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小話シリーズ

勇者の意味ってどんなだと思う

誤字脱字報告、矛盾点の指摘や感想等は不要です。

誤字と少しおかしなところ訂正しました。内容は変わっていません。

 暑い。うだるような暑さなんてものは軽く通り越しているこの暑さ。

 低月給で年中金欠な為部屋にクーラーはなく、日当たりが最高に良いこの部屋の中で、扇風機からの暖かい風を裸族になってその身に受ける私は、他人に知られたら女を捨てていると思われるに違いない。

 だがしかし、三十五度もある部屋の中で服など着ていられようか。私はサウナ好きでもどこかの修行好きでもないのだ。窓には熱断シートを貼ったり冷凍庫で凍らせたタオルを首に巻きつけていても焼け石に水で、ただただこの憎らしい真夏を無我の境地の如く耐えるのみ。

 早く、とにかく早く夏よ終われ! そして続く残暑の日々など抜き去ってしまえ! 私は朦朧とし思考が上手く働かないこの部屋の中で、呪詛を籠めるようにぶつぶつと冷たいものの名前を呟く。

「バニラアイス、カキ氷、冷やし中華、サラダうどん、冷えぴったん……風鈴、プール、冷凍みかん……冷凍チョコ……冷凍、ゼリー……冷凍……庫。れ、れい、とう……」

 扇風機をガン見しながら呟いていたが、良いことを思いついた。そうだ、シャワーを浴びよう。

 思い立った私は、本日三回目のシャワーを浴びるべくすっくと立ち上がる。

 そんな時だった。

「げ、幻覚症状まで……」

 私の足元に突然、紫色の光った紋様の魔方陣が現れたのだ。

「そーとーやばいね私。んでも幻覚じゃなかったら困るから服だけは着ておこう……」

 そう呟いて足元近くに落ちていた茶色のアジアンテイストのワンピを頭から被る。あ、ワンピに合うサンダルも履いてたほうがいいかもしれない。そう思った私はS字フックに掛けてあったこれまた茶色のアジアンテイストのサンダルを手に持った。しかし。

「あれ」

 手に取ったサンダルを見て次に前に視線をあげた時、私の目の前には見たこともない硬そうな鱗に覆われたトカゲというよりは竜が二足歩行したような人型の生物が居たのだ。これはあれだな、竜人と呼ぼう。

 正面に立つ竜人は紺色で左は濃い緑、右は赤色の計三人。いずれも私を値踏みするような視線を不躾に当ててきた。その視線を一身に浴びる私も三人を順繰りに何度も上から下まで見ていたのだが。

「この雌か?」

「そのようだな。儀式で現れたのはこの雌だけだ」

「こんな不味そうなのがかよ、失敗したんじゃないのか」

 腕を組みながら私を雌と称した寡黙そうな左の竜人が訝しげに真ん中のに言う。真ん中はやっぱり真ん中だけに偉そうな口ぶりだ。右は口が悪いな。体を斜めに構えて馬鹿にするような目つきでこちらを見ている。

 三人の竜人は会話後に一様に胡乱な目で私を見た。あ? なにか文句あるのか。勝手に召喚しておいて随分な口の利き方だなあおい。喧嘩売ってんのかコラ。ゲームしまくりラノベ読みまくりのファンタジー慣れした私を舐めんなよ。

「あの、ここはどこなんでしょうか? 私家に居たはずなのですが」

 もちろん今の発言は私だ。まさか頭の中で思っていることがそのまま口に出るはずがない。もし出たのなら私はきっとこの怖ろしい見た目の竜人に殺されるに違いない。だから、表は穏便裏は過激。これ鉄則。ちなみに今の表は突然の出来事に怯えてる風のオプション付だ。

「ここは我が国ダンザグルスの王城地下、儀式の間だ。お前は勇者として召喚された」

「へ、勇者?」

 いやいやいや何をおっしゃる竜人さん。あなた方そんな見てくれのくせに、こんなにか弱い私に何をさせる気。勇者ってありえないでしょ。

 もしかして竜人のあなた方でも手に負えないような怖ろしい魔王でも現れたってのか。が! 私は妄想だけが取り得の二十二歳の女子だ! 麗しの聖女とかならまだしも勇者て、勇者て。

