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Phase5 交換条件

 食事を終え、部屋に戻ると、レミアは口をゆすいでいた。俺はとりあえず布団の上に座ってレミアの準備ができるまで待った。



「残りの聞きたいことは?」                


「今無一文だから、お金を稼げる手段が欲しいのだけどなにかいい案ないかな?」


「魔晶石を売れば?」


 そう言いつつレミアは俺の隣に座ってきた。視線を向けてしまうと服の中まで見えそうなのでできる限り前を向いておく。

 レミアの案はありだと思うが、やりがいのある仕事をしたい。魔晶石を売るだけだと自分で作れるなんてスキルが有るし、十分生活できるだろうけど味気ない。

 一応、商売をするには商業系のギルドに入っていないとだめらしい。

 ギルドがあるなんとはさすが異世界だなと感心したが、レミアに宿代を貸してもらえないか交渉しないといけないことを思い出したのでそのことも言ってみると意外とすんなり了承してくれた。


「聞きたいことはある程度聞けたし、血を吸ってもいいけど副作用とかそういうのってあるの?」


「私がやろうとしない限り無い」


 やろうと思えば俺を眷属とかにもできるらしい。むしろなりたい。

 美少女の顔を毎日見れるなんてなかなか幸せだと思う。

 どうやって吸うのかわからないからとりあえず吸っていいよと言ってみると俺にしなだれかかって来た。


「じゃあ、いただきます」


 そうレミアが言った瞬間、首筋に軽く痛みが走った。血を抜かれていく感覚が気持ち悪い。しかし、美少女が自分に寄り添っていることによるなんとも言えない幸福感がそれを打ち消し、何も考えられなくなった。





 気がつくと朝になっていた。いつの間にか意識が落ちていたみたいだ。血を抜かれたせいか少し虚脱感を感じるが、動けないほどではない。起き上がろうとするがうまく起き上がれない。疑問に思って布団をはいでみるとレミアが抱きついていることに気がついた。夢にも思わない状態に思考が停止してしまう。


「ん、おはよ」


 レミアも起きたようだ。しかし何だ可愛い生物。寝ぼけているからか、いつもは無表情な顔であったのに頬が少し緩んでいるせいであどけなく見える。

 危うげな足取りで顔を洗いに洗面台に向かっていった。

 先程までレミアがいた場所のぬくもりが消えていく喪失感で頭が少し覚醒してきた。

 俺も顔を洗うために立ち上がるとレミアもちょうど洗い終わったようだ。


「顔洗ったらご飯食べに行く」


 レミアも寝ぼけがとれたのかまた無表情に戻っている。

 急いで顔を洗って、レミアについていった。


「マスター、軽めの」


「はいよ」


 レミアはまた大雑把な注文をしたが、それで通じるあたりこの宿に慣れ親しんでいるのだろう。

 椅子に腰掛けつつ、昨日あの後どうなったのか聞いてみた。


「吸い終わった時には気絶していた。それなりの味だったから吸い過ぎた。ごめんなさい」


 上目遣いにそう言われると許さないという気が起きなかった。

 血に美味しさがあるのかはよくわからないが、美味しい部類なら良かった。

 吸い過ぎたのは勘弁して欲しいが、次があるなら加減してくれるだろう。

 そうこうしているうちにマスターがパンにハムを挟んだものを持ってきたので食事をとることにした。


「昨日言っていた商業ギルドってやつはどうやって登録するの?」


 正直魔晶石を売るくらいしかすぐに稼げる手段は浮かばなかった。

 魔晶石と限らずダイヤモンドでも作れればそれも売れるだろうし、この世界なら人工か天然かなんてきっと区別できないだろう。


「特に必要な物はない。毎月税金を納めればいい。」


 税金をとられるらしい。詳しく話を聞きたかったが、その辺は専門じゃないからギルドのほうに聞いてくれと言われた。

 多少は腕に覚えがあったほうがいいそうだが、荒事の方は戦闘経験が一切ないからこれから体を鍛えていかないといけないが名案を思いついた。


「荒事とかそういうものに慣れていないから俺に戦い方を教えてくれないか?」


「あなたに代価はだせるの?」


 少し非難めいた目をしようとしているみたいだが、幼子がむくれているようにみえてかわいい。

 でもそういう目をしたがるのはわかる。まだ会って少ししかたっていないし、警戒するのは当たり前だろう。


「毎日は無理だけど血の提供と、魔晶石を売った利益の一部なんてどうかな?」


 そう言うとレミアは迷っているみたいだった。

 しばらくすると答えを出したのかこちらを見た。


「いいわ。そのかわり冒険者ギルドの方で私に依頼を出すことが条件」


 なんとか受理してくれたみたいで安心した。正直ここで断られていたらかなり精神的にきたと思う。


「まずは商業ギルドに行こ?」


 そう言って席をたったので俺も急いでついていった。



 商業ギルドは宿屋を出て街の中心方向に歩いて数分程度でついた。

 木造で外観は普通の建物で拍子抜けしたが、中に入ってみると光の魔晶石が柔らかい光を出しており、品のある内装となっている。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご要件でしょうか?」


