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萌え絵師への道  作者: 昔昔亭或処@休眠中
にさつめのおしごと
21/59

#にのじゅうさん



「なんなんですかあなたは! のほほんと一言二言で、緻密に綿密に計算して構築した世界をあっさりと!」


 ちょ、激昂する美形は迫力1.5倍だよ、何なんだよ先生サマ、持病のおこり?


「しかも、こっちが既に兜を脱いでいるというのに、当の本人はのん気に売れない漫画家です? 直感だけでやすやす人の上をいきながら、鳴かず飛ばずの現状を何だと思っているのか! 大体ね、あなたは生温いんです! 絵の仕事なら何でもと口では言いながら気乗りしない仕事は消極的。ただの仕事ですって? 『ただ』とは何です、作品を生み出す、それはいつだって真剣勝負でしょう、ただもクソも無い! しかも男のプレゼントを断る口実は『親の言いつけ』、どこの小学生ですか、その上週に一度は親に飯をたかる、自立もできていない、あなた何年無駄に生きてるんです! 挙句、押しには弱くあっさり流されて男の部屋にまでノコノコ付いて来て! よくも今まで無事でしたね、よっぽど過保護な環境でお育ちだ、ご両親はさぞかし心配でいつまでたっても親離れ子離れできない悪循環ですか! どうせ漫画家になるのも反対なんかされたことないんでしょう、全面的に応援されて、もともと人並み以上には器用でちょっとの努力でそこそこの成果を出して、逆境に抗った経験も、それに打ち勝ったことも無いのではないですか? 許せない、断じて許せませんね、許せるわけが無いでしょう! こんな覚悟も無い人間に自分が負けたなど!!」


 え、あの、その、……息継ぎしてください……?


 フシューフシュー、と湯気出しそうな勢いで、先生は大きく肩で息をした。


「さっさと腹を括りなさい! そして相応の成果を出してもらいます!」


 ビシィ、と指を突きつけられた。


 ちょ、その、え?


「あなたは、この私が負けを認めた人間です!」



 鼻息も荒く宣言された。


 言葉を見るなら、多分敗北宣言だ。



 なのに、宣戦布告に聞こえる。



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