ツンデレ☆
『職員室に行ってきます』
『あっ 私も行きますっ 飛鳥様ぁ!』
物理室の中から飛鳥ともう一人、女性の声が聞こえてくる。誰だろう?結構かわいらしい声をしてるから、どんなかわいい子なんだろうと期待してしまう。戸を開けてまず出てきたのは天音。やっぱり来てたんだな。頬を少し赤らめて物理室の中に視線を送っている。次に出てきたのは飛鳥。とりあえず天音に何もされていないようでよかった。まあちょっとつまらないが………っと今はそんなことどうでもいい。もう一人、どんな子がいるんだろう……… 期待が高まるけど、あれ?出てこないな?…っ!!!まさか―――
「カラスくん、アゲハちゃん、美来ちゃんを探してきてくれてありがとうございました。ただちょっと別の問題が出てきたのでこれから職員室へ行ってきますが、一緒に来てもらえませんか。」
「そんなっ飛鳥様!?こんなバカたちも一緒に行くんですかっ!!?」
「…ダメですか?」
「んんぅ~ 飛鳥様が言うのなら………」
やっぱりそうだ。天音は俺たちと話していた時とはまったく異なる話し方をしてる。やけにかわいらしい声を使ってベタベタしやがって。こいつはアレだな。所謂ツンデレってやつ。なんてわかりやすいんだろう。………それにしても別の問題ってなんだ?またバグの影響で何か起こっているのだろうか。
「飛鳥さん、別の問題って何ですか?」
「美来ちゃんが教えてくれたんですが、どうやら僕の名前が名簿にないそうなんです。」
「でもどうして天音がそんなこと知ってるんだ?」
「どうしてあなたなんかに言わなくちゃいけないの?」
天音が鋭い目つきで俺を睨みつけてくる。
「話してあげてくれませんか?美来ちゃん」
「はいっ!」
笑顔がはじけた。と思った矢先、すぐにいつもの天音の顔に戻って説明し始めた。
「ホントは恥ずかしいから言いたくないんだけど、飛鳥様のお願いだから話してあげる。HRが終わったあと、飛鳥様に会いたくて教室を見に行ったわ。でもどの教室を探しても飛鳥様は見つからなかった。それで職員室に行って先生に名簿を見せてもらったの。それでも名前が見つからなくて………飛鳥様を追ってこの学校に来たのに、その飛鳥様がいないなんて………って落ち込んでたときにあなたたちが現れた。―――こんな感じでいいですか?飛鳥様っ」
「ありがとう、美来ちゃん」
天音はちょっと俯いて恥ずかしそうにしている。めちゃめちゃ一途な女の子なんだな。飛鳥の前だとちょっとかわいく思えてしまうのがなんか悔しい。
「そういうわけで今確認に向かっている、ということなんです。」
「じゃあもしかしたら飛鳥は退学になっている可能性があるってことか?」
「う~ん、そう考えるのが普通かもしれないね………」
いくら考えてもしかたない。早く行って確かめるのが一番だ。
「もっと急ごうっ みんな!」
「あっ 待って、カラス」
「急ぎましょっ 飛鳥様」
「そうですね」
みんなが一斉に職員室に向かって走り出した。今のみんなの気持ちは一つ。早く今の状況を確認して飛鳥をこの学校に残れるようにする。