間にか俺は地面に仰向けに倒れていた。
おそらくだが殴ろうとした手を取られ、投げられたらしい。背中が痛む。
「隙が大きいし動きが素人くさい。戦闘経験は?」
意外と厳しかった。戦闘経験なんてほとんどないことを告げると呆れられた。
平和な世界で生活していたからしょうがないと思う。
初歩的なところから教えてくれるように頼むと、正しい人の殴り方など割と物騒なことを教えてくれた。
教え方自体はすごく的確で、本質的なことを教えてくれるからわかりやすかった。
基本的な体の捌き方はわかってきたので木剣を持つように言われたので訓練場の端に放置されている木剣を適当に持ってみる。意外と重い。
基本的な振り方を教えてもらいつつ、スキルを使えないか考えてみるといい案が思いついた。
そう思って木剣を置き、レミアに攻撃していいか聞いてみると了承してくれた。
レミアも木剣を持っていて、俺を鋭く睨んでいる。
地面を蹴って、レミアに剣を振り下ろすと容易に受け止められた。しかしこれだけでは終わらない。
レミアの頭の上にこぶし大の水晶が生まれるようにイメージする。魔力は十も持っていかれていないと思う。
水晶は自由落下してレミアの上に落ちてくる。瞬間レミアは前に飛び俺を押し倒し、俺の頭に木剣で一撃を入れた。
「あ、ごめん」
頭が割れそうだ。レミアいわくつい反射的にやってしまったらしい。
意識が遠くなってきたので逆らわず意識を失おうとしたが、レミアに叩き起こされた。
曰く訓練始まったばかりなのだから意識を失うことは許さないらしい。
鬼畜だ・・・。
それから訓練が終わるまでしごかれ続けたが、一撃も当てることなく終わった。
意識が朦朧としてどうやって宿屋に帰ったかわからない。
以下補足 飛ばしても大丈夫です
レミアがカナメの血を元に戻すシーンについてですが、個人個人によって吸血鬼像が違うと思うので、体の構造が気になったが という表現を使い ぼかして説明を避けました。
私の中の吸血鬼像ですが、食事をとる行為自体は人間となんら変わらないメカニズムで行われますが、
血液に関しては牙から直接血管(=循環器系)に取り込むようなイメージがあります。 つまり本文中のある程度消化してしまったから・・・という部分で循環器系ではなく直接胃袋に血液が行ったのではないか と誤解してしまうことを失念していました。
後もう一つ、
吸血鬼に対する共通認識、よくある設定として血液を相手に入れることにより相手を吸血鬼化する ということがあります。
ただ吸血鬼化するメカニズムは血液を入れることであって、血液内にどういう因子があることによって吸血鬼化するかについては触れていることはあまりないです。
なので本文中では冗長になりますしどのような因子のせいか、というところまでは踏み込まないでいこうと思います。
ただ濾過機能に関しては完全にオリジナルです。こうしないと話が進まないので、 というか吸血鬼化したままで話書いてみたらおかしくなったのでこのようにしました。
感想は基本的には返信するつもりです。
ありがとうございました。