#さんのじゅうはち
そんなこんなで半引き篭もりでオシゴト中。
藤埜さんが雑誌片手にやってきました。
………えぇ~? そんな早く記事になるものなのかな。あ、でも新聞とかは前日のこと記事にしてるんだし。不可能じゃないのかな。
…などなどビビッていたら。
「とりあえずこの号は大丈夫でした」
ですって。そんなら思わせ振りに入ってくるな。
「やはり記事にする価値は低いということでしょう。しかし、穴埋め的にネタを確保していることも考えられます。しばらくは様子見が必要かと」
藤埜さんと先生が、難しい顔で今後について話し合っている。
……多分あたしも当事者だろう。なのに建設的な意見は期待できないと思われているのか、全く話に入れてもらえない。
仕方ないので、『ゾンビとドラキュラの深刻な相談』を描いてみたら結構ハマッた。ゾンビと僧侶はミスマッチだ。モンスターはモンスター同士相性がいいらしい。
『最近、右足が腐り始めたんです。ドラキュラさん、遺体処理の相談なんですが』
『ドレドレ、ああ、これは酷い。防腐液が足りなかったんですね。一度腐り始めたらもう諦めるしかありませんよ。塩漬けにすると多少は長持ちしますが、その代わり干からびます』
うん。深刻な相談だ。
出来上がりに満足して顔を上げると、二人がこっちを見ていた。
「え? 防腐剤?」
はぁ、と先生サマがわざとらしいため息を。
「何を言っているんですか。今度、こちらの小説雑誌でインタビュー記事を載せることになりました」
藤埜サンは、紙面を1ページ分確保したらしい。先生のちょっとしたインタビューを掲載する枠だ。
うんうん、と頷きながら、藤埜さんも補足してくれる。
「その中で、私生活について軽く触れる質問もします。ハッキリとでなく匂わせる程度に」
そうですか。そう言う対策は、専門家にお任せします。
「……でも、うちのおかーさん、絶対記事読むと思います……」
そんな雑誌が出たら、きっと大騒ぎしちゃうな。
『きゃあ、これってどういうこと? もう二人の間ではそんなお話がでているの? 大変! 準備だっていろいろあるのよ、結婚ともなると。ああもうどうしたらいいかしら!』
うん、目に見えるようだ。
『結納とか、お式はどうなの? 節目節目の行事は大事にしなきゃ。あ、お母さんついでにお着物仕立てちゃおうかしら。明るいお色の礼装が欲しかったのよ。どう思う?』
……大変だ。
「先生。違う方向に問題が大きくなります。程ほどに。ゼヒやり過ぎないようにお願いします」
先生サマは、分かっていますと頷いてくれたけど。ホントに分かってるかな。
うん。お母さんにもちゃんと釘刺しておかないと。
……後、お父さんにもお母さんの暴走を止めてもらわないとかもしんない。