Phase10 研究
冒険者ギルドから、依頼を受けてくれる人が見つかったという連絡が来た。いつの間に店の場所を教えたのか気になったが、商業ギルドと情報を共有しているらしい。
以前、追加の護衛を雇う話をレミアとしたが、依頼の発注はレミアがやってくれていたらしい。
色々とドタバタしていたので今日くらいにいければいいと思っていたが、もう護衛を受けてくれる人が見つかるとは幸運だ。
どうやら受けてくれるのはこの前宿屋で会った女の人のようだ。メリッサさんと呼ぶと、呼び捨てでいいと言われた。レミアも顔見知りらしい。
「有名なの?」
「魔法の練習中に冒険者ギルドの訓練場を半壊させた話で有名」
「いやあ、それほどでも」
「褒めたつもりじゃない」
レミアの言葉にすこし棘を感じたが、一時期一緒に依頼を受けたこともあるらしいし、仲が悪いというわけではないようだ。
取り敢えず俺は依頼内容を言って受けてくれるか言ってみると、受けてくれるらしい。
「魔法陣の作り方も教えてくれないか?」
「教えることは出来るけどこの報酬じゃ割に合わないわ」
流石に魔道具の資料が金貨二枚に対して、細かい作り方まで教えてもらって金貨五十枚とは確かに少なすぎるな、と言ってから気がついた。
「国家機密みたいなものだし、報酬がどのくらいが相場なのかわからないから、何か条件を出してくれないか?」
「そもそもなんで魔法陣のことを知りたいと思ったの?」
魔道具工房を購入したので魔道具を作ってみたいと言うと妙に目を輝かされた。
「そこで私も研究させてくれるなら、魔法陣については教えてもいいわ。国での研究は杖のことばかりだから辟易していたの」
国での研究は、昔なら杖以外の魔道具の研究もしていたみたいだが、複雑すぎてほとんどの研究者が匙を投げてしまったらしい。
メリッサは杖以外のことを研究したいのに予算が降りないから理論は作ることができても実験ができなくて苦労していたらしい。 国での研究はレポートさえだしておけば大丈夫なそうなので、国の研究員をやりつつ護衛をしてくれるそうだ。
なんだかひどく興奮しているみたいだが教えてくれるらしいので良かった。レミアに信用できる人なのか小声聞いてみると、研究バカだけど秘密は漏らしたりする人ではないらしい。
護衛もしてもらうし、スキルのことはどうせばれるから早めに言っておくように言われた。
係の人に依頼を受理してもらって、訓練所に向かう途中、レミアに袖をつかまれた。
「今日こそ訓練よ」
「その前に魔法はどのくらい使えるか見たいわ」
レミアとメリッサが言い争っているが、メリッサに言い負かされたみたいで不機嫌になっている。
魔法の訓練が終わったら訓練しょうと言うと、 機嫌を直してくれた。
「まず、あなたの魔力はどれくらい?」
ステータスウィンドウを出してみて確認する。
佐藤要
LV.1
体力160/160
魔力760/760
スキル 特殊:結晶作成・操作
いまだにレベル1だ。魔力と体力はそれなりに上がっている。
「魔力なら七百六十らしい」
標準的な魔術師よりかなり低めの数値らしいが魔法は十分に使えるようだ。
まだ魔力を使うようになってからそんなに時間が立ってないし、伸びてくれるだろう。
「使ったことのある魔法は?」
「光を灯すくらいかな。今杖とか持っていないけど大丈夫?」
杖は早めに買っておくように言われた。なくても発動はできるから今回は杖なしで練習することにした。
「まずは適正を見るわ」
そう言って何やら複雑な紋様の描かれた布を出された。魔法陣らしい。
これに魔力を注ぐと適正のあるものがわかるらしいが、あくまでも光や水などメジャーなものの適正しか見ることは出来ず、そこから外れているものは適正があるのかないのかわからないらしい。 取り敢えず魔力を注いでみると、魔法陣全体が光った。
「特に不得意なものも得意なものもないみたいだね。強いて言うならば土系に適正が有りそうだけど」
それは珍しいのかと聞くと、少し珍しいけど居なくはないらしい。 一点集中型や、二三個の適正があるくらいが多いらしい。
魔力もそれなりにあるらしいし、魔法も使えるようだから良かった。
まずは実戦的に魔法を使うより、正確に魔法を使えるように訓練することから始めるらしい。
まずは水を出してみるように言われたので、目の前に 水が出るようにイメージする。
「魔力を注ぎすぎよ」
辺りが水浸しになってしまった。
魔力を少なめにするイメージでもう一度やってみるがうまくいかない。
「うーん。取り敢えず魔力がなくならないくらいまで練習してみて」
なんというか、魔法を使う度に体の中から抜けていく感覚が形容しがたい感じだ。
魔力を少なめに、と思ってもうまくいかない。
結果的に残りの魔力が少なくなってきて気持悪くなりそうな感じになったのでメリッサに声をかける。
「最初よりはちょっとマシかなって思うけど、まだ多すぎよ。どういうイメージをしているよ?」
「目の前に水がちょっとだけでるような感じだけど、勝手に魔力が出ていく感じがするんだ」
「制御が壊滅的に下手くそね。むしろ制御しないほうがいいんじゃないかしら?」
制御しようとせずに魔法を使ったら魔力がすぐなくなりそうだけど、ほんとにうまくいかないのでしょうがないのか。
でも悔しいので毎日練習しようと思う。
メリッサとの訓練が一段落したのを見て、レミアが声をかけてきた。
「訓練」
「地面がぬかるんでいて滑るから一回土を被せない?」
出鼻をくじかれて、レミアは下を向いてしまった。少しでも早く訓練するために、メリッサに魔法で土を出してもらい、水浸しな所に被せていく。
粗方片づけ終わって、今度こそレミアと訓練をする。
今日は人に攻撃された時の対処法を教えてくれるらしい。
攻撃の受け止め方から避け方まで色々と言われたが、実際に体を動かしながらやった方がいいと思う。
「攻撃する。避けて」
そういってレミアは木刀を振りかぶってきた。まだ避けられる速度だったので避けると、軌道を変えて俺に向かってくる。
避けなきゃ、と思ったのに体が反応してくれず、自分に打ち込まれるのを目に見ているだけになってしまった。
「とりあえずもう一回お願い」
そう言ってやってもらうが、避けても避けても次の攻撃がくるので当たってしまう。受け止めても次の瞬間にはまた攻撃がきてしまい、手詰まりになる。
「慣れるまでやろ?」
上目遣いで言われたら断れない。
訓練所が使えなくなる時間までひたすら攻撃を避けたり受け止めたりし続けた。少しでも慣れてきたなと思っても速度をあげたり、攻撃の仕方を変えてきたりするのでかなりいい訓練になった。
危機感についての感想が目立ちました。
ただ初期の時点で、全く危機感持ってない主人公をまわりが危機感をもたせるように動き、段々と世界に適応して行くように書きたかったためこのような形にしていました。




