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萌え絵師への道  作者: 昔昔亭或処@休眠中
さんさつめのおしごと
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#さんのにじゅういち




 高速を降りたら、いかにも山だった。


 普段灰色ばっかりの景色を見慣れているから、夜に生い茂る木々なんてちょっと怖い。昼間ならスケッチのし甲斐があるのに。


「ええーと? 目的地?」


 ここも山付近、ではあるよね。どこだ、と思ったら道路標識があった。……いろは坂?


 …うぇ?


 ちょっと遠出、のエリアが広すぎる。もうちょっとで関東はみ出ちゃうんじゃないの?


「……先生、『ちょっとお出かけ』で、最長どこまで行った事ありますか?」


 財布と鍵だけ持って出かける程度って、どんなんだ。


「学生の時分には、それこそ国内なら何処へでも行きましたね。流石に真冬に北海道に行ったときには着の身着のままだったことを後悔しました」


「先生、意外と行き当たりばったりな人ですか?」


 それこそ意外だな。きっちりしてそうなのに。


「計画しなくてもどうとでもなる部分は、流れに任せるほうが良い場合もあります。はっきり目標が見えていれば、結構間違わないものですよ」


 ……。


「先生って時々お坊さんっぽいです」


 こんなお坊さんが説法してくれるお寺なら大繁盛だろうな。……先生の実家のお寺ってどんなところだろう。


「……私の家の話、聞きましたか」


 ぐいーん、と急カーブに差し掛かった。シートベルト握って踏ん張る。


「はい。……スミマセン、勝手に」


 前後にいっぱい車がいて、みんな結構なスピードでカーブに突っ込んでいるのが凄い。地元の人かな。


「別に隠していませんから。…勘当されたことも、自由にさせてもらって感謝しているくらいです」


 またまたぐいーんと。遠心力ってすごいな。


「……この前お母さんに言ってた事はなんだったんですか……」


 この耳で確かに聞いた。温かい家庭がなんとか。


「一般論です。傍で見る分には良いものだなと思いますよ。自分がその一員になれるかどうかは別問題です」


 ぐいーん。


「……先生、殺伐としてます」


 なんちゅーかさ。先生サマって、生き物の気配が薄いんだよね。寝室覗いちゃった時も思ったけどさ。


「分をわきまえていると言ってください」


 意味が分からん。


 ぐいーん。


 目が回ってきた。先生サマよく平気だな。こういうのハンドル握ってれば平気って聞くけど、運転免許持ってない人間には分からない感覚だ。


「人の事より自分はどうなんです。曲がりなりにも一人暮らしで家を出て自立しているつもりなら、自分の家庭を作ることも視野にあるのではないですか」


 ぐいーん。


「……ええーと。ぶっちゃけですねー。そのうち可もなく不可もない見合い相手と結婚するか、生涯独身か、その程度だろうと思ってますけどー」


 うえ。気持ち悪くなってきたよ。コレが昼間で晴れてれば、周囲の景色も綺麗なんだろうけどさ。


「それこそ意外です。あなたは恋愛や結婚に理想を抱いているタイプかと」


「いや先生サマ、夢や希望があるから少女漫画家なんですけどね。でも理想と現実もよーく分かってますよ」


 ぐるーん。


 んでも正直、実在の男の人に夢は見ないかなー。だってほら、あのマッチョの一件でもさ、男性陣誰一人理解を得られなかったし。……先生以外。


「ああ。そっか。だから先生男の範疇除外なんだ」


 謎は全て解けた。先生といて平気なのは、そう言うことか。


 ぐいーん。


 いろは坂って殺人的だな。


「先生。気持ち悪いです」


 もっとスピード落としてくれればいいのに。なんで周りの車もこんな速さで。


「大丈夫ですか?」


 大丈夫じゃないです。マジ気持ち悪いです。




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