勘違い★
俺は勢いよく職員室の戸を開けた。
「先生っ!ちょっと名簿を見せてもらえませんかっ?探している人がいるんですっ」
息を切らしながら俺は先生に尋ねた。先生も何事だ?という顔をしているが、何も聞かずに俺の質問に答えてくれた。いい先生だ。
「何年生の名簿が見たいんですか?」
「三年生ですっ」
(ぇ…)
それを聞いた先生はすぐに名簿を取りに行ってくれた。誰かが何か小声で言ったような気がするけど、そんなことはどうでもいい。早く名簿をっっ!
「これですね、どうぞ」
「ありがとうございます! 飛鳥っ クラスはどこ?」
「わかりません。」
「はあっ!?わからないってどういうことだよ!?」
「遅刻してきたんです。通学路のデータなんて小説にはほとんどありませんでしたから。」
「そうなのか、アゲハ?」
「うん。アゲハもカラスと一緒じゃなかったら道わかんなかったもん」
「じゃあしかたないな。一つずつ当たっていこう。」
Aクラス、Bクラス、C、D、E………なかなか名前が見つからない。次が最後のFクラスだ。緊張が走る。不安がよぎる。
「青木龍…赤井真由子………」
「栗田和馬………紅飛鳥…あったっっ 紅飛鳥っ!!!」
「ホントだあっ よかったですね、飛鳥さん!」
「これは嬉しいですね」
「……………………」
職員室にも関わらず俺たちは思いっきり騒いでしまった。もし退学でもさせられていたら面倒なことになっていたからな。ホントによかった。そうなるとこれはバグによる問題ではなかったらしい。でもそれならどうしてこんなことになったのだろうか。………それは、騒いでいる中一人静かに息を潜めている人物に原因があった。
「飛鳥様って………三年生でしたっけ………?」
「「「………………………」」」
空白の数秒が流れた。どうやらバグは天音にはたらいていたようだ。天音を勘違いさせることで、科学部を乱そうとした。もしかしたら天音は学校をやめていたかもしれないのだから、勘違いは恐ろしい。
「ぷっ」
「今笑ったの誰?人の失敗を笑うなんてサイテーな人ねっ 絶っっ対許さないんだから!!!」
「おいっ それで何で俺が狙われるんだよ!!?」
「理由なんて必要ないでしょ!?ちょっと!待ちなさいっっ!」
不安が取れたからか、天音に追いかけられるのもなんだか楽しい。勘違いするなよ!?決して俺がおかしいわけじゃないぞ。コイツらとのこれからの生活を考えるだけでなんか興奮するんだ。
「まだかなり微小のバグだったようですね。」
「そうだねっ でもこれから大変になっていくんでしょ?アゲハ、ちょっと不安だなあ。カラスもまだまだ頼りないし」
「でも僕は楽しいですよ?彼らと一緒にいるだけで。僕はこの科学部なら、なんとかできるような気がします。」
「アゲハが不安抱えてちゃダメだよね!んん~ アゲハもイケる気がしてきたっ ありがとっ、飛鳥さん」
「どういたしまして。僕らもカラスくんに負けないように頑張りましょうね?」
「うん!もっちろん!!!」
こうして、俺、唐守説也の未空学園での新たな生活がスタートした。