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萌え絵師への道  作者: 昔昔亭或処@休眠中
にさつめのおしごと
15/59

#にのなな


 大作家先生の脳内では、次回作の主人公は、コスプレにのめり込む女の子だそうです。


 どんどんコスプレがエスカレートして常軌を逸していくんだそうです。


 そのコスプレのデザインを、あたしに任せたいらしいです。


 そんならそうと早く言って下さい。


 あの参考資料の山が、ホントにただの資料であったことに心底安堵した。


 この完成度を女子中学生が縫製可能でしょうか、とか、手縫いとミシンの技術が相当、とか、材料費がどの程度で購入はどこで、とか。


 タクシーのなかで紙袋開けて検証し始めちゃった大作家先生に、運転手さんがどん引きだった。


 紙袋の中にスク水を見つけてしまったあたしも、運転手さんにフォローする気力が失せた。


 大作家先生が紙袋ガサガサさせる音だけが響く車内。重苦しい空気に耐えかねた運転手さんがカーラジオをつけ、偶然なのか必然なのか、アイドル声優の超音波ボイスが飛び出して、クリティカルにダメージを受けた。


 運転手さんが、恐らく最速で目的地に到着させたのは間違いない。高速道路じゃないのにスピードメーターが×○○km示してたとか、あたしは見てないから。




 ご自宅は洒落たデザイナーズマンションで、やはりここでも紙袋の美少女がすさまじい攻撃力を発揮した。


 常駐しているらしい管理人さんが、宅配便のお荷物が届いています、と言いかけて固まって、仕方ないからあたしがそれらしき荷物を置き場から探して勝手に受け取った。軽いけどかさばる大きい箱と小さいのにやたら重い箱の二つだ。何となく、大きいつづらと小さいつづらが出てくる昔話を思い出した。


 エレベーターにもカードキーが必要だったり、セキュリティが凄い。内装は機能重視っぽくてシンプルだ。


 そしてモデルルームのように生活感の無い部屋に通され、今に至る。


 何LDKですか。延べ床面積どんだけ。マンションなのにリビングに階段があるって二階もあるんですか。お家賃は聞きたくありません。


「そちらの部屋を、好きに使って下さい。一般的な画材は準備させましたが、足りない物があれば藤埜に言ってください」


 はい? 好きに使えとはどういう意味ですか?


 客用らしい空き部屋は作り付けのクローゼットとベッドと、そして内装にそぐわない作業机があって、眩暈がした。


「あの、ひょっとして、まさか」


「このほうが効率がいい。仕事が終わるまではここに居てもらいます」


 予想外だよ。まさかそう来るとは。イキナリ缶詰めなんか不意打ちもいいとこだよ。いや、コスプレの覚悟があったわけでもないけど。


 ドアを見たら、一応鍵はかけられるみたいだ。何かあったら引篭ろう。そうしよう。


「届いた荷物は貴女用です。日用品など、不足は無いか確認してください」


 え。この大きいつづらがですか。大きいつづらはハズレですよね。


 開けてみたら、このワンピースのお店の服が数着。下着とナイトウェアまで出てきた。更に旅行準備っぽいポーチには洗面用具とスキンケア用品、バラの香りのボディソープとシャンプーリンスコンディショナーのセット。


 ほら、ハズレだ。小さいつづらがアタリとも思えないけどね!


 っつーかこんな物までいつの間にお買い上げ? うん、あたしが試着室にいた間だろうと思うけど、なんでそれを今の今まで黙ってるんでしょうね。事後承諾というにはこれ計画的じゃね? 確信犯じゃね?


「……じゃあ、早速仕事します。ええ。可及的速やかに取り掛かります」


 そして一刻も早く仕事を終わらせる。




 ……ナニカを期待していた方はいらっしゃるでしょうか。


 あと、『あたし』は、"確信犯"の使い方間違ってます。

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