#にのはち
必要なのは7着分。
徐々にエスカレートさせる方向性が、露出。
お仕事のために大作家先生に詳しく話を聞いたら、そう説明された。
ええーとぉ。いかにも男目線な意見じゃないかと思いますが。
まあ、あたしは言われたとおりに描くだけですけど。
……でも、露出。エスカレートした、常軌を逸した、露出。
迷いに迷って、あたしは藤埜サンに電話した。
「あの、ライトノベルの挿絵でヌードって、ありですか」
間髪いれず返ってきた。
『阿呆ですか』
うん。ですよねー。
「でも、先生の指示で」
『先生がはっきりヌードだといいましたか?』
いや、それは言われていないけど。
「常軌を逸した露出、って、ナンダと思います?」
はぁ、と電話の向こうでため息が聞こえた。
『だからヌードというのは安直過ぎるでしょう。……正直に申し上げて、私には、その「常軌を逸した露出」がどんなものか思いつきません。ですが、あなたがどんなものを描くのか期待しています』
おお?
今まで挿絵はパセリにも劣る物言いだった藤埜さんが。
『一作目。第一稿のどこがどう修正されたのか確認しましたか?』
スイマセン読んでません。刷り上った本貰って本棚直行です。
「ええと。矯正器具の記述を加えたんじゃないんですか?」
『逆です。主人公の描写を、むしろ減らしたんです。ですから驚きました。ご存知ないでしょうが、先生は、ご自身の作品は本文が全てだと仰って、後書きも解説もつけません。その先生が、自分の作品で、その表現を、絵に譲ったんです』
「……それって」
『ですから、あなたの描くものを楽しみにしています。できる限りのサポートはさせていただきます。頑張ってください』
電話の向こうで、ちゃんと本気で激励してくれてることが分かる。
大作家先生は、モットーを覆したんだって言った。
うん。頑張ろう。ちゃんと、本気で、頑張ります。