「ま、魔王とかと戦えってことなんですか? 私、剣なんて握ったこともありませんし魔法だって私の世界じゃ御伽噺でそんなものありません。勇者なんて私には無理だと思います」

 でも言ってから気づいた。自分で非力を訴えたら、そんならいらねえと口封じと用済みで存在を消されそうだ。あああ、言わなきゃ良かった。旅に出てからとんずらだって出来たかもしれないのに。

「いや、魔王はいない。それに勇者とは言葉のあやであって、実際にお前に戦いを要求することはない」

 内心ガクブルしていた私だったが、真ん中がそう言ってきたので、なあんだとほっとした。

 あれ、でも言葉のあやっていうくらいの面倒ごとってことだよねそれ。それはそれで全力で御免被りたいんだけど?

「なんか馬鹿っぽい雌だな」

 んだとコラァ! 発言主である右にギンと(実際には怯えた目で)した目線を向ける私。しかも雌雌って。たしかに種族は違うけど、せめて女って言ってよね! 女性とか乙女とかまでは期待しないでやるからさあ、見るからに脳筋な右さんよう!

「娘、気を悪くするな。ガイラルはどの相手にもこんな調子なのだ」

「相手にするだけ無駄だ」

 もしかして隠しきれてない殺気でバレたのだろうか。私が気分を害していると分かった真ん中はフォローしてきた。しかも雌から娘にランクアップだ。左も続いて頷きながら真ん中の意見を肯定した。私の中の竜人ランキングは今この二人で首位争いをしている! どべはもちろん右だ。

 まあ、たった三人でランク付けするのも狭すぎるので、とりあえず今は最初に娘と言ってくれた真ん中が一位、二位が左の寡黙、三位という名のどべが右の脳筋。こんな感じになった。おそらく他にも竜人と出会うことだろうし、ランクの変動に乞うご期待! だな。

「なあーんか馬鹿にされてる気がするんだよなあ、この雌に」

 右が顔を轢く付かせて私を見る。脳筋なだけに野生の勘はあるってことか。たしか真ん中が右をガイラルと呼んでいたな。うん、まあ竜人っぽい名前だわ。

「言葉のあやとは? 何か重要な役割を私は要求されてるんですよね」

「その通りだ」

 真ん中が神妙な顔をして頷いた。なんか、送還なんてその役割が終わらないとしてくれなさそうだよねこれ。そもそも送還出来るのかも分からないけど。

 その役割ってのをすぐにでも聞いてみたいけど、できればどこかの部屋に案内してからにしてほしい。だって地下ってだけあって空気がひんやりしているんだよ。私の世界では真夏だったから肩だしワンピでも平気だったけど、今居るここってちょうど秋口ってくらいの温度なんじゃないかな。肌寒い。

「まずは部屋へ」

 思わずぶるって肩を震わせたら、左の寡黙がしゃべった。しかも今まさに私が望んでいた部屋へ移動だと! 早くもランクの変動が! これで首位争いに決着がつき偉そうなのは二位に決定だ。私は寡黙にきらきらした目を向けた。が、寡黙はこんな愛らしい私の視線を華麗にスルー。さすがだ。

「そうだな。いつまでもここに居ても仕方ない。召喚は成功したのだからな」

「出てきたは出てきたが成功にしていいのかこれ」

 寡黙の提案を是として偉そうなのは部屋を案内してくれるつもりらしい。しかしまたしても脳筋が口を挟む。雌の次はこれ呼ばわりかよ! 本当にムカつく脳筋だな。私は眉間に皺を寄せて睨んだ。このくらいだったらちょっとは主張してもいいよね?