 受付の方もレミアに負けないくらいの美少女だが、決定的な違いがある。

 胸がでかい。決してレミアの胸は小さい訳ではないがやはり質量差は大きい。 少し見とれてしまったがレミアが少し強めに突っついたので考えを中断させた。


「商業ギルドに登録したいのですが」


「じゃあこちらの用紙に必要事項を記入してください」


 そう言われたので記入するが名前や住んでいる場所、どのような商売をするかなど基本的な事項しか書くことがなかったのですぐに書き終った。


「では、罪を犯していないか確認する為にこちらのカードに魔力を少しだけ注いでください」


 恐らくギルドカードというものだろう。魔力が犯罪者のものと一致すると爆発するらしいが、特に犯罪を起こした覚えはないので安心して注げる。

 スキルを使う感じでカードを触ると、ほんのりと光った。


「大丈夫です。それでは商業ギルドに登録した方には商業ギルドの基本的な説明をすることになっていますので説明させていただきますがよろしいでしょうか?」


 はい、と返すと色々なことを説明してくれたが重要なことは罪を犯した時点でギルドに罰金を払わないといけないらしい。税金を払えず、三カ月経過した場合も追加で罰金だそうだ。税金は月に一回支払わなければならず、商業ギルド内のランクによって決まるらしい。最初はFランクからだが、商業ギルドのお偉いさんの査定によってランクが上がっていくそうだが、基準までは教えてくれなかった。


「以上で登録が完了しました。これからの活躍に期待します」


 そういわれて頭を下げられたが、谷間が見え、すごい絶景だ。基本的にブラジャーというものが存在しないみたいでほとんど丸見えである。


 登録が終わったのでレミアに連れられて冒険者ギルドに向かうが、その途中で胸ばかり見ていたことを責められた。

 言い訳をするとさらに怒りそうだったので逆らわず謝っておいた。



 冒険者ギルドは商業ギルドから徒歩十分程のところにあった。中に入ると獣と漢の臭いがして鼻が曲りそうだった。

 レミアいつにも増して無表情で少しとけとげしい雰囲気を醸しだしている。


「依頼をしたいのですが」


 受付と思われる場所には禿散らかして脂ぎったおっさんがいた。


「どのような依頼でしょうか?」


「私が説明する」


 そうレミアが言ったのですべて任せた。

 しばらくすると依頼書が完成したのかおっさんが紙を渡してくる。正直手油のついている書類に触りたくないが確認しなければ始まらないので受け取った。


 依頼:戦闘方法の指南

 報酬:無理の無い範囲で血液の提供。月あたり金貨五十枚。

 備考:レミア=フランベルン(ギルドランクB)を直接指名


 書類を見ると特に間違いはないのでサインをする。

 レミアは初めて会った時ただのレミアと言っていたが、名字のようなものがある。気になったので聞いてみると家庭の事情らしく、聞かれたくなかったようなのでそれ以上聞くのはやめておいた。


「行くわよ」


 依頼も無事に出来たし、こんな臭いがきつい所からは早く出たい。

 外に出てからレミアに魔晶石を売りに行きたいと言うと、商業ギルドにいる時にいえばその場で売れたのに。と軽く非難された。

 鍛冶場とかに直接売ることはできないのかと思ったが、商業ギルドに所属しているし売ることはできるだろうけど、二級以上の魔晶石なんてそこらの鍛冶場じゃ買い取れないそうだ。

 少し落ち込んだが、一番規模の大きい所なら買い取ってくれるかもしれないらしいのでそこにいくことにした。



 一番規模の大きい鍛冶場にはドワーフという種族がいるらしい。 小さくて厳つく、気難しい性格をしていることが多いが、鍛冶の腕はずば抜けているそうだ。

 レミアについて鍛冶場の中に入ると厳ついおっさんが真っ赤になって弟子っぽい人を怒っている光景が目に入った。

 怒りが一段落したのを見計らって声をかける。


「魔晶石の買い取りはしていませんか?」


「ある程度の等級ものは商業ギルドから仕入れていて間に合っているぞ」


 やはり販路はあるらしい。しかし逆にいえば俺の作った魔晶石なら十分売ることは可能そうだ。

 そう思って見せてみるとルーペのような物を取り出して観察しだした。


「美しい」


 そう呟いておっさんは動かなくなってしまった。


 数十分後にようやく回復したおっさんがどのようなルートで仕入れたか、安定供給はできるのか聞いてきた。

 俺は儲けの種をのがさないためにもリスクはあるがその場でスキルを使うことにした。


「小僧。ここの専属商人にならんか?」


 おっさんに言われ、願ってもない話なので了承するとレミアが信じられないような目で見てきた。

 俺はそれを傍目におっさんと細かいとこを詰めていくため場所を変えることにした。


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