#にのじゅうはち
平凡、且つ、華やか。
この二つを両立させるために、あたしは姑息な手段を使った。
つまり、キャラの容姿は平凡。むしろ地味。一応スタイルは普通に良いけど、顔立ちは可もなく不可もなく。
衣装とか背景とか効果で華やかさを表現。
……むしろキャラの平凡さが浮いてるけど、でも絵面は派手。
何しろ題材がコスプレだからね、いくらでも派手にできるってもんよ。
表紙カラーではゴージャスコスプレ衣装の主人公(でも顔は仮面)、あーんど、裏表紙でハンガーにかけたコスプレ衣装を体に当てている平凡主人公(制服、校則遵守)の背面。おまけに裏技、カバーを捲るとシンプル無地Aラインワンピースに裸足、でも可愛らしく微笑んでる主人公。はっきり言ってモノクロだけどおまけが一番良い絵だったりする。この絵は、文庫のカバー下には何もないという固定観念をものともせずカバーを捲って見る探究心溢れる冒険者だけが手にするご褒美だ。
どーだ、隠れたカバー下はともかく、表紙裏表紙だけでもネタバレだ。
文庫本体の表紙にもイラスト印刷するってのも、あんまりやらないらしい。っつかこのレーベルでは今までやったこと無いってさ。いいじゃん初の試みで。
……別にね? 表紙でネタばれても問題ないくらい面白い中身書けばいいじゃん、とか、藤埜さんもちったぁ苦労しろよ、とか、考えてナイですYO?
描き上げた表紙と挿絵見て、大作家先生がまたしても完成原稿に手を入れたこととか、別にガッツポーズなんかしてないし。
出来上がった絵を渡したときに、締め切りまで余裕あるならコレくらいやって下さいよ、とお願いしたら、藤埜さんが酢を飲んだような顔したけど、別に喜んでないし。
晴れ晴れと二冊目のお仕事を終えて自宅に帰った。
やっとお風呂で熱唱できる、一応はこれでも遠慮してたんだ、はぁ肩凝った、一流レストランも毎日だと飽きるよね玉子かけご飯が食べたいな、と安心したのもつかの間。
パソコンおよび仕事道具一式を大作家先生んトコにおいてきちゃったことに気付いて、自分で電車でPC運ぶわけにもいかなくて、藤埜サンにお願いしたらどうせ三冊目も直ぐ取り掛かるんだからと運んでくれなくて、泣く泣く大作家先生ん家に舞い戻る羽目になった。
……せめてあのキッチンでインスタントラーメンくらいは食べられるように、鍋と包丁とまな板とドンブリは持っていこう。