「あ? おい雌ガキなんか文句あんのかおい」

「っないです……」

 こわっ! 雌もガキもムカつくけど、そんな相手に本気睨みとかなんなのこの脳筋! ……ちょっと私睨んだだけじゃん。くそう、なんか涙が出てきた。冗談抜きでガクブルしてきた私は、いまだに手に持っていたサンダルを抱きしめるように身を縮こまらせた。

 だって仕方ないじゃんか、脳筋は雌でガキだという私に余りにも大人気ないんだもん。これで年齢知られたらもっと怖い顔してきそうだし。

「子供を怯えさせるなガイラル」

「ちっ」

 怯えてた私の前に、脳筋から私の体ごと隠してしまうように立った寡黙は溜息をつきながら脳筋を窘めた。うわあ、すごい頼りになるな寡黙。その調子で私の存在を脳筋から隠しててくれ。それにしても舌打ちとかなんなのあいつ。マジで大人気ない。

 まあ竜人を見た目で年齢が分かるほど全く知らないから、この三人が大人なのかも分からないけど。でも、私の中では寡黙と偉そうなのは成人はしてると思っている。脳筋はきっと小中学生くらいじゃないか? 女の子いじめて楽しんでる年頃っぽいし! けっ。

「……ふう。その辺でいいか、サイクス、ガイラル。そろそろ行くぞ」

「ああ」

「わーったよ」

 このやり取りの間ただ見ていた偉そうな真ん中は、一段落したかというところで口を挟む。やっぱりこの三人の中では一番上の立場みたいだな。

「では付いて来い」

「あ、はい」

 真ん中が私に声を掛けてきて歩き出したから、それに続いた寡黙を壁代わりにしつつ脳筋の視界に入らないようにこそこそと後を付けることにした。そしたらまた舌打ちが寡黙を挟んだ向こうから。ううう、なんで私がこんなわけの分からない場所に呼ばれて悪意向けられなきゃいけないわけ。呼んだのはそっちのくせに。くそう。

 そんなん絶えつつで偉いのの後に付いて行った先は、草の蔓柄が彫られている素敵な扉を開けて中に入った先のシックなアンティークで統一されている、つまり中世ヨーロッパな感じの割と広い部屋だった。

「座れ」

「あ、はい」

 っとと、私この偉いのの返事にあ、はいとしか言ってないな。なんか偉いの相手だとつい畏まっちゃうんだよね。分かるよね?

 この部屋は応接間かなんかだろうか。部屋の中心に長卓があって、長椅子がそれを挟むように配置されている。私は促されたまま椅子に腰掛けると、偉いのが正面に座った。でも寡黙と脳筋は座らないで、偉いのの後ろに護衛のように立ったままだ。やっぱり偉いのか。

「召喚した理由だが」

 私はごくりと喉を鳴らした。一体どんな無理難題を押し付けられるのだろうか。偉いのの後ろを見ると、寡黙と脳筋も偉いのの発言を固唾を呑んで見守っているようだ。

「我が国の宰相を射止めて欲しい」

 へ? 射止める? 弓矢でストッて? 私は弓道なんて習ってなかったよ。あえて私はこう思うことにした。だって勘違いしたままならまだまだ幸せでいられる気がするんだ。女の勘てやつ?

「先に言っておくが、弓矢で射るという意味ではない。宰相を篭絡してほしいのだ。その……女の魅力というものでな」

「ぶほっ」

「……ガイラル」

 脳筋が耐え切れないといった様子で吹き出した。すぐに寡黙に窘められてるけど。

「だってよう! 女の魅力って、魅力って! こんなガキに、んなもんあるわけないだろうが。ああ、腹いてえ」

 脳筋が目に涙を浮かべて身悶えている。そうか、そんなに可笑しかったか? 腹がよじれるくらいに。ふふっ、今の私なら目で射殺せるんじゃないかな。ふふ。

「宰相さんは、どんな問題のある方なんですか」

 私は脳筋に鋭い視線を投げかけながら偉いのに質問する。一瞬だけど偉いのがびくってなった気がしたんだけど、それはどっちの意味でかな。宰相の問題か私の殺気か。まあ、竜人だし戦闘強そうだし、私の殺気ってのはないかな。

「所謂男色というやつだ。……我が陛下に宰相が猛烈な想いを見せているのだ。ちなみに鬼畜で慈悲の心などあるのかと疑うような男だ」

「だ、男色で鬼畜!」

 げいというやつですか。あえて平仮名で考えてみたよ私。え! でもそれなら私なんか意味ないじゃない。だって私花も恥じらう乙女だし。しかも鬼畜って、私ノーマルなんで!

