表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
萌え絵師への道  作者: 昔昔亭或処@休眠中
さいごのおしごと
55/59

#さいごの、ろく



 じぃん、と、してたら。


「さて。4作目ではもう一つ課題があったんですが」


 スルリと首に冷たいものが巻きついた。


「ちょっとじっとしてください」


 へ?


 隣から先生が両手を伸ばして、何か首にかけられてる?


「できた。念のため聞きますが、金属アレルギーなどはありますか? チタンのチェーンなので、アレルギーはでにくいらしいですが」


 首元を触ったら、これは、チェーンと、……指輪?


「この前の指輪です。先日受け取ってきました。あなたは手に指輪などしないでしょう? だからチェーンもおまけです」


「……え? って、あの、エンゲージリング?」


 そういや、そんなものもあったな。っつかアレ本当にイニシャルまで彫ったの受け取ってきたのか。


 ………いや、今問題なのはそこじゃない。


「なんで今あたしの首に? ちょ、先ず一旦外して、これ、え? なに、どうなって…?」


 慌てて外そうと留め金探ったら、……これどうなってるの?


「ちょっと変わったアジャスターだそうです。脱落防止に頑丈なタイプで慣れないと外しづらいようですが、外さなければいい話ですよね」


 イヤイヤイヤイヤ、そうじゃなくてですね!


 先生サマ、なんて胡散臭い爽やか笑顔なんだ。危険信号過ぎる。


「4作目、恋愛要素が欲しいと言っていたでしょう。この件は、作中どう決着させるか未だ思案中です」


 ぅへ?


「そんなことも言ったかも知れないですが、それは作中の話で! その時あたしは自分がモデルとか知らないし! 恋愛とか意味わかんないし! それにこのエンゲージリングって嘘っこでしょ!?」


 チョイ待て! いくらあたしでも嘘で恋愛はできない!


「本物です。なんなら鑑定書も見せましょうか?」


「違う! 意味が違う!」


 なに寝ぼけたことを言ってくれるんだ先生サマ。


 睨み付けたら、余裕の顔で笑われて更にムカついた。分かっていてボケやがったな。


「小説にかこつけていますが、本気ですよ。信じられないのなら、いくつかの証左がありますが」


 へ? 


「考えても見てください。私が、仕事の関係者とはいえ、誰でも彼でも自分のテリトリーに入れる人間だと思いますか?」


 え?


「あ、むしろガード堅そうな感じですけど」


「でしょう。では、何故あなたをわざわざここに住まわせたと思いますか?」


 ええ?


「……イラストのため、……と、観察のため…?」


 何を言い出すんだ大作家先生サマ。


「そのためだけに、半ば拉致するようにここに連れて来る必要は? 時々呼び出すだけでも用は足りたとは思いませんか?」


 ………。


 嫌な予感しかしない。ちょっとその辺で黙ってくれないか先生サマ。あたし今すぐ立ち去るから。


 立ち上がろうとして、両肩を押さえ込まれた。寝心地抜群のこのソファ、今はそのフカフカっぷりが邪魔だ。


「逃がさない、と何度言えば分かってもらえるのでしょうか」


 ヤバイヤヴァイ。この体勢はやばいって。


 退く、って、つまりこーゆー危険があるってことですね。実地で理解しました。今後は押されても退かずに前のめりを心がけます。


「ご両親も応援してくださっているようですよ? 先日はお母様からお電話をいただきました」


「え、それ知らない! なにそれ!!」


「あの雑誌をご覧になったようですね。これからプロポーズをしたいんだと言ったら、激励されました」


 おかあさぁああああん!!! っつか何でお母さんが先生の連絡先知ってんだ!? あのハイテンションな長電話はそのせいか!?!


 いやそんな追求は後回しだ。


 今はこの危険をどう回避するかが最重要課題。



 ……先生実は自分から告白したことが無い人。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