飛鳥★
「やっと終わった………やっぱこういう行事って疲れるな。」
「そうだね〜アゲハ肩凝っちゃったよぅ」
「おいおい、アンタは何歳ですか?まだ若………」
「おぃおぃっ アンタとは失礼なこと言ってくれるなあ。アゲハはアゲハだよ?」
入学式、HRを終えた俺たちは物理室へ向かっていた。なんでも俺に会わせたい人がそこにいるらしい。早く帰ってゲームの続きをやりたかったのに………
「でもカラスと同じクラスでよかった!」
「ふぇ?」
い、いきなりそんなこと言うんじゃねいっ!!!
変な声が出てしまったぞ………
「おやおや?お顔が赤くなってるですよ?カラスくん?」
アゲハが俺の顔を覗き込んできた。ちょっと照れたなんて言えるハズないし、黙っていても変に思われるだろう………何か言わなければっ
「もともとこンっ…」
………噛んだ。大事な言い訳だったのに………
「早く物理室行くぞっ!!!」
あーーーっ!!! 今すぐにでも逃げ出したい!
ガラッ
アゲハが勢いよく物理室の戸を開けると、そこには一人静かに本を読んでいる男がいた。
「飛鳥さんっ、カラスくんを連れてきたよ!」
「ありがとう、アゲハちゃん」
ふむ、この人が俺に会わせたいってやつか。さらさらな赤髪に澄んでいて優しい目、整った顔立ち、スラッとした長い足を持ち合わせ、大人びたオーラを放っている妬ましい男―――俺に会わせてどうしようってんだ?
「僕が妬ましいですか?」
「なっ!?」
微笑して男はこう答えた。また考えが漏れ出している?いやいや、それは違ったじゃないか。アゲハ同様、この男も俺の考えていることがわかるのか?そういうものなのか?偶然だと信じたいが、うぅ………頭が痛くなってきた。
「紹介が遅れましたね。僕は紅飛鳥。未空学園の3年生で科学部の部長をやっています。」
「あ 俺は唐守…」
「唐守説也。1995年12月12日生まれ。小学生の頃から唐守と呼ばれていて、容姿・学力・運動能力は意外にも好評価。父親は単身赴任で、今は母親と中1の妹との3人暮らし。趣味は………」
紅先輩の口から次々に俺の情報が溢れ出す。とりあえずほっぺたを思いっきり摘んでみたけど………鈍い痛みが頬の上を這いまわる―――夢じゃない。
「…保健室行ってきます」
入学早々保健室のお世話になるとは思わなかった。でも早く診てもらわなきゃ、俺の頭は今とっても非常事態な気がするんだっ………
「待って、カラスっ!」
物理室を出ようとする俺の足をアゲハが勢いよく引っ張った。おい、どうしてくれる………手も出せず扉に顔面を強打したんだが。鼻先から猛烈な痛みが全身を一気に駆け巡る。先輩も笑ってないでちょっとは心配してくれたらいいのに。