「お前には男装して近づいてもらう。そして段階を踏み親愛を得て折を見て女だと分からせるのだ。その頃には女でも良いと思うくらい親密になってもらう」

 私が非情に困った顔をしていると、偉そうなのが計画を話し出した。でもさでもさ、それって最後の最後で性別偽ってたって裏切るわけでしょ? 大丈夫なのそれ。更に女性に対して負の方向へいかないかなあ。男の方が良いってもっと思いそうだけど。しかも鬼畜だからひどい報復とかありそうじゃん。あとそれ以前に種族的な問題はないのかね。

「でもそれって、最後に裏切るわけですし女性不信で更に男色に磨きがかかったりしません? それに種族違いますし報復も怖いです」

「むむむ」

 思っていた疑問を口にしたら、偉そうなのがむむむと唸った。なにがむむむだ! じゃなくてさ。

「性別すらも凌駕する愛をお前が得ればいいだけだ。方法は任せる。ああ、種族は大丈夫だ。宰相は何の種族でもいけるくちだからな。報復は……まあ、頑張れ」

「へ」

 さぞ対策を練ってくれるだろうと思って期待してたのに、全部丸投げかよ! こいつ召喚した後のことよく考えてなかったんじゃないのか? しかも何でもいけるくちって! 頑張れ言いながらサムズアップすんなし!

 一体どんな条件で呼び出したのか気になる。

「召喚の条件とかってあったんですか」

「条件か。男装の似合う妙齢の女性。体格は女過ぎると序盤で失敗するので体格に乏しいのが好ましい。あちらの世界にいなくとも支障のでない者だ」

「……なるほど」

 オブラートに包むといった気の利いたことを全くするつもりもないのか、随分とひどい条件に当てはまった私。

 体格に乏しいだと? それはつまり出るとこ出てない幼児体型ってことか。

 いなくてもいい? どうせ孤独な身の上で友人とも疎遠になってきて彼氏もいない寂しい身の上だよ! 仕事だって私新入社員で内容は誰でもやれることだったしね! でも真面目に取り組んでいたんだぞ。

 なんか一気に気分下がったわー氷点下いったねこれは。出てきた涙も凍る勢いだよ。くそう。

 俯いて鼻を啜っていると、頭にぽんと大きくて暖かいものが載せられた。なんだと思って顔を上げると、いつの間にか私の傍に来ていた寡黙の手だった。

 寡黙はそのままぐりぐりと私の頭を撫でてきて思わずにへらっと笑ってしまう。でもちょっと力加減がおかしいかもしれない。首から上が赤べこみたいだよ。視界がぐるぐるしてきて気持ち悪い。

「すまん」

「いえっありがとうございます」

 次第に青白くなってきた私の顔色に気づいた寡黙は撫でるのを止めて謝ってきた。

 ああもう、どうしよう。私、寡黙のことすっごい気になっちゃうじゃん! ポイント高いことしまくりだよう。

「ちっこれだからガキは」

 涙ぐんで慰められてた私をうざいと思ったのか、脳筋がぶつぶつ文句を垂らした。なんだよ! いきなりこんなとこ連れて来られて、しかも呼ばれた用件や条件聞かされて嬉々として受けるとでも思ったのか。んなわけだいだろうが。いくら私だってこれはきたっての。

 でも、いつまでもここでぐずってても仕方ないし、せっかくの寡黙の好意も受け止めたかったしで、私はその文句を黙殺だ。

 あ、そういえば。竜人三人は互いに名前呼んでたけど私達、自己紹介まだだよね。

「えと、私天音流(あまねりゅう)っていいます。姓があまねで名前がりゅう、二十二歳です」

「ほう。リュウか、良い名だ。我ら竜人との縁を感じるな。轟く雷の申し子・セラスだ。竜人に姓なない。代わりに己を体言する言葉で区別する。お前はせいぜい十五あたりかと思っていた」

「大地を揺るがす者・サイクス」

「溶岩さえも砕く者・ガイラルだ。ほんとに二十二か? 童顔にもほどがあるぜ」

 うわあ、なんか厨二っぽいな! でも私こういうの嫌いじゃないってか、好きだから。でもさ、偉いののだけ……いやセラスだけ申し子なの? サイクスと脳筋は者なのに。ちなみにガイラルは脳筋で十分ということで!

「嘘じゃありません!大人です! ……申し子?」

「御年十七になるダンザグルスの王子だからなセラスは。王族は申し子を使う。雌ガキが容易く口を聞いていい相手じゃねえんだ。わかったか」

 つい出てきた疑問に答えてきたのは脳筋。教えてくれてもちっとも有り難いと思えないわな。でも一応ぺこりとお辞儀しとく私。我慢の大人、偉い。

 しかし、王子様だったのか。なら偉そうなのも納得。しかも十七? えええ、見えないんだけど! 老けてるのか竜人の強面がそう見えるのか知らないけど、少なくても三十近くかと思ってたのになあ。

 あれ、でも。さっき陛下がって言ってたってことは実の父親が宰相に迫られてるってことじゃん。うわ、きっついわあそれ! ないない。

 他人だったら恋愛はご自由に、互いを尊重してれば性別なんてって言えるだろうけど。実の父親でしかも国王とか。そりゃ召喚してでもなんとかしたいと思うわな。なんかセラスに同情するかも。

「じゃあ、セラス様のお父上が宰相に……なんですね」

「……その通りだ。我らもいくつもの策を弄したが、宰相はものともしなかったのだ。もはやお前に頼るしかない。突然の呼び出しでお前への配慮が足りぬが、頼みを聞いてもらえぬだろうか」

 苦渋の表情でセラスが深く頭を下げた。ちょっと待って! 王子が頭を下げるなんてしちゃ駄目だよ! でもそれだけどうしようもないってことなんだよね。

「頭を上げて下さいセラス様! 私やりますから。頑張って宰相誑かしますから!」

 なんだか見ていられなくて焦って立ち上がって、私は口走ってしまった。

「ははっセラス様聞いたか今の。言質は取ったぜ。撤回は効かないからな!」

「ああ。契約は成された。轟く雷の申し子・セラスの名において、召喚の儀を終了する」

「リュウ、頑張れ。サイクスが見守る」

 セラスがそう言うと人差し指で空中に何か描いて、その描いたものが青白く光って消えてった。

 ぼうっとそれを眺めてたけど、ん? 晴れやかな三人の顔を見てはっとした。これってもしかして嵌められた?

 言質って、もしかして宣言しなけりゃ断って帰れたってこと? まさか……そんな。

「すまぬなリュウ。我らももう成す術がなかったのだ。悪く思うな」

「はっは! これでもう、条件達成するまで帰れないぜ」

「……そんな」

 ぱあっと明るい笑顔に見える竜の顔でセラスが悪びれない口調で謝って、脳筋は笑いを隠そうともしないでにやりとしてる。

 そんな二人に呆然となった私は、もはや撤回も出来ない状況を理解出来るまでしばらくの時間を有したわけで。

 そのしばらくが過ぎた辺りにふと気づくと、またサイクスが私の頭をぐりぐり撫でていた。そんなんされても慰めになんないよ。

 でも、つい泣きそうな顔でサイクスを見上げたら、サイクスが穏やかそうな笑みを一つくれて。

 見守るとか言ってたし、セラスや脳筋はともかくサイクスが居てくれるならなんとか頑張れるかも? とちょっとだけ気分を上昇出来た。

 もしかしたら、サイクスは寡黙じゃなくて癒し系だったのかもしれない。


 で、召喚の儀式で言質を取られてしまった私は、なんとか男色の宰相を誑かそうと男装して王城の中を日々駆け巡ることになったんだけど。

 宰相がどんな見た目でどんな人物かって? それはもうご想像にお任せします。私からは勇者と言った意味が分かったとしか言えない……。

ここまで読んでくださった方、本当に有難うございました。

※ゲイに対する偏見は私自身は特に持っておりません。

 以前は少しだけですが腐女子でしたし。

 ちなみに今は足を洗いまして至ってノーマルです。

 小説内容に不快な思いをしいた方がいましたら申し訳ありません。

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